北里大学病院医療過誤裁判 東京地裁から最高裁まで 第Ⅺー4に引き続き、偽証罪不成立及び告訴状(偽証罪)について記載したいと思う。

 

第3 告訴状

 

告 訴 状

                         平成28年8月15日

東京地方検察庁

特別捜査部 直告班 御中

 

                       告 訴 人  筆 者

 

         告訴人  住居 〒〇〇〇ー〇〇〇〇

                 〇〇〇県〇〇〇市〇ー〇

                 職業 無職

                 氏名 筆者

                 昭和〇〇年〇年〇日生

                 電話 〇〇〇〇ー〇〇ー〇〇〇〇

                 FAX 〇〇〇〇ー〇〇ー〇〇〇〇

 

         被告訴人 住居 〒〇〇〇ー〇〇〇〇

                 〇〇県〇〇市〇ー〇

                 職業 医師

                 氏名 HN

                 昭和〇〇年〇年〇〇生

 

【目次】

第1部 告訴の趣旨………………………………………………………………2

第2部 告訴事実…………………………………………………………………2

第3部 告訴の事情………………………………………………………………33

 第1章 被告訴人受診経緯……………………………………………………33

  第1 被告訴人は告訴人の受持医であること……………………………33

 第2章 被告訴人による虚偽説明・虚偽記載………………………………34

  第1 被告訴人によるカルテ虚偽記載……………………………………34

  第2 被告訴人による虚偽の診断書作成・交付…………………………34

 第3章 医学的正当性のない本件第1手術実施に因る重篤な後遺障害…35

 第4章 偽造文書・看護記録改竄隠蔽・架空の病名病歴治療歴他………35

 

第1部 告訴の趣旨

 被告訴人の下記所為は、刑法169条(偽証罪)に該当すると考えるので、被告訴人の厳重な処罰を求めるため、告訴する。

 

第2部 告訴事実

罪名 偽証罪(刑法169条)

 被告訴人は、平成26年12月18日、東京地方裁判所611号法廷において、損害賠償請求事件(平成25年(ワ)第10076号)につき、原告・被告(学校法人北里研究所)双方申請により、証人として宣誓の上証言した際、以下記載のとおり、自己の記憶に反した虚偽の陳述をし、もって偽証したものである。

 

第1 診療情報提供書発行経緯に関する偽証

1.偽証の要旨

(1)被告訴人は、「退院(6月12日)の際、診療情報提供書(甲A43)を渡した。」と証言した。これは明らかな虚偽である。

 

(2)被告訴人は、「6月11日、(甲A43の宛先が空欄となっている理由として)(告訴人が)自分でほかの病院に行きますということで、紹介状のほうには病院の名前を記載しないで書きました。」と証言した。これは明らかな虚偽である。

 

2.診療情報提供書発行に関する被告訴人の虚偽の証言(H証人調書8,13頁)

(1)I代理人「これは(診療情報提供書:甲A43号証)、最終的に、退院の際に渡した診療情報提供書ですね。」

HN「はい。」

I代理人「この診療情報提供書には、転院先として相模台病院と記載していませんね。」

HN「はい。」

I代理人「ここが空欄となっているのは、なぜでしょうか。」

HN「これはご本人の希望で、記載はしていません。」

 

(2)原告(告訴人)「先ほど甲A43号証について、原告が宛先を空欄にしてくださいと言ったことについて対して書いたというふうに言いましたよね。」

HN「はい。」

原告(同上)「これは事実ではありません。」

本多知成裁判長「質問の形で何か聞けますか。」

原告(同上)「そうしたら、原告は、6月11日に宛先空欄の診療情報提供書を書いてくださいと頼みましたか。」

HN「もともとその日に、自殺未遂を犯したというのがあるので、この病院にはいられないというというお話があって、相模台病院も受診したくはないということで、自分でほかの病院に行きますということで、紹介状のほうには病院の名前を記載しないで書きました。」

本多知成裁判長「だから、名前を書かないでくださいとまでは頼まれてないんですね。」

HN「いや、頼まれています。」

本多知成裁判長「宛先を書かないでくださいとまで頼まれたということですか。」

HN「はい。」

原告(同上)「裁判長、それは事実ではないときは、どういうふうに言ったらいいですか。それは事実じゃないんですよ。というのは、6月11日。」

本多知成裁判長「だから、それは今、聞いたので。双方の記録が残りますので、それはそれでお互いの言い分が違うということで。」

原告(同上)「それは、6月11日に原告が宛先を書かずに診療情報提供書をお願いしますと言ってないんじゃないですか。それは、事実じゃないんじゃないんですか。」

HN「いや、宛先を書かないでくださいと言われたので書いてないんです。一般的には、紹介状を書くということは、ほかの先が分かっていて宛先を書くので。」

原告(同上)「分かりました。そこまでで結構です。6月16日に、原告が宛先を空欄にして診療情報提供書を書いてくださいと頼んだことは覚えていますか。6月16日ですけど。6月16日に、証人に対して、まだ病院が決まっていないので、宛先の空欄にした診療情報提供書を作成してくださいとお願いしたことは覚えていますか。」

