先月知人から硯の注文を受けていた。

今週会う機会があるかもしれないので、それにあわせて制作していた。


・小さめのサイズ

・墨はすらない

・とにかくいっぱい墨汁が入る

・でも筆をしごく場所は必要

・なるべく安く


今まで制作していたものとはまったくことなるものになりそうだ。

最後の「なるべく安く」が一番難しい注文だ。

手元にちょうどいいサイズの石があったので、このところそれを少しずつ暇を見つけては加工していた。

最初から形のイメージがあったわけではない。制作が進むにつれ形が変わっていった。

だんだんのめりこんでいく。もう自分の意思とは無関係。注文とも無関係。

この石の存在がそうさせたのかもしれない。

ある段階でもう、これは今回の注文とは別のものだと感じた。採算を考える必要がなくなった。


STONE SCULPTURE-RYUSUI硯3

流れのような、触手のような、2つの動きが交じり合う、融合するような、なんかそんな感じ。

言葉にできません。
STONE SCULPTURE-RYUSUI硯4

実用性を考えて筆を置けるようにと、最初の段階で楕円のフォルムに突起をつけていた。

結果的にこの形状に。ちゃんと置けてます。

STONE SCULPTURE-RYUSUI硯2

墨をおろすことはできません。

が、硯としてはふざけた形ながら、実は自分が今まで造った中では一番実用的かも。

STONE SCULPTURE-RYUSUI硯


値段をつけると馬鹿みたいな金額になるので、単に硯としてではなく、

硯+ヒーリング+作品というすごく特殊な位置づけの存在ということにしよう。

でも自分が造るものはすべてそうだともいえるか。


研究のためのプロトタイプってとこでしょうか。

自動車だって販売してるのは数百万だけど、開発には数十億かかってるし。


あぁ、注文の硯別に造らないと…。