先日栗原市へ訪れた際、知人からガイガーカウンターをお借りしていた。仙北が比較的高い線量であるということを実際確かめるため。
原発事故から半年が経過し、各自治体やら団体、あるいは個人などが計測する値が様々な場所で飛び交っているが、自分自身は参考程度に留めて鵜呑みにはしていなかった。町内有志が事故直後3月下旬から計測して少し手伝ってもいたが、数値の一人歩きという問題性に配慮してあえてその頃は数値を表に出さなかった。その後ブログで数値を出した時は但し書きに「絶対比較をしないでください。」と大きく表示し、周囲の方々にガイガーカウンターを貸し出す時もその点を注意して説明していた。時間が経つにつれガイガーカウンターを持つ方も増えたが、やはり人の話を聞くとその数値だけが取りざたされる。
もうすでにネット上や雑誌でも掲載されているが、安価な計測器の誤差の大きさがかなりのものであるとか、10台近く別機種を並べたら全てバラバラの数値だったという実験結果などで分かる通り、そのような比較は誤解を生じさせる危険性もある。例え同機種同士での比較であったとしても、高性能な機器であったとしても、校正がしっかりできていなければ、その数値はしかるべきデータとしての役割を果たさない。
また、同じ機械であっても別人によって計測方法が異なれば比較の意味が薄れる。
高性能な機器を定期的に校正しながら、同条件で計測してようやく比較対象となるが、微妙な値の変化を研究している専門家でもないしなかなかそこまでの条件をそろえるのも一般人には難しいので、計測した値は他のものと比較せず、同じ機械で昨日と今日の比較という推移、A地点とB地点の比較だけにとどめたほうが無難。
今回お借りした機器はインスペクターアラートという、簡易型では割と高性能な部類に入る。国際環境団体グリーンピースの環境汚染対策チームのメンバーからも信頼され、福島市内でJAEAによる定期計測の機器と並べた際もさほどの誤差はなかった。また、安価なものはガンマ線だけおおざっぱにしか計測できないが、インスペクターはアルファ線やベータ線も計測できる。その精度も高い。
これまで仙南や福島を中心に計測してきていたので、仙北の計測をこの機械で同条件で行えば比較することができる。
どうやら3月12日の福島第一原発一号機の爆発によって飛散した放射性物質が、風に乗って太平洋上を北上、そして岩手県南部から宮城県北部を巻き込むように流れ、結果その一帯がホットスポットとなってしまったとされる。直線距離で近い宮城県南部はともかく、中央部の仙台市内は比較的低い数値であるのに、北部は高くなっている。同心円や距離ではない例の典型。
前情報は得ていたの、やはり計測した値もほぼそのような傾向を示した。栗原市から計測を開始して仙台近くまでの数カ所を南下しながら計測していったのだが、だいたい予想した通りの結果。ただ、なんとなく個人的感想として、空間線量は距離にしてはやや高いものの、距離の近い同レベルの地域より絶対量は少ないような気がした。そんなことってありえないのかもしれないが、なんとなく。
ここで数値を掲載するのは控えた方がよいと感じた。その理由として、先述したことに尽きるのだが、今回計測した場所にもいささか問題があったと後で気付いたことがある。帰宅途中だったために、国道4号線や高速道路沿い近くの場所で計測していたことについて、確かに一般人がよく行き来する場所であるので対象としては間違っていないのだが、特に大きな街道沿いというのはその往来が頻繁なためにほこりが巻き上げられて常に変化している。そういった場所は数値にも当然幅がある。自分がここで、たとえば「あの場所ではこの数値でした」と言えば、見聞きした人は、「あの町ではこの数値だ」という感じになってしまう。動的な場所でサンプリングしたものをその町の代表的数値としてしまうには抵抗がある。なので不特定多数が見るネット上では公表しないほうがよいと感じた。自分の身の回りの方々はそのあたりの知識があるので具体的な話はするが、それでも一応参考までにと念を押す。
絶対比較と相対比較をしっかり把握している方でないと余計な誤解が生じかねない。自分も含めてこれは素人が手を出すにはあまりに専門的すぎる事柄なのだろう。
ちなみに、計測するときは住所だけでなく周囲の地形、家屋の状況、地表面の状態、周囲の環境、時間帯、天候、気温、風向きと強さ、地表との距離などを一応ひかえている。
結局、計測しながらそのまま知人宅へ向かいお返ししたので自宅はいまだ測っていない。歩いてもいける近所の町役場前の東北大が計測する公表値は時間当たり0.15μSvくらいという。雨の流れやすいアスファルトの駐車場。倍くらいかな、と個人的には思う。

ガイガーカウンター、安価なものほど誤差は多い。ただ、無駄ではないので参考程度であれば十分役割は果たすと思います。いずれにしても、数値の一人歩きがないように計測する側の心配りが必要だと思います。まだまだ神経質な時期なので。

インスペクタープラス(Inspector+)

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