深川万年橋



クローズアップを駆使している代表的な作品として、しばしば取り上げられています

画題にもなっている万年橋は、小名木川が隅田川と合流する地点に
架かる橋で、船舶の通行を妨げないように橋脚が高く造られていて、富士見の名所でもありました

手前に見える紐でくくられ手桶に吊るされている亀は、放生会に使われる放し亀で、万年橋の橋番から購入した人が、放生会の会場である近くの富岡八幡宮へと橋を渡って急ぎ向かっています。

原信田実氏は『謎解き広重「江戸百」』の中で
「万年橋は、今の清洲橋を、深川の清澄へ渡り、北へ上がったところに架かっている橋である。その北側には松尾芭蕉が住んでいたことがあり、史跡にもなっているが、それは現代の話である。当時の万年橋は名所でもなんでもない。」 と言っています。

実は、万年橋は景勝地を指す「名所」ではなく、伊豆諸島への流罪人を送り出す乗船場所として知られていました

広重は万年橋と放され自由になる予定の亀を描き島に渡った流人たちの罪が許され、無事本土に帰れるよう願いを込めたのはないでしょうか。