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銀のマント


 シュールレアリスムの画家マックス・エルンストは、コラージュという手法がことのほかお気に入りだったようだ。膨大な量のコラージュ作品を作っている。それらは、「百頭女」「カルメル修道会に入りたかった少女の夢」「慈善週間」「神々の不幸」というタイトルの作品集となって残されている。
 エルンストのコラージュは、古い雑誌や通俗小説の木版の挿絵を材料に作られている。当時のありふれた、どこにでも転がっているような挿絵を切り貼りし、誰も見たことのないような不思議な物語世界を作り出した。
 これらの物語は、ストーリーがあるようで明確なストーリーはない。だがストーリーがなさそうで、ストーリーはある。そのストーリーを見つけるのは読者の仕事だ。読者は、各ページのコラージュとキャプションを読みながら、自分の「百頭女」というストーリーを作り出していく。そんなふうに「百頭女」を愉しむことが可能だ。
 ここで紹介したのは文庫版の「百頭女」で、元版は昭和49年に箱入りの豪華本として出版されている。元版は何十年も前に絶版になっており、それなりのプレミアがついていて手に入れるのも困難だ。文庫だとコラージュがかなり縮小されていて、細部が潰れてしまっていたり見づらかったりする欠点はあるが、とりあえず「百頭女」というストーリーのない驚異の物語を愉しむことは可能だ。
 文庫本で気軽に不思議な「百頭女」の世界に迷い込んでみてはどうだろう。


銀のマント



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百頭女 (河出文庫)


百頭女 (1974年)