意匠権は、自社の独自性を守るだけでなく、適切に管理しなければ他社の意匠権を侵害してしまうリスクもあります。今回は、自社意匠が侵害された場合の対応策と、他社の意匠権を侵害しないための注意点について解説します。


1. 自社意匠の侵害を発見した場合の対応策

自社の意匠権が他社に侵害されていると判断した場合、早急かつ適切な対応が求められます。以下は、一般的な対応のステップです。

(1) 証拠の収集

侵害の証拠を確保することが最初の一歩です。

  • 模倣品や侵害製品の写真・購入記録を保存する。
  • 侵害が行われている地域や販売経路を特定する。

(2) 弁理士や弁護士への相談

専門家に状況を共有し、法的な選択肢について助言を受けます。適切な対応策を計画するために、以下の情報を提供しましょう:

  • 自社意匠の登録情報(登録番号、登録国など)。
  • 侵害製品の情報。

(3) 侵害者への通知

専門家の指導のもとで、侵害者に対し警告書を送付する場合があります。この段階での目的は、侵害行為を即座に停止させることです。

(4) 調停や訴訟の検討

話し合いで解決しない場合、調停や裁判を通じて権利を主張する必要があります。裁判では、損害賠償請求や侵害行為の差し止めを求めることができます。

注意点

侵害の判断には慎重さが必要です。自己の意匠が無効である場合や、侵害と認められないケースもあるため、専門家の助けを必ず受けましょう。


2. 他社の意匠権を侵害しないための注意点

自社製品が他社の意匠権を侵害してしまうと、信頼を損ねるだけでなく、損害賠償請求を受ける可能性もあります。以下のポイントを守り、リスクを回避しましょう。

(1) 意匠調査を徹底する

新製品の開発段階で、意匠調査を実施することが重要です。

  • 特許庁の意匠データベースを活用して類似の意匠が存在しないか確認する。
  • 必要に応じて、弁理士に調査を依頼する。

(2) 他社の意匠権情報を把握する

意匠登録の内容は公開されているため、業界内での登録状況を定期的に確認しましょう。

(3) デザインの独自性を高める

他社の意匠権を侵害しないために、独自性のあるデザインを心がけます。これにより、自社製品の価値も向上します。

(4) ライセンス契約の活用

万が一、他社の意匠権に類似するデザインを使用する必要がある場合、ライセンス契約を結ぶことで合法的に利用できる場合があります。


3. リスク管理の重要性

意匠権に関するリスクを管理するためには、日頃からの体制整備が欠かせません。以下の取り組みを社内で行いましょう:

  • 知財教育の実施:社員に意匠権の基本知識を教育する。
  • 専門家との連携:弁理士などの専門家を定期的に活用する。
  • リスクマネジメント計画:侵害が発生した際の対応フローを整備しておく。

まとめ

自社意匠の侵害を発見した場合には迅速な行動が必要であり、同時に他社意匠権の侵害を避けるための配慮も求められます。意匠権に関するリスク管理を徹底することで、安心してビジネスを展開できる環境を整えましょう。

 

 

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海外市場への展開を目指す中小企業にとって、製品のデザインや意匠を保護することは競争力を維持するために欠かせません。本記事では、海外市場での意匠登録の重要性と、ハーグ協定を活用した国際的な出願の方法について解説します。


1. 海外市場を視野に入れた意匠登録の必要性

グローバル化が進む現代では、国内市場にとどまらず、海外市場に進出する中小企業が増えています。しかし、優れたデザインの製品を他国で販売する際、意匠権がないと模倣や不正使用のリスクが高まります。
例えば、意匠登録がされていない国では、競合他社にデザインを模倣されても法的手段を講じることができず、ブランド価値や収益に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

以下の点を念頭に、海外での意匠登録を検討しましょう:

  • 模倣防止:他国での模倣品や不正競争からデザインを守る。
  • 市場競争力の確保:独自性をアピールし、消費者や取引先からの信頼を得る。
  • ビジネス拡大の基盤:グローバル市場での知的財産権保護により、海外パートナーとの取引も円滑に進められる。

2. ハーグ協定を活用した国際意匠登録出願

国際的に意匠を保護するには、ハーグ協定(正式名称:意匠の国際登録に関するハーグ協定)が有力な手段となります。この協定に基づく国際意匠登録出願は、一度の申請で複数の締約国における意匠登録を可能にする効率的な制度です。

ハーグ協定の主な利点

  1. 一括手続き
     複数国への意匠出願を、一つの申請書で対応可能。手間やコストを削減できます。
  2. 柔軟な選択肢
     保護を希望する国を自由に選択でき、状況に応じて追加の国を指定することも可能です。
  3. 簡便な管理
     更新や変更の手続きも一括で行えるため、意匠権の管理が容易になります。

