2019年度 113本目の劇場鑑賞
スウェーデンの児童文学作家アストリッド・リンドグレーンの半生を描いたドラマ。
彼女の名前は知らなかったが「長くつ下のピッピ」は耳にしたことがある。
劇場の入り口に彼女の写真(晩年)と簡単な経歴が貼ってあった。
彼女は作家として数々の名作を残したのに加え、子供の権利を守り、虐待に対しての反対活動でも有名だったようだ。
スウェーデンの郊外で農業兼牧場を営む一家の長女として育った彼女は18歳の時に新聞社で助手として働き始めるが、既婚者(離婚訴訟中)の子供を身ごもってしまう。
厳格なクリスチャンの両親の下、また小さな町では出産できないので・・・。
作品の執筆シーンは全くない。寝つかない子供に<お話し>を聞かせるところまでがこの作品の主な内容だ。
ここから子供向けの作家として花開いて行ったことが想像できるが、この<お話し>は少女の頃からの妄想の物語だった。
子供のナレーションにより彼女の作品に対しての感想や謝意が節目節目に流されることにより、作家としての実績を表現している。
彼女が常に子供の目線に立ち、子供の気持ちを汲み、子供の味方として作品を書いていることに対してのお礼の手紙だ。
BGMは優しく、北欧の風景は寒々しいながらも豊かで美しい。
新しい列車の取材を任され、初めて記事になった彼女の文書が美しく、涙が込み上がってきた。
その文書は客観的な視点の取材ではなく、自分が感じたままを文書にした記事というより詩に聞こえた。
主演女優アルバ・アウグストの演技が素晴らしく、けして美人ではないが明るく破天荒な少女時代、優秀な秘書としての凛とした表情、子供に会えない苦悩、等を見事に演じている。
ストーリーは映画としてはそれほど劇的ではなく刺激が足りないとも思えるが、一女性の生涯として見れば波乱に満ちたものであったことは間違いない。
彼女の優しげな目と最後に流れる曲(晩年にファンの子供から送られた歌。徐々に本格的な曲になってエンドロールに続く)が頭から離れない。
心温まる作品だった。
評点・・・★★★★ 4
『今日現在この作品は日本で1館でのみの上映となっている(岩波ホール)。そのせいかほぼ満員だった。順次他の劇場でも上映するようです。』
