2019年度  112本目の劇場鑑賞


イランの少女更生施設の中を撮影したドキュメンタリー。

殺人、窃盗、麻薬売買、売春などを犯した少女たちを収容する更生施設は日本のそれと違い(見たことはないが想像で)、けっこう自由だ。

壁際に2段ベッドが並んだテニスコートぐらいの大部屋に20人ほどが共同生活をしている。部屋の中心には絨毯が敷かれていて少女たちはそこで談笑したり歌ったり踊ったりでき、音楽をガンガン流していたりもする。

中庭にはちょっとしたエクササイズができる遊具などもあり、雪が降った日には少女たちは雪合戦をしたり雪ダルマをつくったりして無邪気に遊んでいる。

なかには赤ちゃん連れの少女もいて、その子は多くの少女たちにあやされる人気者だ。

少女たちの会話は屈託がない。詫びる様子もなく自分がやったことを自慢げに話したり抱き合って泣いたり。

このようなレビューだと良質な施設の話のように聞こえるが内容は全く違う。


映像は収監される少女が全部の指の指紋を取られるシーンから始まる。

監督による少女へのインタビューが主で、何の罪でこの施設に入ったのか、家族との仲、生活はどうだったのか、等の質問に対しての答えはみな厳しくて悲しい。

貧困、暴力、性的虐待、親の薬物依存、等々みな同様にひどい環境の生活に疲れ、罪に手を染めるしか生きる道が無い少女ばかりだ。

父親を殺して収監された少女は「母親と姉の同意のもとに自分が父親を殺した。殺さなかったらもっとひどいことになっていた」と語る。

定期的に宗教指導者が来て祈りと説教をする。

祈りの後、「今日は人権について話そうと思う」と切り出した宗教指導者に少女たちから辛辣な質問が噴き出す。

「なんで同じ罪を犯して男女で罰則が異なるのか」と質問されても答えられない。殺人に対しても男女で刑罰の重さが異なる国だ。

施設から出ても帰る場所がない。どこかで野垂れ死にするしかない、と釈放させることを拒む子も多いが、施設側は出所後のことにはお構え無し。「外に出た後は我々ができることはない。自殺したとしても我々の責任ではない」と言い切る。

監督が夢は何かと聞くと「死ぬこと」と答えていた少女が姉や両親との面会後、徐々に考えが前向きになり、出所後はまた学校に行き、弁護士か警官になりたい、と言って出所した子がいた。

この作品の撮影、監督のインタビューも一種のカウンセリングになったのだろうか。


鑑賞後ネットで調べたらこの作品は施設の撮影許可が下りるまでに7年間もかかったらしい。

イスラムに限らず理不尽な社会は多くあるが、宗教を重要視している国ほど貧困で紛争が多いことは紛れもない事実だ。

少女たちの無邪気な会話や笑い、暗い過去と救いようもない将来の現実からくる涙、胸にしみる作品だった。


評点・・・★★★☆  3.5
『初めて岩波ホールで映画を観た。昭和の映画館、て感じ。シニア料金が1500円は高い!映像技術面で一つ。雪のシーンでの舞い降りる雪がチラチラし過ぎて見づらかった。カメラのシャッター速度(シャッター角度)、人間の目の残像特性、Motion blurについて書くと長くなるので、興味のある人はネットで調べてね。』