子宮蓄膿症とは、子宮の中に膿が貯留する病気で、乳腺腫瘍などと並び、未避妊の犬に多くみられる病気です。
写真も掲載していますので、苦手な方は申し訳ありません・・・。
9歳のMダックスの女の子です。
徐々に元気、食欲が無くなり、時々嘔吐もする。ですが水だけはよく飲んでいたそうです。その後陰部からの排膿、出血がみられ、ご来院されました。子宮蓄膿症の典型的な症状でした。
このように、陰部からの排膿がみられらばわかり易い(開放性子宮蓄膿症)のですが、中には子宮の出口がしっかり閉じていて排膿される事が無い場合(閉塞性子宮蓄膿症)もあります。
一般的には閉塞性子宮蓄膿症の方が、開放性子宮蓄膿症よりも重篤な状態になり易い傾向にあります。
ですが、どちらにおいても発見が遅れると、麻酔/手術に耐えられないくらい状態が悪化してしまいます。
一般的な開放性子宮蓄膿症での実際の子宮の状態と貯留した膿の顕微鏡写真です。



『子宮蓄膿症のお話』
人間の女性は、生理の度に子宮内膜が剥離し新たに生まれ変わります。
犬の発情期は、人間の生理とは違います。発情期には子宮内膜が充血する事で出血します。そのため出産する事でしか子宮内膜は生まれ変わる事がありません。
また毎年1~2回の発情を繰り返す事で、子宮内膜の厚みが増し、細菌が溜まり易くなってしまいます。
さらには発情出血開始後の1~2ヶ月の黄体期~黄体退行期と呼ばれる時期には子宮内の免疫力が最も下がってしまいます。
歳をとるにつれ、これらの要因が重なると子宮内に細菌感染が広がりやすい環境が出来上がってしまうのです。
~進行した場合によく見られる症状~
・元気がなくなる
・食欲がなくなる
・発熱
・多飲多尿
・嘔吐
・お腹が張る
・外陰部からの排膿(開放性のみ)
子宮蓄膿症を、早期に外見だけで発見する事は出来ません。
また避妊手術以外には発症を防ぐ事は出来ません。(よく誤解されているようですが、一度出産させておけば子宮蓄膿症にかからない!?なんてことはありません。)
早い子では2~3歳でも発症する事もあります。
避妊手術をしていない女の子のわんちゃんを飼われている方は、気になる症状が出始めたら、出来る限り早期に動物病院にご相談下さい!
アイリス動物病院
中村