実際には数年前知り合ったが感覚的には「古い友人」から、急に石笛の制作のご依頼を受けた。
石は、10月に石巻市雄勝町の工事現場で許可を得て採取した岩盤を用いた。工事関係者の話では、雄勝硯の原石よりも硬いとのことだった。この石と相対するのは初めてだったが、雄勝硯やスレート材などで用いられる玄昌石に近い感じの石。石の塊から制作に必要な量を切り出そうとした時、無理をしたつもりはないが、石塊が吹っ飛んでいった。6m以上、お隣の境界ブロックにあたって下に転がっていた。結果的に、当初の計画よりも小さなものに変更。新たに切ることよりもその事象に従った。
いつもの「クラインの壺」をモチーフとした石笛。
表面をなぞっていたらいつのまにか内面、裏側になるという「メビウスの帯」はなじみがある。帯を一度ひねって輪っかにするだけの単純な形だから。これを2次元を3次元上でひねることで…などというと小難しくなる。クラインの壺はパイプ状の3次元を4次元上でひねった形なんです、でも3次元上では成立しえない形で…などと説明しても想像が難しい。
とにかくその形状自体の魅力と哲学的意味を感じている。
STONE SCULPTURE-雄勝石の石笛
石笛(いわぶえ)として鳴りやすいようにチューニングするには、微妙な角度が求められる。ほんの0.1ミリ以下削っただけでも変わってしまう。わりとシビア。
STONE SCULPTURE-クラインの壺・石笛
小柄だがちゃんと低音から高音まで鳴ってくれる。何故か小動物のような存在感を感じる。
STONE SCULPTURE-石製クラインの壺
急ぎの用件だったのは時限付きだったため。
明日は満月、そして久々の皆既月食でもある。どうしてもその日ある場所で石笛が必要であるとのことだった。
この頃特に思うのは、主となるのは人間だけではないということ。この場合、その石が主体。私が造って友人がその場へ赴く、ということは逆に言えば石がそこへ行くために私と友人を使わせた、となる。どちらが主で従かというのは問題ではない。そもそもない。
この「クラインの壺」には形状だけでなく、裏も表もない(主も従もない)という概念そのものが込められている。

アセンション 次元変革と量子跳躍

Dブレーン 超弦理論の高次元物体が描く世界像

ガラス製【クラインの壷】ビールジョッキタイプ

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