平成の侍 町井勲オフィシャルブログ『居愛道』Powered by Ameba -568ページ目

並研磨下地

大幅に研磨作業が遅れているため、前記事にも記述したように、僕自らが稼動せざるをえない状態。

刀剣研磨に時間を費やしていては、大家族を養えるだけの金は稼げません。だから極力したくないのですが… お客様をお待たせするわけにもいかず、やむをえません…(溜息

いずれも上研磨のご依頼であれば、それなりに割り切れるのですが、観賞用並研ぎだったり、居合用研磨だったりと、本来の僕の仕事ではない範疇。

本職の元で三年は修業したくらいの腕がありますねと、過去記事の中で褒められましたが、一応これでも本職です。研磨修業時代には、無鑑査最年少記録樹立を狙っていましたが、諸般の事情から、研師の世界で立身することに見切りをつけ、今ではよほどのことが無い限りは研磨しないだけです(笑

滅多に仕上げまでしませんので、化粧はさておき、下地研磨の面では、荒身を一から研がせれば、見る人を唸らせる下地はできると思っています。

で、24日、25日と二日間東京へ行くこととなっていたので、急ぎ仕事をこなす…



指表



指裏


横手が真っ直ぐじゃないじゃない? と思われるかもしれませんが、これ、敢えてこの状態にしています。研磨修業三年目だからではけしてありません(笑

前述のように研磨作業に時間を割くことができませんので、この並研磨依頼の御刀に関しましては、写真の通り改正まで仕上げた状態で、兄弟子(研磨の)の元へ送り、引続き仕上げをして頂くわけです。

兄弟子も仕事が混んでいるため、一から研磨となると、時間がかかってしまい、他の研磨業務に支障をきたすため、すぐにとりかかれる段階まで、僕が研磨して時間短縮を狙っているというわけです。

お客様から頂くのは並研磨料金ですし、中途からの作業とは言え、兄弟子にはしっかりと報酬を支払うわけですから、僕は完全無償奉仕となります…

本来ならやってられない内容です。

でも、納期の遅れを少しでも取り戻すにはこれしか手が無く…

そのため、先月の刀剣の売上は殆ど無く、町井家ピンチです…(涙


金にもならない研磨のために左手も傷だらけ…


赤丸で囲った箇所が帽子を摘んで研磨する際に、どうしても切れてしまいます。

皆さんが日頃見る研ぎ上がりの刀剣は、こうして研師が掌の薄皮を削ぎ、時には血を流しながら仕上げていることを忘れないで下さい。

そうやって丹念に仕上げた刀で、遊び感覚で物切りをされ、ヒケだらけになり、錆を発せられると、正直、

「僕はなんのために痛い思いして研いだん?」

と嘆かずにはいられないのです。


居合や抜刀をされる方、物切りするなら仕上げまで施した刀ではなく、改正か、さっと内曇を引いただけの状態でやってください。

刀本体を作品として残せる刀匠と異なり、研師の仕事は悲しいことに後世に残せません。

例え一日、いえ、一分でもいいので、己が研いだ研磨作品を、少しでも長く存在させて頂きたく思います。

これは刀剣研磨に携わる方なら、殆どの方が思う願いではないでしょうか。

そう言う思いが僕は強いので、刀剣研磨コンクールのために、研磨する必要がない刀剣を、再び研磨して出品する研師に賛同できません。

一生懸命研磨した己が研磨作品を、後の人の手によって同じことされたら、あなたは嫌じゃないですか? と問いたい。

僅かとは言え刀も痩せる。

江戸時代の古い研ぎが殆ど残っていないのも、こうした研磨コンクールの弊害と言えます。


僕が秘蔵する武蔵大掾忠廣(初代忠吉)は、第二次大戦後の刀狩りも運良く切りぬけ、江戸時代、広島城内に於いて研磨された状態のままで残っています。

出来が良いので研磨コンクールの材料としては真向きですし、所々、僅かに変色した程度の小さな錆も見られますが、僕は敢えてこの刀を研磨しません。

横手際の纏め方などは、江戸時代の研磨より、現代の研磨の方が断然優れていますが、この武蔵大掾忠廣の研磨こそ、江戸時代の一流の仕事の貴重な遺作で、広島浅野本家によって研師を城内に招き、研磨させた大変貴重な資料なのです。
また、この忠廣刀、通常、流しと呼ばれる研師のサインに該当する磨き筋を入れるところに、筋を入れずに磨針でこう記されています。


「於鯉城行光研之」


現代の研ぎは横手付近を際立たすために、無駄に減らし過ぎと言えます。
研師によっては、横手の前後をえぐる様に研いで横手を立てたり、また、横手を立てることに執着しすぎて、帽子を枯らしたり、横手上を僅かに枯らして帽子の円弧を崩してしまっているものが数多く見られます。
その点、この忠廣の研ぎは、非常に素直であり、無理に横手を立てようとはしていません。それこそ見栄え良く三ツ角を纏め、あとは筋切りで横手を切っているだけ。
武器としての日本刀を考慮すれば、肉はしっかりついているにこしたことはありません。この刀を研いだ行光なる研師は、見た目だけではなく、武用面もしっかりと考えて研いでいるのだと僕は絶賛するのです。


今の時代の人間が触れてはいけない、壊してはならないものが、この忠廣刀にはあるのです。


僕は町井家がこの忠廣を秘蔵する限り、研師行光の研磨作品を後世に遺させる所存です。






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