利用手続きの流れ

  1. 申請準備
     意匠の詳細、希望する保護国、出願者情報を準備します。デザイン図面や写真も提出が必要です。
  2. 国際事務局への出願
     世界知的所有権機関(WIPO)の国際事務局を通じて申請を行います。
  3. 各国での審査
     指定国ごとの審査に基づき、登録の可否が判断されます。

注意点

  • ハーグ協定の締約国でない国は対象外になるため、対象国を確認してください。
  • 国ごとの審査基準や登録要件の違いを理解しておく必要があります。

まとめ

中小企業が海外市場で成功を収めるためには、意匠の国際的な保護を確保することが重要です。ハーグ協定を活用することで、効率的かつ効果的に複数国での意匠権を取得できます。この制度を上手に活用し、グローバルなビジネス展開の基盤を整えましょう。

 

 

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意匠第9回:意匠権と他の知的財産権の違い

知的財産権は、企業が持つアイデアやデザイン、ブランドを保護するための重要な手段です。しかし、意匠権だけでなく商標、著作権、特許など多様な知的財産権が存在するため、その違いや役割を正しく理解することが大切です。

本記事では、意匠権と他の知的財産権との違いを解説し、それらを組み合わせた総合的な知財戦略の重要性を紹介します。


1. 意匠権とは?

意匠権は、製品の**デザイン(形状、模様、色彩)**に関する独自性を保護するための権利です。

  • 対象: 製品の外観デザイン(視覚的に認識されるもの)
  • : 家具のフォルム、バッグの装飾、家電の外観など
  • 保護期間: 登録から25年間(更新不可)

意匠権は製品の見た目を保護するものであり、他の知的財産権とは異なる役割を果たします。


2. 商標、著作権、特許との違い

(1) 商標権

  • 役割: 商品やサービスのブランド名やロゴを保護
  • 対象: 名前、ロゴ、スローガンなど、商業活動における識別標識
  • 保護期間: 登録後10年(更新可能)
  • : スポーツブランドのロゴ、企業名、商品名
  • 意匠権との違い:
    商標は「ブランド」の識別を守るものであり、外観デザイン自体を保護する意匠権とは異なる。

(2) 著作権

  • 役割: 創作物(文学、音楽、絵画、デザインなど)を保護
  • 対象: デザインのうち芸術的要素が強いもの(例:絵画や彫刻)
  • 保護期間: 創作者の死後70年(国による差あり)
  • : キャラクターデザイン、イラスト、音楽作品
  • 意匠権との違い:
    著作権は登録不要で発生するが、製品の形状や実用的なデザインは保護対象外となる場合が多い。

(3) 特許権

  • 役割: 技術的アイデアや発明を保護
  • 対象: 新規性のある技術、機能、仕組み
  • 保護期間: 出願から20年(一定条件で延長可能)
  • : 新しいエンジン技術、医療機器の構造
  • 意匠権との違い:
    特許は製品の「機能」や「技術」を保護するもので、見た目を保護する意匠権とは目的が異なる。

3. 知的財産権を組み合わせた総合的な戦略

中小企業が競争力を強化するためには、意匠権だけでなく他の知的財産権も活用し、総合的な保護戦略を構築することが重要です。

(1) ブランド構築に商標を活用

  • 戦略例:
    製品のデザイン(意匠権)を保護すると同時に、製品名やロゴ(商標権)を登録。
    : 特徴的なバッグデザインを意匠権で保護し、ブランドロゴを商標で登録。

(2) 芸術性の高いデザインに著作権を活用

  • 戦略例:
    意匠権で保護できない芸術的デザインは著作権で守る。
    : 製品外観を意匠権で保護し、製品カタログのイラストは著作権で保護。

(3) 技術革新と意匠を組み合わせる

  • 戦略例:
    製品の技術(特許権)と外観デザイン(意匠権)を同時に保護し、総合的な競争力を高める。
    : 新しい調理家電の機能を特許で、独自のデザインを意匠で保護。

(4) 模倣品対策に多面的な権利を活用

  • 戦略例:
    模倣品が登場した場合、意匠権・商標権・著作権を組み合わせて訴訟や警告を行う。
    : デザインをコピーした模倣品に対し、意匠権と商標権を根拠に差止請求。

4. 成功事例:知財権の組み合わせで競争力強化

事例:インテリア雑貨メーカーB社

  • 課題: 人気商品の模倣品が市場に出回り、売上が減少。
  • 対応:
    1. 商品の形状を意匠権で保護。
    2. 商品名を商標権で登録。
    3. カタログデザインを著作権で守る。
      結果: 模倣品業者に対し、複数の権利を活用して法的措置を実施。模倣品の販売停止に成功し、ブランドの信頼性を回復。