勃起困難、硬度不足などのほか、勃起の維持も診断の基準となっており、性交の途中であるにも拘らず性交渉の完了まで充分な勃起を維持できない症状、いわゆる「中折れ」もEDである[3] 。
本症はかつてはインポテンスもしくはインポテンツ(独 : Impotenz、略称: インポ)と呼ばれるのが一般的であった。しかしながらその定義は「性欲、勃起、性交、射精、極致感のいずれか1つ以上欠けるかもしくは不十分な物」とされていた。これは現在で言うところの性機能障害 に相当する症状である。また、「インポ」は多分に侮蔑的な意味を含んでいるとも取られるため、現在の日本においてはその正確な表現として勃起不全、または英語の Erectile Dysfunction を略してED(イーディー)と呼ばれることが多い[4] 。
また、東洋医学 では陽萎(ようい)と呼ばれ、鍼 (はり)などによる治療がなされる[要出典 ]。
EDに悩む人は先進国 において男性人口の1割を占めるといわれ[要出典 ]、加齢に伴い増加傾向にある。器質性のEDは50代以上に多く見られるが、機能性(心因性)のものは若年層にも多く見られる。2010年現在、日本 を始めとする先進国では健康寿命 が長い傾向があり、永く性生活を楽しみたいと考える老年者が増えてきたことも、近年EDが注目される要因とも考えられる[5] 。白井将文が住民台帳からの無作為抽出で調査し、1998年 、アムステルダム における第8回国際インポテンス学会で発表したデータによれば、その罹患率は40代前半16%、40代後半20%、50代前半36%、50代後半47%、60代前半57%、60代後半70%、である[6] [7] 。
また、「成人男性の健康と性に関する調査委員会」の報告に拠れば、20歳から39歳という若年層の4.7%が勃起不全を訴えている[8] 。
かつては患者が非常に言い出しにくい症状であり、治療も困難であったが、後述する「バイアグラ」の出現以降、患者と医師が協力して、また同時に特にパートナー(妻)の助けも必要とせず、患者単体で治療に当たれる事から、患者もより積極的に治療に当たれる体勢が整いつつある[9] 。
性機能障害と勃起不全 [編集 ]
勃起不全(ED)はしばしば性機能障害(SD)と同一視されるが、SDは「性欲 、勃起、性交、射精 、オーガズム の一つでも欠けるか不十分なもの」[注 1] と定義されており、EDはSDの一つに過ぎない。また広義での男性不妊症と捉えられがちであるが、2010年現在は男性の体内からの精子採取による人工授精などが可能であり、また、不妊症は「正常な性行為を一定期間続けても妊娠に至らない」ケースを指すため、正常な性行為を行い得ない本症は厳密には男性不妊症には該当しない。
加齢と勃起不全 [編集 ]
一般に年齢別に見た場合、若齢の群より老齢の群の方が、性行為自体の頻度は少なくなる。もちろん性行為の有無はEDを始めとする性機能障害のみが原因とも限らないが、テストステロン の合成はやはり老齢になると減少し、精巣 にも若干の萎縮が認められ、海綿体 平滑筋 の充分な弛緩もままならなくなる。また、かつてキンゼイは結婚の期間と性交の回数の相関関係を指摘したが(すなわち倦怠期 )、これを否定する説もある。
また、老人を対象に行われた性欲調査においてはおよそ80% - 90%の男性が性欲を「ある」としている。特に1973年 - 1985年 に日本において老人クラブ員の60歳以上の男性を対象に行われた調査では、性欲を持つ者が90%内外、まさしく性行為を望む者が42.1% - 60.4%、となっており、性欲そのものについては老いてもなお持ち続け得るものであると言える。
なお、老齢の女性も老人性膣炎 、膣萎縮症 、また子宮の萎縮によるオーガズム時の痛みなどにより性交渉が困難となる場合が見られるが、エストロゲン などの投与により改善の可能性がある[10] 。
分類 [編集 ]
機能性(心因性)勃起障害 [編集 ]
解剖学的に勃起機能に異常は無いが、何らかの心理的要因などにより満足な勃起ができない状態[2] 。
器質性勃起障害 [編集 ]