HN「6月11日、退院してからは一度もお会いしていないので。」

原告(同上)「じゃあ、電話をかけたことは覚えていますか。」

本多知成裁判長「電話で依頼があったということはありましたか。」

HN「覚えていません。」

原告(同上)「では、6月16日の午前9時過ぎに、原告が病棟に電話を入れたときに、証人はオペ中でしたよね。」

HN「覚えていません。」

原告(同上)「6月16日の19時に、原告が証人に電話をしたときに、証人は原告にこう言いましたよね。これから、夜間、他院のオペの応援に行くので、今は診療情報(提供)書が書けないと言いましたよね。」

HN「覚えていません。」

本多知成裁判長「それは直接、言ったという話でいいんですか。」

原告(同上)「はい。そうです。直接、話しています。」

本多知成裁判長「直接、話しているという、覚えてないんですか。」

HN「覚えてないです。」

(括弧内・下線は告訴人による。)

 

3.偽証の証拠

(1)診療情報提供書発行について(甲A43)

 6月17日午後12時10分頃、本件病院にて、告訴人の家族が診療情報提供書を直接受け取った。よって、6月12日(本件病院退院月日)、被告訴人が診療情報提供書(甲A43)を告訴人に渡した事実はない。

 

(2)診療情報提供書宛先欄が空欄になっている理由(甲A43)

❶はじめに

 診療情報提供書宛先欄の前提として、被告訴人は、「もともとその日に、自殺未遂を犯した」としている。しかし、「自殺未遂」は事実無根であることを指摘し、これを明確にしておく。

 

❷診療情報提供書宛先が空欄になっている理由

ア 診療情報提供書が必要であると考えたのは、6月15日である。告訴人は、6月11日17:30過ぎころのMTにて、「6月24日のHN外来受診」を予約していた。

 入院・看護総括に「外来名整形外科 再診予約日 6月24日 外来担当医 H」と明記がある。診療情報提供書は不要であるから、診療情報提供書発行を依頼する必要がなかった(甲A42)。

 本件病院退院後、右膝疼痛増強及びセロトニン症候群(ザイボックスと抗うつ薬との併用に起因)による吐き気・身体の振るえ・頻脈・頭痛等に因り、食事が摂取できず、また、水さえ飲めず、さらに、ポータブルトイレさえ使用できず紙オムツをしている状態となった。かかる容態では、6月24日のHN外来受診まで体力がもたないと思ったので、告訴人は自分で病院を探すしか方法がないと考えた。

 6月15日、告訴人は茅ヶ崎市内にある湘南東部総合病院(A氏対応)に電話をし、容態を説明した。この時点では、湘南東部総合病院が告訴人の受け入れが可能かどうか未定であった。そこで、告訴人には宛先空欄の診療情報提供書が必要になった。

 

イ 被告訴人に宛先空欄の診療情報提供書発行を依頼したのは、6月16日である。6月16日午後7時頃、告訴人は被告訴人に電話をし、自身の容態から6月24日の被告訴人外来受診まで体力がもたないので、自身で病院を探すことを直接電話してこれを伝え、かつ受け入れ先の病院は未定であるので、宛先空欄の診療情報提供書の発行を電話で直接依頼した。

 これに対し、被告訴人は、「これから、夜間、他院のオペ応援に行くので今は診療情報提供書を書くことはできない。明日(6月17日)の午前9時までに(診療情報提供書を)書いておくので、整形外科外来まで取りに来なさい。」と返答した(H証人調書15頁)。

 

ウ 診療情報提供書(甲A43)入手は6月17日12時10分頃である。

 6月17日午前9時、被告訴人の指示どおり、告訴人の家族は本件病院整形外科外来に到着したが診療情報提供書はなかなか見つからなかった。

 一方、同日(6月17日)、午前9時過ぎころ、湘南東部総合病院A氏から告訴人のいる自宅に電話があり、「N医師が告訴人を診察されること」及び「今日(6月17日)の午後2時迄に診療情報提供書持参の必要」を説明された。そこで、告訴人は診療情報提供書を受け取るために本件病院にいる告訴人の家族に対し、診療情報提供書を午後2時までに湘南東部総合病院整形外科に持参する必要があることを伝えた。

