ロシア革命100年の昨年、関連する新刊のなかで秀逸だったのは、岩波新書の池田嘉郎『ロシア革命 ー 破局の8か月ー』だと思う。ロシア革命といえば普通10月革命を想起するが、この著作は2月革命に焦点を当てて、なぜ2月革命は挫折し、なぜ10月革命は成功したか、と問う。

    実に多くの人物が革命の遂行にかかわり、多いだけに思想も生きかたも経歴も多様を極めていたことに驚かされる。よくも、これだけの異なる思想や生きかたの人間が、ひとつの方向を目指せたものだと感心する。いや、目指せなかったのだ。ひとつの方向に行けなかったから、2月革命は挫折したのだともいえる。

    ただ、この著作の結びが、あまりにも意外であり、しかし、素晴らしい卓見だと思うのだ。

  「結局のところ、1917年のロシア革命が私たちに伝えるのは単純なことである。ひとは互いに譲りながら、あい異なる利害を調整できる制度を粘り強くつくっていくしかないのだ」

    なんだ、これって、なんのことはない、「保守主義」じゃないかと、思ってしまう。あのロシア革命の結論としては、なにか肩すかしをくらった感がするこの結びに、強い意外性を感じるとともに、しかしこれは卓見だとしみじみ思うのだ。

    ロシア革命とて、その急進性や破壊性とは裏腹に、それが後代のわれわれに残してくれた遺産は、言い換えれば、多様性を認めつつ、一歩ずつ前進する、ということだったのだと、この著作の結論をあらためて感慨深くかみしめたいと思っている。

Forsterian