『驀進王』─────
カタカナ表記でバクシンオーとなると競馬ファンはピンと来るだろう。
92年クラシック世代の短距離馬にて未だに短距離最強馬論争に名を連ねる名は体を表すを地で行った馬。
その名は『サクラバクシンオー』。
何が不思議かというとこのサクラバクシンオー、父はゴリゴリの中距離血統馬で86年天皇賞(秋)優勝馬のサクラユタカオー。母は天皇賞(春)と有馬記念を制したアンバーシャダイの全妹・サクラハゴロモであるのだが、この馬なんと突然変異で中距離血統なのにゴリゴリの短距離馬なのである。しかも母父はノーザンテーストである。
何なんだよお前は。
同期には『坂路の申し子』こと『サイボーグ』の異名を持つ無敗の二冠馬ミホノブルボン、そのブルボンの三冠とメジロマックイーンの天皇賞(春)三連覇を阻止してヒールと呼ばれ嫌われた淀に咲き、淀に散った『関東の刺客』、『漆黒のステイヤー』と呼ばれた祝福の意味を持ち、評価されてからた淀の宝塚記念で非業の死をとげたライスシャワーがいる。

そんなバクシンオーだが、その能力がスタミナではなくスピードに全振りしたのか、1400m以上ではスタミナがもたず全く活躍が出来なかった。
しかし陣営が短距離路線に舵を切ると善戦。
その年のスプリンターズステークスでは『新聞を読む馬』または『笑いながら走る馬』ダイタクヘリオス、同期の桜花賞馬ニシノフラワーに完敗するも6着健闘。
これはバクシンオーが1400m以下で唯一負けたレースでもある。
その翌年93年は脚部不安で春シーズンは全休し、10月になってから連勝。そして1年越しのGⅠスプリンターズステークスを制する。しかしこの馬、本当は1600mも勝てる素質をもっているのだが、1400m以上はノースフライトという怪物がいたために1400m以上の勝ち星が少ないのである。
そんなわけでこの馬は主に1400m以下を無双していたが、遂に走れるレースがなくなったため94年のスプリンターズステークスを最後に引退をすることになる。
だがそのスプリンターズステークスが異常だった。
なんとこの馬、スプリンターズステークスを同一GⅠ連覇という記録と当時としては異常なレコードタイムで有終の美を飾ったのだ。
そのタイム1分7秒1。
後に『龍王』ロードカナロアが1分6秒7で更新するのだが当時の芝コースを鑑みても異常である。
或いは今の高速馬場ならば1分5秒を切る可能性すらある。
だから何なんだよお前は。
引退後は社台スタリオンステーションで種牡馬となり初年度から100頭以上の牝馬に種付けして、短距離GⅠ馬を続々排出。
サンデーサイレンスの僅差で2位と上位リーディングに君臨した。
しかし2011年4月30日、種付け中に心不全を発症しそのまま帰らぬ馬となった。22歳没。
現在は母父としてその名前が残っており、なんとキタサンブラックの母父もサクラバクシンオーである。
母父になるといい意味で血が馴染み、そのスピードを遺伝させながらスタミナを遺伝させる配合でスピードとスタミナを併せ持つ逃げ馬が誕生したのだ。
本当に不思議である。
そしてその血は『世界最強馬』イクイノックスに受け継がれ、母父キングヘイローと掛け合わされたそれは脚質不明の怪物が出来上がったのである。
それにしてもこの馬、未来から名前付けられたんじゃないかと思うほどに名は体を表した馬である。
最後にもう一度言いたい。
お前本当に何なんだよ(困惑)
以上、『驀進王』でした


