これは、厳密にいうと私の心がしぼんだ話ではない。
母の心がしぼんだ話だ。
てんかんが発症するまで、風邪さえ引いた記憶もないほど、
健康優良児だったスダ。
なんなら、風邪を引くことに憧れがあったほど。
擦り下ろしたリンゴを食べさせてもらったり、
美味しそうなお粥が食べられたり、
いつもより優しい母親に看病される。
学校まで行かないで済むなんて、天国じゃないか、と。
しかし、残念。
私が寝こむことになった病気は、てんかん。
完治は今のところ見込めない、厄介な病気だ。
私は自分のことで精一杯だったから、
当時は分からなかったのだけれど、
母は相当ショックを受けていたんだと思う。
なぜ、自分の娘がこんなことに?
つい最近まで、あんなに元気にバスケをやっていたじゃないか。
看護士として何か見落としていたのではないか。
などと、ぐるぐる悩み考えては報われない日々を過ごしていたに違いない。
また、「私がこんなだから病気になっちゃったのかな」的な、
自分を否定することばかり言っていたものだから、
親戚にてんかん持ちがいないか聞き取りを行って、
ギリギリ血の繋がりがある親戚がてんかん持ちだったらしいとかいう
情報を私に共有して、「マサコのせいじゃない」と言わんばかりの表情で訴えてきた。
でもそのとき、ほんの少し心が楽になったのは確かだ。
と同時に、自分の心の卑しさにほとほと嫌気が差した。
病気になるのは誰のせいでもない、病気のせいなのだ。
これ以降、発作が起きても自分のせいにすることはあっても、
他人のせいにするのだけはやめようと決めたのでした。
さて、私のてんかんが「もののけ型」なのは、先にお話しした通り。
診察を重ねてもなかなか合う薬は見つからず、
さらには副作用で倦怠感と気分の落ち込み、吐き気と、
体調不良のオンパレードに苛まれていました。
そんな折、家のポストに運命のチラシが。
覚えてないので、雰囲気だけのキャッチコピーですがw
“○○龍水大先生の宇宙パワーをあなたも!”
私たち親子が特に注目したのは、“難病も治した実績“。
近くの市民センターで開催される宇宙パワーの集会に、
一末の期待をかけて母と2人で参加したのでした。
集会で渡されたのは、1本の飲料水。
現れたのは、30代くらいのショートカットの女性代表。
隣のオカッパ女性が、代表の輝かしい経歴を紹介します。
物々しい雰囲気に、親娘は薄々気づきます。
これ、アカンやつや、、。
そう、完全に新興宗教の集会だったのです。
でも!新興宗教だろうと、難病の治癒ができるならむしろカモン!
と、小さくなった微かな期待を辛うじて持ち続け、話の続きを聞きました。
「代表の力をご覧いれましょう!(byオカッパ女)」
と、はじまったのは、
配られた飲料水を炭酸水にします!というもの。
「心の底から先生の力を信じて、炭酸水になれと祈るのです!」
私たちはペットボトルを持って額にあて、強く目を閉じ、
懸命に「炭酸水になれ~!」と願いを込めました。
1分くらい祈った後で、
「では、ペットボトルの蓋をお開けください!」となり、
おそるおそる蓋を開けると、プシュッ!という音が鳴るではありませんか!
気分が高揚しながら、水を飲むと…
「え・・・!?(めっちゃ水!ただの水!)」
普通の水でもペットボトルを開けるとき、多少プシュッ!ていいますよね。
最初に大先生のすごさや宇宙パワーのことを刷り込まれたもんだから、
日常のプシュッ!が宇宙的プシュッ!に聞こえたんですね。
親子で困ったような、ですよねwみたいな、
薄ら笑いを浮かべ、会場を後にしたのでした。
(その後はたしか、希望者が大先生に悩みを聞いてもらえるみたいな催しをやっていた)
今となっては、お笑いぐさ。
そして後に、この件で1番悩んだ人は、
急に妻と娘から「宇宙パワーの集会に参加してくる」と言われ、
何も言わず、送り出すしかなかった父だったと知るのであった。