 そして、6月17日午後12時10分頃になってようやく、告訴人の家族は診療情報提供書(甲A43)を受け取った。

 ところが、診療情報提供書(甲A43)の宛先欄には、「相模台病院精神科(又は相模台病院精神科閉鎖病棟)」と記載があった。時刻は午後12時を過ぎており、本件病院から湘南東部総合病院整形外科まで「2時間以上」を要することから、A氏から指定された「午後2時迄」には間に合わず、かつ宛先欄に「相模台病院精神科(又は相模台病院精神科閉鎖病棟)」の記載ある診療情報提供書を湘南東部総合病院整形外科 N医師に提出することはできない。失礼である。

 そこで、告訴人の家族は本件病院患者支援センターに事情を話し、その結果、同センター事務方が、宛先欄を「切り取り」、それをコピーしたものを本件病院患者支援センターから湘南東部総合病院整形外科宛にファックス送信したのである。この旨は、本件病院患者支援センターSW係長 HY作成の「関係者各位」とする書面に、「その名前は切り取り、宛名なしの紹介状として渡し」と記載がある。なお、同書面には事実無根の記載があるのみならず、告訴人を特定する「茅ヶ崎市」と記載あるハガキの一部を貼付して、告訴人及びその家族らを誹謗中傷する文書内容である(甲A45、甲A84)。

 

エ 6月17日午後12時ころ、診療情報提供書(甲A43)が本件病院患者支援センター事務方から湘南東部総合病院整形外科宛にファックス送信された事実がある。これについて告訴人は、NTTに対し前記事実を証明すべく情報開示を申し出たが、NTTは捜査当局(警察・裁判所等)の要請に応じることは可能であるが個人の依頼に応じることはできない旨の回答をした。捜査当局によるデータ開示が必要である。

 

(3)診療情報提供書宛先空欄について(甲A43)

ア 6月11日17:30過ぎころMTにて、告訴人は、「6月24日のHN外来受診」を予約した事実がある。入院・看護総括に、「外来名整形外科 再診予定日 6月24日 外来担当医 H 外来での継続看護要」と明記がある。

 つまり、6月11日、告訴人は「6月24日の被告訴人の外来受診予約」をしていたので、「自分でほかの病院に行きます。」と言うはずがない(甲A42)。

 6月11日17:30過ぎころMTにて、被告訴人は告訴人らに対し、「右膝MRSA感染症予防のためにザイボックス継続服用の必要性」及び「同剤は1回の処方で2週間分しか処方できないこと」を説明した。同剤処方が「2週間分」であることは以下から明らかである。要するに、ザイボックス継続服用必要性の説明を受けた告訴人は、「6月24日」の被告訴人を外来受診し、同剤処方を受けなければならなかった。

 

     処方期間         日数      処方期間を証明する書証

6月11日朝食分~6月16日    6日間         甲A21

6月17日~6月24日       8日間         甲A81

               計:14日間

 

(4)ザイボックスの取り扱いは厳重な管理下にある。

ア 被告訴人が「(6月11日告訴人が)自分でほかの病院に行きますということで、紹介状のほうには病院の名前を記載しないで書きました。」とすることはできない。告訴人の右膝MRSA感染症に対する医師の責務を放棄したことになりきわめて重大な問題である。ザイボックスが特殊な薬剤であることに関連付けて以下述べる(甲B138の33頁)。

 

イ 抗MRSA薬の中で最上位格にあるザイボックス(原価1錠:13,000円)処方は、許可制であり厳重に管理・制限されているのでこれを取り扱うことができる業者は神奈川県内では「2つ」のみであり、当然のことながら同剤を取り扱うことができる医療機関も限定・制限されている。

 6月11日18:00ころMT中にMT参加者の一人であるMK病棟係長が中座し、神奈川県内におけるザイボックス取り扱い業者は「2つ」のみであることを確認し、「(午後)6時を過ぎているので、(ザイボックス)取り扱い業者と(電話)連絡」がとれません。」とMT参加者に対し説明したのである。

 よって、神奈川県内(茅ヶ崎市在住)でザイボックス使用許可を得ている病院名を特定するためには、まずその「2つ」の業者名を特定するという作業が必要になるが、告訴人個人がその「2つ」の業者名を知る由もない。ザイボックス取り扱い業者を特定できない以上、同剤取り扱い医療機関も特定できない。また、仮にザイボックス取り扱い医療機関を特定できたとしても、同剤使用は許可制であり厳重に管理・制限されているので、一個人が医療機関を受診したところで、処方される薬剤ではない。

