少年が目を開くと、妙齢の女性が自分を見て微笑んでいた。
しかし、女性はすぐに悲しそうな、泣きそうな表情と変える。
「(・・・・・・・・あぁ、君にそんな悲しそうな表情は似合わないよ)」
自分よりも10歳以上は年上であろう女性に、どうしてもそのような感想を抱いてしまう。
まるで自分が自分でなくなったような感覚だ。
女性が俺に手を伸ばす。
その手を握ろうと伸ばした俺の手は、大人の男らしいガッチリとした作りだった。
そのことに疑問を抱く前に、女性が俺の手を握り、瞬間意識がブラックアウトした。
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「・・・・・・・また、あの夢か」
瞼を開け、少年が呟くと同時に7時10分にセットしておいたタイマーのアラームがけたたましく鳴り始めた。
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「・・・ちゃ・・・・・・・・ん・・・・にい・・・ん・・・・兄ちゃん、お兄ちゃん!!!!」
「うぉっ!?」
「もう!お兄ちゃん、今日は転校生が来るから早く起きなきゃいけないのに何でアラーム鳴ってないの!!?」
妹の彩華にそう怒鳴られた俺は意識が完全に覚醒した。
そうだ、俺は一度起きた。
起きて、・・・・・・・・・・・・鳴ったアラームを消して、また寝て・・・・・って、
「今何時だ!!!?」
「もう7時50分だよ!」
「・・・・・・・・What's?」
「7・じ・50・ぷ・ん!!」
慌てて俺は時計を見る。
見たと同時に時計の針はカチッ、と7時51分を指した。
「うあ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!」
絶叫を上げ、彩華を押しのけると俺は階段を転がるように降りた。
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リーンゴーン......
「はは、は・・・・・・・」
急いで準備し、朝飯も食わずに家を飛び出し自慢の脚力で学校へと走った俺が教室に入る直前に、無慈悲にも鳴ったチャイム。
俺を待つのは、担任と生徒会顧問、生活指導の説教と友人たちからの嘲笑だ。
「・・・・篠田、哀愁漂わせながら教室に入ってくるな。辛気臭くなる」
「先生、可愛い生徒に対してその言葉はないでしょう・・・・」
メガネをクイッと気障ったらしく中指で押し上げながら俺にそう言ったのは俺、篠田幸助の所属する三年五組の担任、請坂俊。
一応は生徒思いの先生だが、普段は毒を吐く鬼畜だ。
「とりあえず、席に着け」
その一言に急いで席に座る。
・・・・ちなみに、席に行くまでに色々と視線が飛んできて痛かった。
「恐らくは過半数が知っていることだろうが、今日から転校生が来る。入ってこい」
ガラッ
先生の言葉で教室のドアが開く。
入ってきたのは、清楚な少女だった。
黒いロングの髪が転校生が歩くリズムに合わせて揺れる。
髪よりも黒い、今時珍しい漆黒の瞳は意志がありしっかりと前を見据えている。
清楚な感じだが、特に周りの目を引く美少女、というわけではない顔立ちだが、俺が目を引かれたのはそこじゃない。
俺たちを前にして少女が高校生らしくない大人びた微笑みをした。
その微笑みがさらに俺を驚かせた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・夢、の・・・・・・・・・・」
「藤原侑子と言います。よろしくお願いします」
俺の夢に出てきた女性を若くしたような少女ーーーー藤原侑子は俺を見て、一瞬驚いたような表情を見せたがまたすぐに表情を戻し、礼をした。
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これが俺と少女の奇妙な運命の始まりだった。
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名のない恋物語は数百年、世界を越えて繋がり、紡がれる。
第一話 「邂逅ー再会ー」
