『最強世代』──────
それは1998年にクラシックである3歳(旧4歳)を迎えた競走馬たちのことを指し、この世代だけで当時の平地GⅠレースを制覇してかつレコードが多かった世代である。
98年世代の主人公『日本総大将』でこの年のダービー馬のスペシャルウィーク。
あと一歩で凱旋門賞に手が届きかけた『怪鳥』エルコンドルパサー。
グランプリ三連覇した『不死鳥』グラスワンダー。
当時の芝3000mワールドレコードを叩き出した二冠馬『トリックスター』セイウンスカイ。
十度の敗北を経て遂に掴んだGⅠ『高松宮記念』覇者『世代のキング』キングヘイロー。
マイルなら世代最強を示した『世代のマイル王』エアジハード。
母父に三冠馬ミスターシービーの血を持つ世代のダート馬『華麗なる一族』ウイングアロー。
体質の弱さに泣いた『皇帝』の息子『遅れてきた大器』ツルマルツヨシなど挙げたらキリがない。
こちらではウマ娘のアニメ1期のメインである5頭を取り上げていこう。
まずはスペシャルウィーク。
1995年5月2日生まれ
父サンデーサイレンス、母キャンペンガール、母父マルゼンスキーと超良血。
しかし生まれてすぐに母キャンペンガールは疝痛により死亡、乳母馬が当てられたが気性が荒く人の手によって育てられることになる。
その為スペシャルウィークは人間が大好きでサンデーサイレンス産駒らしくない面が見られたが、やはりサンデーサイレンス産駒。その競走能力はずば抜けており、武豊騎手を鞍上にメンバー上がり最速で勝利。
その後も白梅賞こそ2着に敗れたもののきさらぎ賞、弥生賞を含めた重賞を勝ち続け一躍クラシック戦線に名乗りを挙げた。
皐月賞と菊花賞はセイウンスカイに敗れたがダービーでは鞍上武豊騎手の夢である『ダービージョッキー』の栄冠を与えた。
古馬との初対であるジャパンカップでは同世代の外国産馬エルコンドルパサーに完敗、そして『女帝』エアグルーヴにも完敗して現3歳シーズンを終了。
この年の天皇賞(秋)は『沈黙の日曜日』とファンの間でトラウマになったことで有名である。(詳しくは過去のサンデーサイレンスの記事を参照)
99年はAJCCをオリビエ・ペリエ騎手を背に、天皇賞(春)の前哨戦である阪神大賞典を再び武豊騎手を背に勝利、そして本番の天皇賞(春)で前年覇者のメジロブライトを半馬身抑えて勝利した。
しかし宝塚記念では有馬記念覇者のグラスワンダーに完敗。この頃からスペシャルウィークは走る気力を失くしてしまった。
その後も不振は続き、秋の京都大賞典では『遅れてきた大器』ツルマルツヨシに敗北どころか生涯最低着順の7着に沈んだ。
そして次走の天皇賞(秋)、体重はダービーと同じ体重まで落ち、回りから不安視されていたがここからスペシャルウィークの逆襲が始まる。結果は鞍上武豊騎手に1年遅れの天皇賞(秋)勝利をプレゼント。しかも当時のレースレコード。そして自身もタマモクロス以来2頭目の天皇賞春秋連覇という偉業を成し遂げジャパンカップへ。
ジャパンカップではエルコンドルパサーを破った『凱旋門賞馬』モンジュー他世界から強豪が集い、スペシャルウィークは『日本総大将』として出走。結果はモンジューを圧倒し優勝、秋古馬二冠を達成。
そして史上初の秋古馬三冠がかかるなか、グラスワンダーへの雪辱を果たすべく出走。
最後の直線後方から一気に末脚が爆発した『最強の2頭』で一騎打ちとなりほぼ同時に入線。
写真判定の結果は首の上げ下げでハナ差わずか4cmでグラスワンダーの勝利、秋古馬三冠はならなかった。
この出来事からスペシャルウィークは栗毛嫌いになった。
鞍上武豊騎手はこの時を「競馬に勝って勝負に負けた」と漏らしていた。
この年の年度代表馬の選考は荒れに荒れ、凱旋門賞に手が届きかけたエルコンドルパサー、春秋グランプリのグラスワンダー、天皇賞春秋連覇を含むGⅠ3勝のスペシャルウィークで大いに揉めた。
結果的に年度代表馬はエルコンドルパサーに、JRA賞特別賞がグラスとスペに送られた。
引退後は人間に育てられた弊害か種付け嫌いで、社台スタリオンステーションでは困らされたがその産駒には日米オークス制覇し、三冠牝馬の父エピファネイアを産むことになるシーザリオを初め父娘二代でジャパンカップを制し牝馬二冠を含むGⅠ6勝のブエナビスタ等を排出。
種牡馬引退後は生まれ故郷の日高大洋牧場で余生を過ごしていたが2018年4月27日、4日前に左腰を強打したことが原因か馬房内で倒れてるところをスタッフに発見され、16時40分頃23歳で亡くなった。
生涯戦績17戦10勝(内GⅠ4勝)
獲得賞金は10億9262万3000円
ちなみに異名は『隠れ万馬券製造機』である。

エルコンドルパサー。
95年3月17日生まれ
『奇跡の血量』と呼ばれるほどの近親交配(インブリード)でその力は正に最強の一角。