 

ウ 以上のことから、ザイボックス継続服用が必要であると説明した被告訴人の言動には整合性がない。被告訴人はMRSA感染症に対する医師の責務を放棄したことになる。よって、被告訴人の前記証言が虚偽であることは明らかである。

 

第2 右膝MRSA感染中であること及び転院に関する被告訴人の偽証

1.偽証の要旨

(1)被告訴人は、5月24日以降、右膝MRSA感染は良い方向に向かっていたので転院を考慮し転院先を相模台病院とした旨を証言した。これは明らかな虚偽である。

 

(2)被告訴人は、(北里大学病院での入院継続困難の理由について)精神科が常勤医でいないので、精神科のある相模台病院を転院先とした旨を証言した。これは明らかな虚偽である。

 

2.右膝MRSA感染状態及び転院に関する被告訴人の虚偽の証言(H証人調書8頁)

I代理人「平成21年5月24日以降、5月下旬なんですけども、原告の状態はよい方向に向かっていたということでよろしいですか。」

HN「はい。」

I代理人「このように状態がよくなっていく中で、原告について転院先を探すということはありましたか。」

HN「はい。」

I代理人「そのまま北里大学病院で入院し続けることは難しいのでしょうか。」

HN「北里大学病院で精神科が常勤医でいないので、精神的な治療も含めて、整形外科のリハビリもまだ開始していなかったですけども、両方の治療をするためには、精神科の備わっている病院がいいのではないかということで、病院を探すことになりました。」

I代理人「転院先として、今述べていただいたように、両方、精神科と整形外科の両方ができる病院を探したということですね。」

HN「はい。」

I代理人「その結果、候補として挙がったのが、相模台病院だったんでしょうか。」

HN「はい。」

 

3.偽証の証拠

(1)被告訴人の右膝MRSA感染所見は「陰性」でありUK医師の右膝MRSA所見は「陽性」であり、右膝MRSA感染症に対する所見が全く異なる。

 

被告訴人の所見

 被告訴人は陳述書の中で、「5月25日及び26日に提出した滲出液の培養検査でも陰性であることが確認できたことから、転院してリハビリを行う方向で考えていました。」と記載した(乙A13の3頁)(下線は告訴人による。)

 

UK医師の所見

 UK医師は、「(6月11日)まだ完全に陰性をカバーしていないという状況で(右膝MRSA陽性中)。ー中略ーまだそこで十分治療が終わっているわけではないです。治療の途中というところですね。」、「治療は、うまく継続されていないのではないかと思います。(6月11日)まだ治療の途中でしたけれども。で、通常はまだ点滴を継続すべき時期だったんです。」と証言した(U証人調書19、20、40頁)

(括弧内は告訴人による。)。

 

ア 右膝MRSA感染陽性中でありバンコマイシン継続投与が必須の病態であることから、被告訴人は告訴人を転院させることはできないはずである。

 

イ 被告訴人は「5月25日及び26日に提出した滲出液の培養検査でも陰性であることが確認できたことから、転院してリハビリを行う方向」と陳述書に記載している(乙A13の3頁)。

 ところで、4月24日本件病院入院前採取の関節液及び4月25日採取の関節液・その他・組織の培養検査結果はいずれも「陰性」であったが、UK医師は、「培養検査で陰性だったからと言って、細菌がいないということにはならないということです。」と証言した。

 要するに、培養検査結果に対しきわめて「懐疑的」である(U証人調書3頁)。

4月24日及び4月25日(複数検体)の培養検査結果「陰性」に対し「懐疑的」であるならば、5月25日及び5月26日の培養検査結果「陰性」に対しても、「懐疑的」でなければならない。被告訴人らの言動は矛盾している(乙A1の128~131頁、153~154頁)。

 

ウ 被告訴人が「相模台病院」を転院先と決定したのは、「6月10日」である。

「6/10 今后さがみ台HOSPへ転院push予定!」と記載がある(乙A1の356頁)。

 UK医師が証言したとおり「6月11日は、右膝MRSA感染陽性中」である。被告訴人が転院先を相模台病院と決定した「6月10日」は右膝MRSA感染中でありこれを認識・把握しているはずである。

 よって、5月24日以降、右膝MRSA感染は良い方向に向かっているはずがない(U証人調書19、20、40頁)。

 

