この日朝から作ったこともない焼きおにぎりを即席で作り、大蔵山へと向かった。鍵をお借りしていたので午前中早めに到着。誰もいない山堂は静かにたたずんでいた。一人で適当に会場を準備。準備といっても、もはや山堂にはほとんど備品はない状態。すぐに用意はできた。特段今回のイベントに関して何か趣向を凝らすということもなく、集まった方々で流れのまま楽しめればそれでよいと考えていた。
表の目的は大蔵山の不要になったものを処分すること。
ひとり、静かな山堂で火をおこしながら、いろんなことを考えていた。この建物には建設段階から関わっている。12年前の石積みから、これまでの成り行き、そこに関わる人々、自分自身のこと…。
様々な人々の様々な感情が交差しているこの場所には、重苦しい負の要素も確かにあるが、なにはともあれ素晴らしきご縁をいただいたのだからその感謝を伝えたい。そのためには形式だけの神事よりも、関わったみんながその場所を楽しく使うことで、そのうれしうれしの意識を送り届けることのほうが意味がある。
裏の意味は神事。
11時頃になってようやく参加者がぽつぽつと現れた。おなじみの面々。お互い持ちよった食べ物をまわして昼食をとった。なんだかこうして火を囲んでみんなでしゃべりながら食べているだけでも楽しい。そうしているうちに仙台方面のお客さんがぞろぞろと到着。掲示板を見てくれた仙台の演奏家の方。知り合いのバンド「ろすみど」のフルメンバーも楽器を沢山持って来てくれた。遠く岩手からも友達が楽器を持参して参加。下道で来たらしい。ものすごく豪華な顔ぶれ。当初の予定はオークション&フリーマーケットだったが、演奏会だけでもいいかな、などと思ってしまった。知り合い、友達、各方面から集まっていただいた。こんなにも反応があるとは。
1時過ぎから告知通りにオークションを開催。木彫用の木槌を持って、競りをはじめた。大蔵山の本がメイン。かなり多いことと、地味なものもあるので食いつきのよいものを優先。予想以上に評判よく、思わぬ値段で競り落とされてゆく。なかなかの反響。が、しばらくすると落ち着いた(飽きた?)のか、あるいは魅力的な品がなくなったのか反応が鈍った。司会役を交代したり抱き合わせ(逆効果…)してみたりしたが、自分も飽きてきたので残りはジャンクコーナーにして申し出た人に売る形式に変更。
その後委託品として、かつて世界行脚した友人の各国の珍品雑貨、とその恋人の雑貨を出品。微妙…という表現しかできないその品々も、なんとか半分以上さばくことができた。残りは返品せねば。
今回自分自身が落札したものは子機付きFAX。思いがけない収穫に大喜び。これは天からのギフトに違いない!しかしFAX送ってくれる相手がいない…。
オークションが一段落したところで、山堂にいろんな楽器の音色が響きはじめた。自分もトーンチャイムをお借りして山堂の天井へ向けて響かせる。このイベントの主役はその音色を穏やかに包み込む。
落ち着いたところで「ろすみど」の非公式コンサートがはじまった。彼らはこの日の夜には仙台で公式演奏予定だという。体がおのずとリズムを刻む。みんなのたのしうれしの気が山堂を包み、天井へと向かってゆく、そんな感じがした。最後にリーダーが「山堂ありがとー!!」と、この意図せぬ神事における正しき祝詞をあげてくれた。
それはみんなの気持ちの代弁でもある。
終わりの言葉もなく、少しずつ人数が減っていった。みんな満足していただいたのかはわからないが、山へ訪れるきっかけとして、ある程度の意味はあったと思う。
遠くからみなさんお越しくださり、そして演奏したり販売したりと、盛りだくさんの内容でした。ありがとうございました。これが最後とは思っていないので、自分にできることがあればまたの機会に何らかの形で表したいと思います。