99年凱旋門賞で僅かにモンジューに抑えられ『凱旋門賞に最も近かった馬』と呼ばれている。実際この時のモンジュー陣営は「凱旋門賞馬が2頭居た」と言うほどであった。
国内では当時外国産馬との力の差が大きかったことによりクラシック登録できなかったが、98年NHKマイルとジャパンカップを勝利。現3歳シーズンで負けたのはこの年で一気に価値が上がったスーパーGⅡ毎日王冠である。
この年の毎日王冠は『沈黙の日曜日』の前の週であり、唯一グラスとエルが直接対決したレースでもある。このレースは『異次元の逃亡者』サイレンススズカが2着のエルに『影をも踏ませぬ』大逃げで勝利。
その出来事から毎日王冠の価値が上がったのだ。
生涯戦績11戦8勝。(内フランスサンクルー大賞含むGⅠ3勝)
獲得賞金4億5300万800円
引退後は種牡馬となるがインブリードの宿命である病に弱くなる弊害で腸捻転により2002年7月16日僅か7歳で死亡。残された産駒からはヴァーミリアン、ソングオブウインド、アロンダイトと3頭のGⅠ馬を排出。その血は確かに受け継がれており、今では母父に名前が残っている────
グラスワンダー。
『最強世代』のトップ3の一角。
怪我が多く、絶好調の時期が全くなかったが不死鳥のように蘇ってきたことから『不死鳥』のあだ名が付けられた。
95年2月18日生まれ。
エルと同じく外国産馬な為クラシック出走権が無く、更に現在の朝日杯フューチュリティステークスである朝日杯3歳ステークスで勝利後骨折。翌年の伝説の毎日王冠まで出走できなかったが、その後有馬記念制覇。そして現4歳シーズンに入り安田記念に挑戦するもエアジハードに敗北するが宝塚記念で絶好調の状態で乗り込みスペを置き去りにしてグランプリ連覇。
秋は毎日王冠で辛勝したことでジャパンカップを回避。そして有馬記念でスペとの最後の対決。結果はスペの時に話しているので詳細は省くがグランプリ三連覇。JRA賞特別賞が送られた。
その後現役続行したが、有馬記念で全てを出しきったのか低迷。宝塚記念ではこの年無双状態の『世紀末覇王』テイエムオペラオーに完敗、そして引退が発表された。
生涯戦績15戦9勝(内GⅠ4勝)
獲得賞金6億9164万6000円
引退後は種牡馬となりスクリーンヒーローを排出。
なんと2020年まで種牡馬をしていてあのゴールドシップですらグラスを敬う仕草をしていたのだ。
現在は種牡馬を引退して明和牧場にて穏やかな余生を過ごしている『最強世代』の数少ない生き残りである御年29歳である。
余談だが放牧地の蒲公英を食べ尽くしたことで『タンポポイーター』とファンの間で呼ばれている。
セイウンスカイ。
『最強世代』の二冠馬。
その活躍は主にクラシックで途絶えてしまっている葦毛が特徴の世代の逃げ馬である。
95年4月26日生まれ
生まれてまもなく牧場が経営不振で大変な状況であった。
馬主は有名な西山茂行氏。この方は自分の馬をとても大切にしており、中でもセイウンスカイとニシノフラワーは特別な存在となっているらしい。
クラシック以降は重賞でしか勝てておらず、クラシックでの勢いはどこへやらGⅠで全く勝てなくなり99年天皇賞(秋)で屈腱炎を発症し長期休養後2000年も現役続行したが、怪物となった『世紀末覇王』オペラオーの前に敗戦01年まで現役続行していたが橈骨を痛めたことで引退が決まった。
生涯戦績13戦7勝(内GⅠ2勝)
獲得賞金6億1028万2000円
引退後は種牡馬となっていたが産駒で活躍馬がおらず、更に2011年8月16日、心臓発作により馬房で立ち上がった際に頭部を強打して即死した。
享年16歳だった。
その血はニシノフラワーとの孫であるニシノデイジーが中山大障害で勝利し、活躍中。
キングヘイロー。
95年4月28日生まれ。
父は80年代ヨーロッパ最強馬ダンシングブレーヴ、母はアメリカGⅠ7勝の名牝グッバイヘイロー。
このなんと短距離から長距離までこなすとんでもない素質を持っている。
しかしレース中首を下げないなどかなりプライドの高い馬であったため、善戦マンから抜け出せずに居たが、2000年高松宮記念で大外から一気に飛んできて遂にGⅠに届いた。それまでGⅠに10度挑戦し、その度に敗れてきたその苦労が報われた瞬間である。
生涯戦績27戦6勝
獲得賞金5億26万6000円
引退後は種牡馬となり『無傷のオークス馬』で『猛馬』カワカミプリンセスを排出。牝馬を中心にその血が繋がっている。
19年3月19日、繋養先の優駿スタリオンステーションで老衰のために24歳で旅立った。
現在その血は『世界最強』イクイノックスに流れている。
母父となったことでその末脚の爆発力がうまく隔世遺伝しているようだ。

以上『最強世代』のメイン5頭でした。
次回は『世紀末覇王』ことテイエムオペラオーを語っていこうと思う。