(2)UK医師が北里大学病院継続入院を許可しなかった。

ア 6月1日MTにて、告訴人はUK医師に対し、「リハビリは北里で入院して続けたいと思っています。」として本件病院継続入院希望を伝えた。しかし、UK医師は、「特定機能病院は急性期の患者さんしか入院させることができないのです。これは厚生労働省の取り決めなのです。」として、告訴人の本件病院継続入院を認めなかった。さらに、UK医師は、「転院してリハビリをしていただくことになります。歩く練習をやってくれる病院に転院していただく方向で進めてまいります。」と告訴人らに説明した。UK医師はリハビリのために自宅近隣の病院を模索中であることを説明した。要するに、UK医師によれば本件病院継続入院が不可能な理由は、「厚生労働省の決定」である(乙A1の25頁)。

 

イ 6月1日MT、UK医師の説明のとおり、リハビリ通院のために転院先は、「告訴人の自宅近隣の病院」でなければならない。しかし、被告訴人が決定した「相模台病院」の所在地は、「神奈川県座間市相模が丘6-24-28」であり、自宅近隣ではない(甲C25の2頁)。

 

ウ さらに、被告訴人が、「精神科の備わっている病院がいいのではないかということで」として、転院先を「相模台病院精神科(又は相模台病院精神科閉鎖病棟)」と決定したことは、UK医師が証言するところの右膝MRSA感染症に対する必須の治療である「バンコマイシン継続投与」には、著しく不適切な診療科であるばかりでなく、以下記載の理由から違法である。

❶詐欺罪(刑法246条)

 憲法13条は転医の自由を保障する。6月11日午前9時過ぎころ、被告訴人が相模台病院精神科閉鎖病棟入院を強要しこれを決定し、同病院同科に対し診療情報提供書を書いたことに対し、告訴人はこれらを強く拒否した。しかし、被告訴人は診療情報提供書(6月11日付)を作成し診療情報提供料(1)を計上した。これは診療報酬不正請求である。診療情報提供書を発行することができるのは、医療機関が診療に基づき患者の同意を得て、別の保険医療機関に対して診療状況を示す文書を添えて患者の紹介を行った場合である(甲A55、甲B152の2頁)。

 

❷秘密漏示罪(刑法134条1項)

 被告訴人が告訴人の同意を得ずに、正当な理由がなく告訴人以外の者に対して診療情報提供を行うことは、医療従事者の守秘義務に反する(刑法134条の1項)。

被告訴人は陳述書に、「ご両親も原告の精神面を心配されていたことから、リハビリをしながら、精神的なケアも可能な病院がベターと考え、相模台病院を転院先と考えていました。」と記載しているが、告訴人の両親は告訴人の精神面を心配した事実は一切ない。被告訴人の「ご両親の原告の精神面を心配されていた」の記載は、事実無根である。

 

第3 精神科受診に関する被告訴人の偽証

1.偽証の要旨

(1)被告訴人は、告訴人の両親の希望により精神科依頼があった旨を証言した。これは明らかな虚偽である。

 

(2)被告訴人は、(精神科依頼について)告訴人の承諾を得た旨を証言した。これは明らかな虚偽である。

 

2.精神科受診に関する被告訴人の虚偽の証言(H証人調書7,12,15、16頁)

(1)I代理人「(乙A1号証の41頁)こちらは北里大学病院の精神科への診察依頼の紙なんですけども、これによりますと、4月27日に精神科に原告の診察依頼を行っていますね。」

HN「はい。」

I代理人「なぜ診察依頼をかけたんでしょうか。」

HN「ご両親からの希望と、もともと鬱病で他院を受診されていたということで、精神科に依頼をしました。」

I代理人「診察依頼をするに当たっては、原告さんご本人の承諾も得ていますか。」

HN「はい、得ています。」

I代理人「この乙A1号証の41ページの右上には、「他院受診あり Yクリニック」その下に「「東HP(+)本人承諾ズミ」と書かれていますね。」

HN「はい。」

I代理人「北里大学病院では精神科への診察依頼を行う際に、患者さんの同意について診察依頼書に明記しないといけないという決まりがあるんですか。」

HN「はい、あります。必ず両親とご本人の承諾を得ていて、それを記載しないと、北里大学の精神科の先生は診ていただけないということで、全例確認をしています。」

 

(2)本多知成裁判長「(乙A1号証の41頁)4月27日に精神科の診察依頼というのがありますよね。」

HN「はい。」

本多知成裁判長「それには、あなたは関与していますか。」

HN「はい、依頼を書いたのは私です。

本多知成裁判長「これは、どういう経緯があったんですか。」

HN「もともと入院した時点で、鬱病があるという既往歴があるのと、入院した後で、ご両親から直接廊下のほうで呼び止められて、精神科を受診させてほしいという希望があったので依頼をしました。」

