レポート6

3月4日
アルノ川沿いを歩き、ルネッサンスの香り漂う花の都フィレンツェの街並みを堪能しながら、ウフィッツィ美術館
に向かった。ホテルから少し歩いただけでその空気感をすぐに肌で実感し、視界に入る景色ひとつひとつに
高揚しこの街の美しさに魅了され、建物の配色や至る所にある彫刻からもたくさんのインスピレーショを感じる事
が出来た。
ウフィッツィ美術館では、館内の雰囲気からして重厚で、歴史の教科書で見た事のある名だたる芸術家達の作
品を目にする事が出来た。生の迫力や、絵に引き込む力は想像以上に凄く、作者達の念やエネルギーを感
じられた。聖書の場面や物語が描かれ、そのひとつひとつに意味やメッセージがあり、歴史を重ね多くの人達
に伝えられまたそこから何かをつかみ感じとって新しい何かが産まれていくのだろう。私もその内の一人であり、
歴史的衣装からのヒント、裾の模様、細かいディテール、繊細さや柔らかさ、素材の表現、色彩バランス、
配色、文字のバランス、表現の斬新さなど、様々な箇所からデザインの要素を感じた。
中でも、ボッティチェッリの「PRIMAVERA」「ヴィーナス誕生」を目の当たりにした時は圧倒され鳥肌が立った。
魂が宿っているかのような完成度、女性らしさや柔らかさの表現にはかなりの衝撃を受け、中でも色彩の美しさ
や花のディテールに釘付けになった。その配色やディテールはテキスタイルデザインのイメージに繋がる。
職人の街でもあるフィレンツェでは、伝統工芸の店も多くみられ『パピエクブ』という紙装飾法の紙製品の店を
訪ねた。まったく同じものをつくるのが難しいといわれる手作りのマーブルペーパーは、綺麗な配色がたくさん
並べられ、青系、赤系、紫系などの今まで見た事のない模様や色彩を見る事が出来た。特に気になった2色
の紙を購入し、今後の企画に生かしていきたい。
街の本屋さんをのぞくと、そこにも実用的に企画に生かせそうな書籍が並び、まるで宝探しの様な感覚で企画
イメージに繋がる書籍を探し出す事が出来た。
二日目は、サンタマリア・ノッヴェラ教会とサンジョヴァン二洗礼堂を観て回った。
教会の中は、天井が高く空間の迫力に圧倒された。ステンドグラスから差し込む光、代理石の優しい色合い
と配色使い、細部のディテール、空間のバランスの美しさを五感で感じた。中でも泉のモチーフが印象的で、
ブランドコンセプトである水との関わりは重要な鍵となってくるので、ここで感じとった空気感をブランドイメージ
にプラスしたい。
洗礼堂の中も天井が高く、絵画に金細工を施した天井画に魅了された。ここは写真が可能だったので、たく
さん写真に納めた。色彩や床やドアの渕に施された立体的な模様を実用的に活かしたい。
細部の至る箇所のクオリティがとても高く、ひとつひとつが完成されているので、全体を通して観た時にそれら
が更にまとまりひとつの空間が完成される。それはブランドにおいても言える事で1枚1枚が完成された物であ
るか、そこに不自然な物はないか、全体で魅せた時のバランスはどうなのか、ひとつの世界を作り上げる事
に学ぶべき要素を空間により感じる事が出来た。



3月6日
2日間SIERAチームと行動させて頂き街にも馴れてきたので、最終日はWendineチームで2人で行動した。
Wendineのコンセプト、水との繋がりをテーマにフィレンツェの街を流れる大きなアルノ河沿いを歩き、改めて水との関わり合いを大切にし河越しに見える美しい町並みを脳裏に焼き付けた。
アルノ河沿いを進むとピッティ宮殿があり、宮殿内は部屋ごとにテーマ性を感じさせる作りになっていた。
宮殿内は美術館になっており、赤い部屋や緑の部屋など部屋の作りが全て異なり絵画を見る楽しみの他に、部屋全体のバランスや、細部の作り、家具の美しさや、ひとつの部屋の色彩、配色など空間のディレクションを学んだ。もちろん絵画も彫刻も素晴らしく魅了されたが、それらのディスプレイが更に素晴らしく、良い物を更に良い物に魅せ、洋服に通じるものを感じた。服をどのような世界観で打ちだすかのひとつにディスプレイ力は欠かせなく、ディスプレイによって世界観がより伝わり服がより良く見えるからだ。
そんな事を考えながら、部屋を進んでいくと、今までの作りとは異なる、それでいて違和感のない部屋があった。そこは白いバスタブが置かれた部屋で奇麗な水色がベースとなっており、アイボリーの天使の彫刻や薄いゴールドの細工が施され、それらのバランスがまとまってひとつの世界を作り出していた。
この世界観はWendineのイメージにぴったりで、ここからたくさんのインスピレーションを感じた。この様な運命的な出会いにより新しいものが生まれ自分を成長させているのだと実感させられる体験だった。
宮殿内には素敵な泉もあり水の音を聞きながら、次の展示会に向けてのテーマイメージを得ることが出来た。
街では宝石や時計の店が建ち並ぶ、ベッキヨ橋の端から端までをくまなく探索し、デザインの参考となる商品の写真を沢山撮る事が出来た。日本で目にする物と違う独特のデザインを参考にし、それらを上手く生かして新しい感覚の物を作り出していけそうだ。
創作するにあたって「自分は何を表現したいのだろう?」という原点を深く掘り下げていくと、
違和感なく(時代の流れにズレる事なく)多くの人達に好まれるものを自然と自分の中から生み出し、世界観を打ち出せるか。
常に心の在り方や知識、想像する力を磨き高めていかなければいけないと思う。
それは自分にとっても楽しいことで、日常で起こる様々な事や今まで経験してきた事を良い方向へ結びつけ必然的に多くの事を学ぶ事が出来るからだ。
結果、たくさんの経験が意味のある事に繋がっていくので今回のフィレンツェ研修旅行で感じた事や体験から様々なインスピレーションが産まれ、その体験が身となって自分を通して形となって産まれていくのだ。
