常に妄想している、自キャラたちの物語の一部。
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「どうしても、この子だけは。あの人と私の、大切な子供…」
辛く悲しいことばかりだった恋の記憶。
森の妖精一族の中で、たった一人だけこの人間界に取り残された。
その寂しさと、自分もいつこの世界から消えるか分からない不安をこらえ、彼女はやっと自分の存在を守ることができた。
その中で偶然と出会った、深い傷跡を持った人。
いや、見た目は普通の人間だけど、その正体は「人間」ではなかった彼。
すべての「闇」を司り、「再生」と「休息」、そして「回復」を支配する「闇」の君主。
一番愛してた人を、他の誰でもない双子の兄に奪われたという深い傷。
初めて会った瞬間、彼女はそう思った。
「この人の傷跡、私が必ず消して見せる。この人こそ…私のことを本気で愛してくれるたった一人だから」
最初の彼は冷たかった。
深い傷にとらわれ、誰にも心を開けようともしなかった。
それでも、彼女は諦めなかった。
閉ざしていた彼の心を、少しずつ開けっていった。
遂に、彼は彼女を受け止めた。
たった一人の森の妖精の彼女は、「闇」の女王、魔界の王妃になっていた。
そして、彼女は待ち焦がれていた彼の子供を孕んだ。
しかし、彼女の受胎は辛いことだった。
そもそも天界の「天族」や、魔界の「魔族」よりは一段下の能力を持つのが妖精族だった。
しかも彼女の夫は「魔王」。その名に相応しく凄まじい力の持ち主だった。
みんなが彼女のことを心配した。
子供も母親も危ないと言った。
魔王の血を受け継いだ以上、妖精の彼女には子供の力を耐え切れることさえも苦しいから。
それでも、彼女は諦めなかった。
どうしても守りたかった。
彼女の一番愛する、「彼」の子供だったから。
今、彼女は部屋にいる。
ベッドに座っている彼女に這ってくる、小さな赤ん坊。
一年前、奇跡みたいに二人のもとへやってきた、愛の塊。
彼女の顔と、彼の力を併せ持つ、妖精界と魔界の間で生まれた、「闇」の小さな王子。
「ママ、ママー」
小さな手を伸ばし、母に縋り付く。
「ほら、アスカリオン。おいでー」
近づいた赤ん坊をそっと引き寄せ、優しく抱きしめながら微笑む。
彼女は今、この世界の誰よりも幸せだった。
愛する夫と、子供と一緒に暮らしている今の自分が誇らしいぐらい。
