江戸で最も有名だった酉の市が、浅草鷲(おおとり)神社の酉の市でした。
この日は近くの吉原の木戸も開放されて、妓楼は一年中で最も賑わいました。
猫がいるのはその吉原の妓楼の一室で、猫の視線の先には鷲神社に詣でる大勢の人々が列をなしています。
部屋の中には遊女が客から送られたと思われる熊手型のかんざしがさりげなく置かれています。
原信田氏は前掲書で、この猫は遊女の飼い猫ではなくて遊女そのもの、天保の改革で遊女を描くことが禁じられていたので、遊女のメタファーとして猫が描かれたのだろうと言っています。
遠景には富士山が描かれていますが、近景の部屋の窓格子の桟で
視線が妨げられ、自然と窓格子の方に意識が向いてしまいます。
それは牢屋の格子のようにも見えます。
実際、遊女たちは逃亡するおそれがあったため、めったに外出を許されなかったのです。
