2014年6月29日放送美の壺「麦わら帽子」 | 芸術家く〜まん843

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壱のツボ ステージを彩る伝統の技
弐のツボ てっぺんに個性あり
参のツボ プラス・ワンで主役に
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この夏いろいろなデザインが街を彩っている『麦わら帽子』。日ざしを防ぎ風を通すという機能性から夏の定番アイテムです。麦わら帽子の作り方は麦をひも状に編んだ「真田」という材料を渦巻き状に縫い合わせる方法とあらかじめ全体を編んだ「帽体」という材料から立体的に形を整える方法の大きく2つに分かれます。個性的なデザインも増え自己表現のアイテムとなっている帽子。手わざが生み出す麦わら帽子の美しさ。さらにとっておきのおしゃれなかぶり方も紹介します。

年代物の麦わら帽子を収集している山本ゆきこさん。こちらは1950年代の山の部分がない珍しい帽子。
山本「非常に織り方が繊細なもう今では作れる人がまずいないであろうと思われるような材質を使っています」
美しい編み方には芸術さえ感じます。広いつばはまるで魅惑のステージ。

かつては日本屈指の麦の産地で麦わら帽子が作られるようになった岡山県。伝統の技を伝えるため資料館で麦わら帽子の材料となる「真田」を作っている山本敏夫さんです。
山本「農家で家の中でこの麦稈真田(ばっかんさなだ)が簡単に編めて小遣いが取れるというので非常に盛んであったわけです」
『四菱(しびし)』と呼ばれる編み方。2本の麦わらを半分に折り4本で編んでいきひし形が連続して現れます。リズミカルで幾何学的な美しさ。これが綿々50メートル以上つなげられ一つの帽子ができあがります。明治30年創業の工房の石田昌司さんは4代目。細い真田を縫い合わせた繊細で美しい帽子作りに定評があります。
石田「細くなるほど難易度が高くなるのでそこがちょっと難しいところです」
3.5ミリの細い真田を使った石田さんの技に注目してみると・・・。渦巻き状に縫う時まず決め手となるのは左手の指の動き。とてもリズミカルでスムーズさらに縫い目にも指の技が。3.5ミリの真田をわずか1ミリほど重ねて縫い指先で1ミリの幅ののりしろを微調整していきます。
石田「ほとんどが感覚だけですね。経験値を積むほどやっぱりうまくなると思います」
つばがゆるやかに下がっている帽子は日ざしよけになりまた小顔に見える効果もあります。縁が丸まっている帽子はつばがくるりと上を向き顔がよく見え明るい雰囲気に。美しい個性を支えたのは伝統の職人技でした。
たくさんの帽子を持っている萬田久子さんのこだわりは「山」の部分にありました。
萬田「一番大事にしているところって言うのはやっぱり帽子の高さ。その高さって言うのは人の顔の長さがあるように人それぞれ似合う高さってあるんですよ」
自宅の工房で麦わら帽子を専門に作る本田依子さん。
本田「自分がかぶる帽子っていうのを考えているのでさりげなく形があるっていうのがいいです」
本田さんが使う材料はあらかじめ全体を編んだこちらの「帽体」。これを木型に合わせて立体的な形を作っていきます。ぬらして曲げやすくした帽体を木型に乗せ蒸気を当てて細部を整えます。画びょうで固定し思い描く理想の形をしっかりとつけていきます。完成したのはてっぺんのドーナツのようなへこみとつばのシャープなりりしさが調和した帽子。
奇をてらわない美しさこそ麦わら帽子の大きな魅力なのかもしれません。ミュージシャンの帽子や舞台衣装も手がけている横山智和さん。大胆な発想力や独特の個性が人気です。
横山「無地だったり形だけでおもしろいなあとか全体的な雰囲気で良いなとかそういう方が好きで作ってます」
デザイン性と機能性を見事に両立させた一見シャープな山を持つ中折れ帽ですが実はうちわにもなります。
横山「うちわをあおぐように暑い暑いってやるようなしぐさでそのままうちわっぽくあおげたら良いなって思って」
夏にもピッタリなユニークな麦わら帽子です。
ファッションの歴史にも通じた服飾評論家の大石尚さん。世界中を回って年代物の貴重な帽子をコレクションしています。
大石「19世紀の後半からエドワーディアンの1912年まで。その時代の非常に豪華で華やかな帽子がやはり最盛期だったと思います」
西洋が育んだ豊かな帽子文化。
大石「お金持ちや地位の高い方たちはその帽子をかぶることによって自分の威厳を示されたんじゃないかと思います」
広尾にある帽子店。親子2代で帽子のデザインをしています。父親の平田暁夫さんは日本の帽子デザイナーの先駆け。パリの有名な帽子職人に学び洋服で言えばオートクチュールにあたる1点ものの作品を発表してきました。娘の石田欧子さんにシンプルな帽子に花かざりをつけると印象がどのように変わるのか試していただきました。
石田「例えばこういうピンクだとかわいらしい雰囲気だったりノスタルジックな雰囲気になると思います。
非常にクラシックな花なんですけどそれがこの麦に合うと思います」
飾りをリボンに変えてみるとシックな雰囲気になり色や太さによって帽子全体の安定感が決まります。父親の平田暁夫さんが手がけたつばの上下に咲き乱れるピンクの花そして全面を覆うチュールが美しい麦わら帽子です。
平田「麦わら帽子というのは非常にカジュアルなもの。いろいろなオシャレに対応できる素材で製作者としても非常に楽しい素材です」
平田「帽子というのは顔の額縁だと思っています。絵で言う額縁というのは非常に大事な物ですからそれと同じような感覚で帽子作りをやっています」
顔を多彩に演出する麦わら帽子・・・。この夏あなたも主役になってみてはいかがですか?

出演者
司会
草刈正雄
語り
古野晶子