勃起に関わる各神経、組織、血管系(血管性勃起障害)、或いは陰茎自体の異常(陰茎性)などの解剖学的な問題、もしくは内分泌障害によって満足な勃起を得られない状態[2] [11] 。陰茎折症 や脊髄損傷などの各種外傷、手術、及びそれらの後遺症によることもある[12] 。
混合性勃起障害 [編集 ]
機能性勃起障害、器質性勃起障害が混在している状態。
危険因子 [編集 ]
罹患率は年齢に比例して上昇し、明らかな外傷などによるもの以外の原因としては高血圧 、動脈硬化 、男性更年期障害 (ホルモン異常)が考えられている。その他、糖尿病 、心疾患 [注 2] 、末梢血管障害 、多発性硬化症 、鬱病 、腎機能障害 などの慢性疾患 が原因となる場合や、その他酢酸クロルマジノン 、スルピリド など各種薬剤の副作用として勃起障害が表れる場合があるほか[13] 、タバコの影響も強く懸念され[注 3] 、またアルコール は短期的な影響だけではなく、量が過ぎれば長期的に勃起に悪影響を及ぼす虞がある[14] 。すなわち、概して生活習慣病 (成人病)の予防はED対策に効果的であると言える。その他、長時間の自転車 運転などで、会陰部の血管や神経を長時間圧迫する行為も危険とされる[15] 。
なお、前立腺肥大 に伴うその除去手術の場合、症状と術式によって一概には言えないが、現在は昔ほど乱暴な手術は行われることはなく、例えば内視鏡 を用いた「経尿道的前立腺切除術」であれば、勃起不全の発症率は10%未満と見込まれている。また直腸癌 の手術においては、自律神経を温存し得たケースに関しては勃起不全が17%、射精障害が20%にとどまったのに対し、拡大郭清にまで至ったケースにおいては勃起不全が66%、射精障害は100%にまで達する[16] 。
また、心因性のものとしては精神的なストレス、性に対する誤った教育環境、失業などによるストレス、性行為に対する自信喪失、特に新婚初夜 での性行為の失敗が原因となる新婚勃起障害(後述)、また、時としてホモセクシャル などが挙げられる[17] 。
また近年では、テクノ症候群 [注 4] [18] に伴うEDも注目されている。
新婚性勃起障害 [編集 ]
結婚後、器質(心因)的、機能的に明らかな異常がないにも拘らず、充分な性交渉を行えないものを新婚性勃起障害、または新婚インポテンス(この場合は性機能障害)とする[注 5] 。この場合、男性側ではなく女性側に原因が求められるものがある。本稿ではこの内、新婚性勃起障害について述べる。なお、結婚後一度も性交渉(膣 への陰茎の挿入)が無い場合を指して未完成婚 と言われる。
新婚性勃起障害は、婚姻直後からED状態、すなわち夫婦間の性交渉が行われない状態となるため状況は深刻であり、『内分泌疾患 精機能障害』によればサンプルは少ないものの、27.6%が離婚または離婚訴訟、或いは別居状態に陥っていた。また、患者の結婚の様式は見合い結婚 が25例、恋愛結婚が4例とされており、患者のほとんどが見合い結婚である。初婚年齢は一般より高く、また、童貞 であった率が62.5%であった。また、『性機能障害と未完成婚』によれば、性機能障害全般における調査の内、婚姻形態が明らかなケースでは、恋愛結婚16例、見合い結婚65例であった。なお、104例の性機能障害中、83例が勃起不全であった。
また、1987年 に行われた調査では「性機能障害」300例中のうち、一人息子が117例、長男が78例に上っていた。さらに末子が70例見られ、以上が全体の88.7%を占める。
多くの場合、その発端は心因性のものと疑われ、結婚に伴う各種のストレスや環境変化、夫、妻、もしくは夫婦双方の性的な無知や未熟などがその原因と考えられている。しかしながら、対応を誤ると結婚初期の性交渉の失敗の原因を誤解し、さらには妻や親の不適切な対応やそれに対する気遣いなどで症状はさらに悪化し、自身が性的不能者であると言う自己暗示 に陥ってしまう危険性さえある。失敗に対する誤認識としては例えば陰茎のサイズや包茎など、あるいは腰痛や過去の外傷などが挙げられる。妻の不適切な対応としてもやはり以上の様な誤認識をもとに夫婦が揃ってこの症状に対してのアプローチを間違っている場合があるほか、夫を性的不能者と決めつけてしまうケースも見られるとされる[19] 。