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柏木陽介にとっては、想定の範囲内の敗戦でしかない。

 

2011シーズン再開となった名古屋戦。浦和は、水沼貴史氏をはじめとする多くの解説者陣が賞賛を口にする試合内容で勝利を収めた。試合後の埼玉スタジアムのミックスゾーンには華やかさが溢れ、ここ数年あったどんよりとした空気が払拭されていた。しかし、そんななかでも、柏木は冷静だった。

 

「パスを繋いでくるチームとやったら、どうなるかわかんないですよ」

 

柏木の予想通り、輝きを失った浦和は連敗してしまう。迎えた柏戦。ペトロヴィッチ監督が会見での質疑応答を拒否するくらいの、まさに惨敗となってしまった。

 

4-3-3を志向するチームにとって、中盤の底のポジションは非常に重要になる。清水は、今季からこのポジションに、去年まではセンターバックとしてプレーしていた岩下を置いて安定を図っている。また、王者である名古屋の調子が上がらない理由に、レギュラーであるダニルソンというスーパーな専門職の不在が大きいのは周知の通りである。

 

浦和は、このポジションの適任者が見つかっていない。当初は、鈴木啓太を考えていたようだが、いかんせんビルドアップ能力に欠ける。代わって務めている山田暢久も、消える時間が多すぎる。肝となるはずの舵取りがうまくいかず、「柏に好き放題バイタルエリアを使われてしまった」(高橋)のは一目瞭然だった。

 

しかし、柏木が感じていた問題はより根深い。

 

「やっぱりチームの攻め方が単調なんですよね。組み立てができてなかったですよね? 幅もないし。監督も言いますけど、短いパスと長いパスを組み合わせないと。もちろん、早い攻めができればいいけど、無理なのにロングボールを入れても、全体が間延びしているでしょ。当然、コンパクトな相手にセカンドボールを拾われますよ。間延びしていれば、簡単に繋がれて、バイタルエリアも使われる。誰が悪いとかじゃなくてね、全員でやらないと。もちろん、皆、真剣に戦ってはいるんですけど」

 

一見すると浦和の問題は3失点を喫した守備にありそうに見えるが、ピッチでは攻撃の迷いが守備に出ている。それがチグハグな雰囲気や技術的ミスを生む。永田も「このままではいけない」とそれに同調する。

 

ただ、これは今に始まったことではない。柏木はフィンケ前監督時代から、この問題を口にしていた。ゆえに、「これだっていう原因があれば、ガラっと良くなるんですけどね」と自分たち自身の問題でもあることを理解している。浦和は過去のように崩壊などしていない。皆、どうにかしようとプラスに考えている。アタッカーは揃っているのだから、志向するサッカーが間違っているとは思わない。ただ、だからOKとはならないのがサッカーである。ペトロヴィッチ監督やコーチ陣に期待はしたいが、フロントも、いつかは決断が必要になる時がくるかもしれない。幸い、サイドアタックを志向し、体現させた長谷川健太氏は現在空いている。(了・2011年5月10日)