家相や風水では
「玄関や門の前に大きな木があると、新鮮ないい外気(陽気)の採り入れに邪魔になり、悪い気(陰気)が抜けるのをさまたげるので良くない」 と言われています。

つまり、この絵は陰の気に満ちていることになります。 このことは何を意味しているのでしょうか?

じつはこの『名所江戸百景』が刊行される前年、江戸は安政の大地震に見舞われ、壊滅的な被害をこうむっていました。

地震の4ヶ月後からスタートしたこの連作は、建造物が修復されるとそれを名所絵の中に描き込み、復興する江戸の姿を広く人々に知らしめようとしたようです。

ちょうど2年後に刊行された「神田明神曙之景」で、人物が見ているのは地震で最も被害の大きかった本所、深川、浅草方面なので、2年が経過した時点でも復興が未だ進んでいないということを、広重は言いたかったのではないでしょうか。