「それから数日が経ち、再び同じコースをランニングしていた私はなんとなく「神田大明神」に寄り、前回とまったく同じようにお参りした。すると、信じられないことに
境内を出て30秒もしないうちにまた携帯が鳴った。
今度はペーパーバックスの編集者からだった。「私の個人的な知り合いがインタビュー原稿をもとに1冊を書き上げるゴースト業者を探しているのですが、もしもやる気があるなら連絡先を伝えます。どうしますか?」という内容だった。
私は連絡先を聞き、すぐに電話をかけた。
いったい、どうなっているのだろうか。
初詣以外で神社にお参りしたのはこの2回だけなのであるが、必ず境内を出た
途端に絶妙のタイミングで仕事の発注がきたのだ。
神社でお参りすることと仕事がくることの相関関係は、通常考えられないわけで、もしかすると編集部ですら「水野のネタ」と思っているかもしれない。
しかし、私にとっても、このようなエピソードをでっちあげてもなんのメリットもなく
(しかも仕込みに半年もかけて!)、下手をすると「ああ、水野君も成功本の読みすぎでついに……」などと同情されかねないリスクすらある。
したがってもちろん、これは本当にあった出来事である。
では、なぜ、このようなことが起こったのか?
正直、この時はあまりの偶然に驚きながらも、「何かの予兆かもしれない」という思いもぼんやりとあった。
もしかしたら成功本の読みすぎかもしれないが、この時点で「本が売れるかもしれない」という予感めいたものを感じていたのだった。」


結局、著者の書いた本はベストセラーになったのでした!