胆嚢(たんのう)はどんな臓器かご存知でしょうか。
肝臓や腎臓と比べると、ちょっと分かりにくい臓器ですよね。
そこで、まず胆嚢について簡単にご説明します。
<胆嚢について>
犬の胆嚢は肝臓のほぼ中央に存在します。
肝臓で作られた「胆汁」を蓄積、濃縮しています。胆汁には消化、吸収を助ける働きがあります。
食べ物が胃から小腸(十二指腸)に入ると、胆嚢が刺激され収縮することで、胆汁を十二指腸に出します。
では、この胆嚢でどのような病気が起こるのでしょうか。
犬では主に次のような病気がみられます。
<主な胆嚢疾患>
①胆嚢炎
②胆泥症(たんでいしょう)
③胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)
④胆石症
⑤その他(ポリープ、腫瘍など)
※2つ以上の病気が併発していることもあります。
<症状・検査>
①胆嚢炎は、お薬などによる内科治療が中心になります。
②~④の病気は、内科治療ではあまり効果がみられません。
しかし実際は元気な犬でも比較的よくみられます。
そしてこれらの病気は、末期になるまでほぼ無症状である事が多く、非常に発見されにくいのです。
そのため、健康診断や他の病気の検査(血液検査や腹部レントゲンやエコー検査)の際に偶然見つかることが多いのです。
●血液検査 :肝臓の数値(GPT、GOT、ALPなど)の上昇がみられないこともあります。
※肝臓の数値が上昇していても無症状であることがほとんどです。
●レントゲン検査:ある程度進行していれば、肝臓の腫大、胆石がみつかることがあります。
●エコー検査 :早期の胆泥症、壁の肥厚、粘液嚢腫、胆石などを無症状のうちに発見しやすい検査です。
レントゲン検査:胆石症
エコー検査:正常(左)、胆泥症(右)
<治療法>
今までは経過観察や内科治療で様子を見ることが多く、末期になり状態が悪くなってから手術に踏み切ることが一般的でした。
しかし末期には、胆管閉塞、胆嚢破裂などにより黄疸、元気食欲の低下、嘔吐、下痢などの症状がみられるようになります。これは命に関わる状態です。
これらの症状は急性に起こることが多く、少し様子をみていることで手遅れになることもあります。状態が悪すぎると、手術をしても助からないこともあります。
そのため最近では、リスクを減らすため末期になる前に外科手術(開腹胆嚢摘出術)をするべきであるとの考え方が一般的になってきています。(人の場合は、同様の病気では腹腔鏡下胆嚢摘出術が一般的のようです)
当院でも、なんらかの胆嚢疾患があるわんちゃんが数多く来院されています。
そこで次回は、無症状でしたが胆泥症~胆嚢粘液嚢腫で肝酵素の上昇がみられていたわんちゃんをご紹介します。
アイリス動物病院