手渡されたレシピには
「ステーキソース」
と、書かれてある。
働いていたのは、ステーキをメインにした和洋折衷の料理店。
「創作家庭料理」
と言う言葉があるのかは定かではないが、お客さんからはそう言われるジャンルだった。
そのメイン料理に使うソースのレシピ。
醤油をメインに、数種類の削り節、昆布、酢、酒etc…。
大きな鍋の中に材料を入れ、火に掛ける。
アルコールの匂いが厨房内に充満する。
大量に入った酒に火が着き室温も上がる。
暑い。ひたすら暑い。
火が揺れると言う理由で厨房の中には空調の設備は無い。
アルコールが飛び、火が消えた所に削り節や昆布、醤油を入れて、ゆっくりと旨味を煮出していく。
約1時間…。
酒や醤油の糖分で当たらない様にゆっくりとかき混ぜながら、ひたすら煮込む。
最初はトゲトゲと鼻についていた匂いがやがて、丸くなり旨味の匂いへと変わって来る。
そのタイミングで火を止め、覚ましていく。
完全に冷めたら、大きなシノワで濾して完成。
出来上がった当日は味が馴染んでないので使えるのは翌日以降から。
このソースに、マスタードと紅葉おろしを添えて、ステーキと一緒にお客さんの所まで運ぶ。
最初はソースだけで。
マスタードをステーキに直接塗って、それをソースへ。
紅葉おろしをソースに溶いて、そこにステーキを付けて。
人それぞれの食べ方。楽しみ方がある。
只、殆どの人が口の中に頬張った瞬間に笑顔になる。
その瞬間が堪らなく嬉しかった。
……それから二回冬が来て、新しいステップに行く為にその店を離れる事になる。
そして、時間は沢山の出来事を思い出にして、沢山の経験を学びに変えてくれた。
只、その姿を見せる事、感謝の言葉を伝える事は無くなってしまったけれど。
今年も冬がやって来て、髭の料理人は藍色に染まった空を眺めながら、ふと思った。
そこに目に見えるモノは存在しない。
けれど、遺してくれたモノが数え切れない程、自分の中に宿っている。
その事に気づくまでに青い想いは徐々に深く濃い色になってしまったけれど。
それでも未だあの時の、あの想いがくすぶり続けている。
自分が大切なヒトとそのヒトが思う大切なヒト達が集う場所。
気付けなかった味の違和感も。
食材の扱い方も。
今なら誰かに伝えられる位になった気がする。
藍色の刻はコレからも静かに深くなっていくのだろう。
「ステーキソース」
と、書かれてある。
働いていたのは、ステーキをメインにした和洋折衷の料理店。
「創作家庭料理」
と言う言葉があるのかは定かではないが、お客さんからはそう言われるジャンルだった。
そのメイン料理に使うソースのレシピ。
醤油をメインに、数種類の削り節、昆布、酢、酒etc…。
大きな鍋の中に材料を入れ、火に掛ける。
アルコールの匂いが厨房内に充満する。
大量に入った酒に火が着き室温も上がる。
暑い。ひたすら暑い。
火が揺れると言う理由で厨房の中には空調の設備は無い。
アルコールが飛び、火が消えた所に削り節や昆布、醤油を入れて、ゆっくりと旨味を煮出していく。
約1時間…。
酒や醤油の糖分で当たらない様にゆっくりとかき混ぜながら、ひたすら煮込む。
最初はトゲトゲと鼻についていた匂いがやがて、丸くなり旨味の匂いへと変わって来る。
そのタイミングで火を止め、覚ましていく。
完全に冷めたら、大きなシノワで濾して完成。
出来上がった当日は味が馴染んでないので使えるのは翌日以降から。
このソースに、マスタードと紅葉おろしを添えて、ステーキと一緒にお客さんの所まで運ぶ。
最初はソースだけで。
マスタードをステーキに直接塗って、それをソースへ。
紅葉おろしをソースに溶いて、そこにステーキを付けて。
人それぞれの食べ方。楽しみ方がある。
只、殆どの人が口の中に頬張った瞬間に笑顔になる。
その瞬間が堪らなく嬉しかった。
……それから二回冬が来て、新しいステップに行く為にその店を離れる事になる。
そして、時間は沢山の出来事を思い出にして、沢山の経験を学びに変えてくれた。
只、その姿を見せる事、感謝の言葉を伝える事は無くなってしまったけれど。
今年も冬がやって来て、髭の料理人は藍色に染まった空を眺めながら、ふと思った。
そこに目に見えるモノは存在しない。
けれど、遺してくれたモノが数え切れない程、自分の中に宿っている。
その事に気づくまでに青い想いは徐々に深く濃い色になってしまったけれど。
それでも未だあの時の、あの想いがくすぶり続けている。
自分が大切なヒトとそのヒトが思う大切なヒト達が集う場所。
気付けなかった味の違和感も。
食材の扱い方も。
今なら誰かに伝えられる位になった気がする。
藍色の刻はコレからも静かに深くなっていくのだろう。