本多知成裁判長「そのときに、原告に何か確認をしていますか。」

HN「確認しています。

本多知成裁判長「具体的には、原告のほうにどのような確認を。」

HN「精神科を診てもらいましょうということはお話しています。

本多知成裁判長「それで、今見ているのは、乙A1号証の41ページでよろしいですかね。」

HN「はい。」

本多知成裁判長「そのときの原告は、どういう対応でしたか。」

HN「覚えていません。

 

(3)原告(告訴人」「まず初めに、証人は今、原告の両親が廊下で精神科の受診を依頼したと言いましたけど、こういったことは事実ですか。」

HN「事実です。

原告(同上)「そういったことは、原告の両親は証人に対して原告の精神科依頼を言ってませんけど、何か誰かと間違えているということはないですか。(精神科依頼について)言っていません。」

HN「間違えていません。ここでお話はできないと言われたので、病棟から出て、ご両親から一緒に出ていってもらって、廊下で呼び止められて。

原告(同上)「それは、いつですか。」

HN「その依頼を書いた前の日だと思います。」

原告(同上)「4月26日ですか。」

HN「だと思います。その日に出すとすると、27日に出すとすると、基本的には、北里は11時までにこの書類を作らないと診てもらえないので、基本的には、午前中、お話するというのはほかの業務があって難しいので、前日だと思います。」

原告(同上)「じゃあ、4月26日に、証人は原告の両親に廊下で呼び止められて、会ったんですか。」

HN「日付は定かじゃないですが。」

原告(同上)「前日と今、言いましたよね。」

HN「恐らく、前日だと思いますが。」

原告(同上)「じゃあ、前日に会ったんですか。」

HN「ご家族に精神科を受診させてほしいと希望をされました。」

原告(同上)「そういった事実はないんですけど、こう言っていたらしょうがないということですか。」

本多知成裁判長「もう繰り返しですから。」

原告(同上)「まず、O医師(精神科 OA医師)が4月27日に〇〇さんの精神科医として診察することになったと言われたことに対して、私は強く拒否しました。そのことは知っていますか。」

HN「いや、覚えてないです。

原告(同上)「さっき、証人は、原告が同意したという言いましたよね。」

HN「その精神科を受診する前に、説明はしたはずです。

本多知成裁判長「だから、同意したということでいいんですよね。」」

HN「はい。」

原告(同上)「誰かと間違えてないですか。」

HN「間違えてないです。」

原告(同上)「あり得ないですよ。N先生は格が非常に上なので、失礼なんですよ。そんな勝手にほかの精神科のね。」

(括弧内・下線は告訴人による。)

 

3.偽証の証拠

(1)はじめに

 4月24日本件病院整形外科外来廊下にて、告訴人はUK医師に、「自宅から(北里大学)病院まで車で2時間強を要するので入院期間次第では、家族が見舞いに来る負担を考慮し自宅近隣での治療を希望する。」旨を伝えた。

 これに対し、UK医師は、「入院期間は2週間で済む。」と説明した。入院診療計画書に推定される入院期間「2週間」と記載があるとおりである(乙A1の29頁)。

 入院3日目の4月26日、被告訴人が「精神科受診」を画策していたことは、あらかじめ長期入院期間を想定していたとするのが妥当である。常識的に考えて「2週間」の入院予定でありながら精神科受診は不自然である。

 

(2)4月26日、告訴人の父は、「本件病院」に行っていない。

 高齢の告訴人の父(当時〇〇歳)は、4月24日、25日と連日本件病院を訪れていたので、「4月26日」と「3日」連続で本件病院まで行くことは体力的に不可能である。告訴人の父は、4月26日午後4時自宅近くを散歩中である。

 また、4月26日午前中、告訴人の母は、「本件病院」に行っていない。本件病院の面会時間は、「午後2時以降」だからである。要するに、4月26日午前、告訴人の両親は被告訴人と会話をした事実はない。

 

(3)4月26日、被告訴人が精神科受診について言及していれば、告訴人はこれを強く拒否している。これについて、被告訴人が「覚えていません。」と証言したのは、被告訴人が告訴人に対し精神科受診について一切言及しなかったからである。当時、告訴人はNS精神科医(相模原市 Yクリニック)を受診しており、(格上の)NS精神科医に失礼である。4月27日、OA精神科医が告訴人を診察することになったと説明した際、告訴人はOA精神科医に対して、「2週間の入院予定です。精神科を受診する必要はありませんので精神科受診をお断わりします。N先生に診てもらっていますので失礼に当たりますので。」として、精神科受診を強く拒否した事実がある(H証人調書12,17頁)。

