指定校の推薦が決まったのは9月の下旬頃。
それからは長い休みみたいなものだった。
夕方に担任から電話がかかってきた日は覚えている。
何か用事で玄関をでてすぐに黒猫が横切った。嫌な予感がするなと思って、家に戻ったら指定校推薦の内定が、と親から。
父は笑顔で握手を求めてきた。
担任は棚ぼたと言っていたらしい。そりゃそうだ、1年の時に停学になった前科つき(逮捕はされてません)だったしな。
一応、残った2、3学期の中間期末テストはしっかりやろうとしたが、やはりなかなか気合い入らず、順位も中位まで下降。
大学の面接はめちゃくちゃな受け答えだった。
これも結構覚えている。
質問はまず最初にここからあなたの家に行く道順を教えてくださいと。
僕は新幹線にのれば着きますよと。
面接官は、そうじゃなくて、この場所からあなたの家まで行くとしたら色々道順あるでしょ?と。
あ、そうですね。まず、ここの大学をでて、中略、で駅でおりたら道なりに真っ直ぐ行きまして、信号がありますので右に曲がり、次を左に曲がり、その後真っ直ぐいったら左に曲がり、また真っ直ぐ行ったら右へ…と話していたら何か目印とかないのですか?と。
僕の家は田舎の住宅街なので、目印とかはないですねと。そうしたら面接官はこりゃダメだと苦笑いコメント。
学部で何を学びたいかと高校の部活の登山部はどんな活動をしていたかを聞かれた。
登山部は部員はたくさんいたらしいが、登山部という帰宅部であった。部活は全員加入のため、ここに籍をおく幽霊部員が多数ということだ。この部活に出たこともないし、どこで活動していたかも知らず…。
僕は、ハイ、〇〇山に登山をしまして、とても楽しい思い出を作りました、と満面の笑みをかまし、思い出せばすごく楽しかったという表情をつくり、中身のない薄い作り話をした。
こんな感じだったので、指定校推薦と言えどももしかしたら不合格なんではとまじめに思い始めた。
12月の頭くらいに合格の連絡がきてかなりホッとした。面接から決まるまではかなりヤキモキしていた。
年が明けてから、資金稼ぎにマクドナルドでバイトした。高校で見た顔や中学の同級生もバイトしていた。
結構ハードな仕事で、ずっと立ちっぱなしで揚げ物を作り続けたり、ハンバーガーを作り続けるのは辛かった。
美人なバイトもいて悶々としたりもしたww
当時、フリーターが流行っており、何人かいらした。
大学進学を決まっている身として、フリーターってなんか宙ぶらりんな印象で見下し感があった。
2ヶ月ちょっとくらいしかいなかったが、なかなかな良い経験だった。若いころだからできることだね。
バイトと並行して自動車免許も取りに教習にも通った。
最初に車を運転した時は全然だめでかなり落ち込んだ。3.4回目で慣れた。
高校の最後の思い出は、転校前の中学の友達が遊びに来てくれて、居酒屋に行ったことだ。
昔だから許されたが、今じゃ絶対に無理だ。
最初は何を飲もうか悩みながら中生を頼み、おでんとか食べてた記憶があり。日本酒もちびちび飲みながら酔っ払ってきて、トイレでニヤニヤしながらはじめての酔いの経験をした。
その後は2人でカラオケに行った。カラオケは3回目だったが、個人的な感じで行ったのは初めてだった。声が枯れた。ストレスを発散した。
友達は家に泊まり、次の日は友達はジーパンを買って帰って行った。彼とは20年近く連絡をとっていないが元気にしているだろうか。この彼は中学時代にロックフェスに2人で行ったこともあり、今考えるとかなり親しかったと思う。
2月だったか学校へ行かなくて良くなって、非常に助かった。
暇だし話し相手もあまりいないし。
そんなこんなで卒業式に出席し、お別れ。
卒業式が終わって教室にもどり、3年間担任だった年配の女先生から卒業証書を受け取った時の顔は厳しいものがあった。まぁ、問題起こしたし、ちょっと危なっかしい生徒だったと思われる。
学校の代表として指定校の大学へ行かせるんだからしっかりやりなさいよと言っているようだった、マジで。
そうそう、3年の夏休みにブリーチ入れて、結構明るくなった髪の毛で学校に行ったら、心配された。他の先生も言ってたよと教えてくれたし。直ぐに黒に戻した。
神林先生は元気かな。停学の時はわざわざ家に来てくれたし、高二の時にいきなり医者になりたいと相談したり、大学面接の練習も付き合ってくれたし、推薦状も書いて見せてくれたし、世話になったなぁ。自分はおとなしい生徒だったと思うがかなりインパクトはあったのかもしれない。当時50歳くらいだったと思う。卒業したのは25年前だから、今は75前後くらいか?十分に生存の可能性はある。
まぁ、今なら胸張ってお会いできるよ。大学の成績はイマイチだったけど、家族もできてちゃんと真っ当に生きてるし。
最後にさよならした人間は1年生の同級生でクラスの嫌われ者だった。それは親の車を待つ間にばったりと出くわしたからだ。
まぁ、俺に相応しい奴だったかもしれない。