アイリス動物病院__________犬と猫の病気 & 看護師日記 -24ページ目

アイリス動物病院__________犬と猫の病気 & 看護師日記

大阪府羽曳野市にある『アイリス動物病院』です。
「犬や猫の病気について」と「看護師日記」を掲載していきます。
大切な家族であるわんちゃん、猫ちゃんが健康で長生きしていくためのお役に立てればと考えています。
是非ご覧下さい。

昨日参加させてもらったセミナーの内容からのご報告です。


まず甲状腺についてですが、


甲状腺は首にあり、骨/筋肉/内臓/皮膚など動物の身体の代謝を促すホルモンを分泌する、重要な器官です。


猫の甲状腺機能亢進症01






甲状腺機能亢進症とは、甲状腺から過剰なホルモンが分泌される病気です。10歳以上の老齢猫で最も多く認められます。


罹患率は、老齢猫の1020%ほどと報告されています。

猫の甲状腺機能亢進症03





猫の甲状腺機能亢進症は、人の原因として最も多い自己免疫性疾患である「バセドウ病」とは病態が異なり、次のような原因があります。


・甲状腺過形成(腫瘍と違い、正常細胞が増殖している)


・甲状腺腺腫(良性の腫瘍)


・甲状腺ガン(悪性の腫瘍)


・その他





~主な症状~


☆体重減少


☆多食


よく食べるのに、痩せてきている。これが最も多い症状です。また、その他にも下記のような症状がみられる事もあります。


・多飲多尿


・行動の変化(活動的、攻撃的、鳴き方の変化など)


・嘔吐


・下痢


・食欲低下


・呼吸促迫

・その他





これらの結果、身体に負担がかかり、心臓病、腎臓病、肝臓病などを併発し亡くなってしまう事もあります。





~治療法~


抗甲状腺薬(甲状腺ホルモン合成を阻害する)


外科手術(甲状腺摘出)





これらの治療法でも十分な効果が得られますが、抗甲状腺薬で1030%、外科手術でも510%で副作用や再発などがみられる事があります。





そこで、今回新たな治療法として「低ヨウ素食」が追加されました。


甲状腺機能亢進症の猫の90%で、甲状腺機能が正常に回復します。方法は非常に簡単で、ただその食餌だけを与えるだけです。他の治療との併用も必要なく、副作用も報告されていません。

猫の甲状腺機能亢進症02



また通常の食餌に比べ、蛋白質、リン、ナトリウムなども制限されており、高齢猫に多い腎不全にも配慮されています。





注意点


・他の食餌、おやつなど多くの物にはヨウ素が含まれているため、与えてはいけません。


・複数の猫を飼っている場合にも、他の猫の食餌を一切与えてはいけません。


・甲状腺ガン(悪性腫瘍)の場合には外科手術が推奨されます。





これは、飼い主様にとっても病気になった猫にとっても、治療のストレスから解放される革命的な治療法です。ぜひ当院でも治療の選択肢の一つとして、今後使っていきたいと思います。




アイリス動物病院


中村