もやもやとした悩みを抱えながら過ごしていた年末。

 雪の降る中、リカルドくんが真剣な表情で話しかけてきた。

 

 今まで見たことがない表情だ。どうしたんだろう。

 も、もしや「毎日のように話しかけてきてウザい、大人のくせに」とか言われるのでは――。

 

 

 

 

 

 うおお…?

 嘘でしょ…?そんなこと聞かれるの…?

 

 ジェネくんとお付き合いをしていたので、つい正直に答えてしまったけれども。

 もしや、リカルドくんも私のことを憎からず思っている…?

(最悪なことに、「いない」と言えばよかった、などと思ってしまった)

 

 

 

 悩みつつも「ジェネくんのこと嫌いなわけじゃないし」「断るのも悪いし」と、なんだかんだで別れない方向に行きつつあったが。

 リカルドくんに言われて、パキーン、と。私の中の何かが割れてしまった。

 

 

 

 それからのことは、あまりよく覚えていない。

(スクショを撮っていないとも言う)

 気が付くと、恋人に渡すことで「別れたい」という最大の意思表示になるという、鮮やかな緑色の果実を購入していた。

 

 仕事納めの日だったと思う。ちらほらと雪が降っていて、場所はドルム山道で。坑道に行く人と山を下りる人で、いつものように混み合っていた。

 もうちょいそれらしい場所で話せば良かったと今は思うけど、そのときは余裕がなくて、人混みの中にジェネくんを見つけるやいなや、果実を手渡した。

 

 ジェネくんは即座に私の意思を理解した。

 怒りもせず、ただ「友達に戻るとかはできないから」と言い残して、山道を下りていく。

 人としての器が大きい…。多少は揉めると思っていたのに…。

 自分で決めたこととはいえ、恐ろしいほどの罪悪感に襲われた。

 

 

 

 

 

 その後すぐのこの会話にはひっくり返ったけれども。そんなことある?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その直後、リカルドくんに先とまったく同じ質問をされた。

 正直に答えた。

 

 

 

 

 

 もうほんの少しで、リカルドくんは成人する。

 そのときのことを、少しは期待しても良いのだろうか…。

 

 

 

 

 

 

 そんなことを思いつつ王国内を散歩し、なんとなくゴシップ掲示板を見たら、「失恋王」のところに私の名前があった。

 なんか釈然としないのだが…。

 


 

まさか子供と大人の間に、こんなかわいい会話が用意されているとは思わず…。

「なんだかんだ別れるとかはないよね」と思っていたのに、一気にスイッチが入って「色づかぬ果実」を買ってしまいました。

 

今思い出してもジェネくんにはメチャクチャ悪いことをしてしまった…。この後すぐに別の恋人ができていたのが救いです。