「浅間さーん…なんとか言ってくださいよー…」
同僚に促されるように視線を送った先には、デスクに向かう八坂の姿があった。
「地取りから帰ってきてから、ずっとあの状態なんスよ…?」
同僚が心配よりも迷惑がるのも無理は無い。現時刻は終業時間をとっくに過ぎているのだから。壁に目を遣れば、黒い長短の針が“12”の文字と別れを告げている。流石にあのままにしておく訳にもいかず、浅間は八坂に声を掛けた。
「八坂さん、もう日付変わっちゃってますよ?帰らなくていいんですか?」
「んー…」
返ってきた声に浅間は溜め息をついた。こういう返事をする時の八坂は、誰が何と言おうと聞かざる動かざるなのだ。いっそすぐ近くでダイナマイトでも爆発させれば反応するだろうか、と馬鹿な考えがよぎる程に動かない。諦めた浅間は、コーヒーを淹れようと棚へ向かった。
「今回のヤマ…どうなるんスかね…」
ふと隣に並んだ同僚がぽつりと漏らした言葉に、浅間は一瞬手を止めた。
「…さぁな…」
平然を装いつつコーヒーメーカーをセットする。その心中はガラスのポットにコーヒーの落ちるが如く、日に日に黒く染まっていく。そんな自分に嫌悪しつつ、犯人を挙げる事にふつふつと闘志を燃やす浅間は、同僚に気付かれないようにそっと、しかし、手の平に爪が食い込む程強く手を握っていた。
同僚に促されるように視線を送った先には、デスクに向かう八坂の姿があった。
「地取りから帰ってきてから、ずっとあの状態なんスよ…?」
同僚が心配よりも迷惑がるのも無理は無い。現時刻は終業時間をとっくに過ぎているのだから。壁に目を遣れば、黒い長短の針が“12”の文字と別れを告げている。流石にあのままにしておく訳にもいかず、浅間は八坂に声を掛けた。
「八坂さん、もう日付変わっちゃってますよ?帰らなくていいんですか?」
「んー…」
返ってきた声に浅間は溜め息をついた。こういう返事をする時の八坂は、誰が何と言おうと聞かざる動かざるなのだ。いっそすぐ近くでダイナマイトでも爆発させれば反応するだろうか、と馬鹿な考えがよぎる程に動かない。諦めた浅間は、コーヒーを淹れようと棚へ向かった。
「今回のヤマ…どうなるんスかね…」
ふと隣に並んだ同僚がぽつりと漏らした言葉に、浅間は一瞬手を止めた。
「…さぁな…」
平然を装いつつコーヒーメーカーをセットする。その心中はガラスのポットにコーヒーの落ちるが如く、日に日に黒く染まっていく。そんな自分に嫌悪しつつ、犯人を挙げる事にふつふつと闘志を燃やす浅間は、同僚に気付かれないようにそっと、しかし、手の平に爪が食い込む程強く手を握っていた。