 

(4)補足

 被告訴人は、「ご両親から直接廊下のほうで呼び止められて」、「ここではお話できないと言われたので、病棟から出て、ご両親から一緒に出ていってもらって、廊下で呼び止められて。」として、あたかも告訴人の両親が被告訴人を呼びとめたかのような証言をしているので、かかる事実は一切ないことに関連して以下付言しておく(H証人調書12、15~16頁)。

 5月20日、病室に居た告訴人の母が、(病室に)入室した被告訴人を病室以外の他の場所に移動を促した事実はあるので、その理由を念のために記載しておく。

❶理由1:謝礼として現金5万円を渡すため

 5月20日、病室に居た告訴人の母が、被告訴人に対し、「少し宜しいでしょうか。」と話して、病室内から病室以外の場所に移動を促した事実がある。これは、告訴人の母が被告訴人に対し、「現金50,000円」を謝礼として渡すことを目的としたものである。同日、病室外の場所(6B病棟耳鼻科診察室と思われる。)において、告訴人の母が被告訴人に対し「現金50,000円」を直接手渡しした事実がある。これについて、告訴人の母のメモに「5/20 H Drと話(5万礼)」と記載がある(甲A87の10)。

 

❷理由2:同室患者目前における金品受け渡し回避のため

 5月20日、病室(4人部屋)には告訴人の他に患者(当時80代女性:H氏)が入院していたので、他患者の目前では被告訴人が謝礼を受け取りにくいと告訴人が配慮したものである。そこで、告訴人は告訴人の母に、同患者のいる病室内ではなく人目を避けることを目的として病室以外の場所にて被告訴人に対し現金50,000円を渡すように依頼したものである。

 

第4 本件第2手術直後から持続洗浄を実施しなかった事実に関する被告訴人の偽証

1.偽証の要旨

 被告訴人は、「(本件第2手術後)手術室からずっと持続洗浄で水をつなげてきている」と証言した。これは明らかな虚偽である。

 

2.本件第2手術直後から持続洗浄を実施しなかった事実に関する被告訴人の虚偽の証言(H証人調書10頁)

HN「手術が夜中だったので、2日の朝方というか、夜中戻ってきたということで、手術室からずっと持続洗浄で水をつなげてきているので、」

 

3.偽証の証拠

(1)本件第2手術直後から持続洗浄を実施していなかったことは、告訴人及び告訴人の両親・弟の計4名をこれを確認している。告訴人の右膝に、「チューブ(IN及びOUT)」を接続していなかったので、持続洗浄用の生理食塩水を右膝関節内に流していなかった。すなわち、これは持続洗浄を実施しなかった証拠である。

 これについて、告訴人の母が陳述書に、「オペ室から出てきた時、ベッドに横たわっていた〇〇の膝には持続洗浄は実施されていませんでした。〇〇の右膝にはチューブは接続されていませんでしたので、「不審」に思いました。」と記載しているとおりである(甲A85の5頁)。

 

(2)本件第2手術直後、ベッドを押していたのはY看護師1名のみであった。告訴人及び告訴人の両親・弟の計4名が目撃し、これを確認している。本件第2手術直後から持続洗浄を実施していれば、ベッドにポータブル持続洗浄機器一式(電源装置含む)を装備・搭載しており重量があるので、看護師単独でベッドを片手で押すことは不可能である。

ア 持続洗浄を実施しなかったので、「手術室での、手術室のベッドで、ベッド上でまず持続洗浄が開始されて、流れていることを確認したら、そのまま今度は病室用のベッドに移ります、手術室で。で、移ったまま、その持続洗浄ごと病室に戻っていくというか。だから、病室用のベッドに手術室で移って、移ったらその病室用のベッドを看護師さんと僕らが押しながら病室に戻っていくと。で、病室あるいは処置室にそのまま到着して、そのまま流し続けるという形」ではなかったのである(U証人調書39~40頁)。

 

イ つまり、本件第2手術直後から持続洗浄を実施しなかったので、UK医師らはベッドを押しておらず、Y看護師が単独で片手で軽々とベッドを押し、もう一方の手で点滴スタンドを押していた。点滴スタンドには右膝関節内持続洗浄用の「生理食塩水パック」(1000ml)を吊るしていなかった。点滴スタンドに吊るしていたのは、ルートドレーン類「DIV20G」とあるように静脈点滴用のパックであった。「持続洗浄用の生理食塩水パック」と「静脈点滴用のパック」とは大きさが全く異なるので、視認できる(乙A1の63頁)。

