久々に自分の中にヒットした曲。
純然たるシティッポップス。
今こう言った完成された曲は少ないのではないか。
なんとなく、インスタント食品と言おうか、ファストフードに近い感覚の楽曲が乱立されている。
「万人にそこそこおいしいと言わせられる」魔法のような(詐欺のような)楽曲群。
その中で突出してきたのがこの「街物語」だ。
シティポップスと言うと、80年代からみた都市群像を歌っている為に、
今から見れば一昔前の街並みとして回顧される立場に移行していると思う。
この曲もその一端を伺える、古めかしくノスタルジックな曲調である。
それに普遍的な感覚を付与するのはその歌詞世界だ。
歌は「子供たち」と歌われているとおり若葉のような青さから始まる。
やがて彼らは「愛のことを少しずつ知り始める」。
成長とは慢性のものなのだ。ある時全てを知ったような、世界を凌駕したような錯覚に襲われる時期を経て、
自分の無力と世界の広さを知る。それがつまり「物語」が続いていくことである。
その続きの中にも、自分を成長させた分岐点(初恋)の甘酸っぱさはいつまでも持ち続ける。
少し強くなった彼ら若者は「この街で生きていこう」と誰にでもなく語りかける。
ツルゲーネフの「初恋」やフィッツジェラルドの世界のような鬱屈した中に、
無暗に希望を燃やし続ける若さが光る。
全体として優しい楽曲である。
・
・
・
人それぞれ感じ方は違うと思うが、僕と近しい感覚の人がいたらサニーデイサービスのファーストアルバム「若者たち」をお勧めしたい。