 

ウ 本件第2手術直後、病棟へ移動するために「エレベータ」に乗り込んだのは、告訴人が寝ていたベッドを片手で軽々と押していたY看護師、告訴人の両親及び弟の計5名である。

 

エ 4月25日の本件第1手術直後、UK医師は、「(持続洗浄機器の)この電源はポータブルで(電源が)切れると大変だから(持続洗浄不可能)、早く病室へ戻ろう。」と告訴人に話し、UK医師自らが両手でベッドを押し病室まで移動させていた。本件第1手術直後の様子について告訴人の母は、「U Drベッドを一人で操作して下さった。」とメモに記載している(本人調書4頁、甲A87の1)。

 

オ 本件第2手術直後から持続洗浄を実施していなかったので、UK医師らはベッドを押していなかった。Y看護師が単独で片手でベッドを軽々と押していた。

 

(3)本件第2手術直後に持続洗浄を実施しなかったことを証明する証拠

①本件第2手術直後、持続洗浄を実施しなかったので、「18rセイラムサンプチューブ」を装着していない(乙A1の63頁)。

本件第1手術直後は、持続洗浄を実施したので、「18rセイラムサンプチューブ」を装着している(乙A1の53頁)。

 

②本件第2手術直後、持続洗浄を実施しなかったので、「持続吸引開始」の記録・記載はない(乙A1の63頁)。

本件第1手術直後は持続洗浄を実施したので、「持続吸引開始」及びその「開始時刻」の記録・記載がある(乙A1の53頁)。

 

③本件第2手術直後、持続洗浄を実施しなかったので、「排液」は存在しない。

よって、「排液」の記録・記載はない。

本件第1手術直後は持続洗浄を実施したので、「排液」の記録・記載がある(乙A1の300、301頁)。

 

④本件第2手術直後、持続洗浄を実施しなかったので、中央手術室から病棟にある「隔離された特別の部屋」までの間、持続洗浄を継続実施するための携帯型ディスポーザブルPCA用注入用ポンプ(一体型)のレセプト計上はない(甲A54)。

本件第1手術直後は持続洗浄を実施したので、携帯型ディスポーザブルPCA用注入ポンプ(一体型)のレセプト計上がある(甲A53)。

 

⑤Y看護師の「病室 下肢フローシートへ」とある看護記録は「改竄・隠蔽」された箇所に該当するものであり、「下肢フローシート」にある「持続洗浄もれなし」との記載は虚偽である(甲A73の2、乙A1の312頁)。

告訴人元代理人KJ弁護士、同HC弁護士、同NS弁護士3名らが「看護記録改竄・隠蔽」を確認したものである。

 

(4)以上のことから、本件第2手術直後から持続洗浄を実施しなかったことは明らかである。よって、被告訴人の上記証言が虚偽であることは明らかである。

 

4.補足

(1)「チュウシ」の記載があること(乙A1の59頁)

 Y看護師は告訴人に対し、「〇〇さんは治療の対象になっていない。治療しないことになっている。持続洗浄はしない。」と断言した。なお、本件第2手術の「ANESTHESIA RECORD」(麻酔記録)に「チュウシ」の記載がある。「チュウシ」の意味について、告訴人には被告に説明を求めたが被告はこれに回答をしない。

 

(2)「99」への記載があること(乙A1の59頁)

ア 本件第2手術後5月2日、午前4時50分頃、Y看護師は、「6階」にある「隔絶された特別の部屋」の床上約160cmの高さにある担架状様に告訴人を放置した。この「隔絶された特別の部屋」は非常扉等により隔離されていた模様で病棟アナウンスが聞こえなかった。また、床上約160cmの高さにある担架状様からベッドに下す際、Y看護師又はO看護師のいずれか一方が、告訴人の顔面に「白い布」を被せたので、病室までの経路は不明である。告訴人は恐怖の余り、「白い布」を払いのけることを諦めた。

 

イ 本件第2手術の「ANETHESIA RECORD」(同上)の「病室へ4:30」の記載は虚偽である。午前4時30分は「麻酔中」であり、告訴人が「中央手術室」を出たのは、午前4時45分ころである(乙A1の58頁)。

 

ウ 病室への帰室時刻は午前9時ころである。帰室後告訴人は朝食を終えた同室患者に(同患者が朝食後の歯磨きのために病室を出ようとしていた。)、本件第2手術直後に放置された状況を話した。

 

北里大学病院医療過誤裁判 東京地裁から最高裁まで 第Ⅺー6に続く。