私は通勤に一日乗車券を使っている。
遅番で最終の時はそのまま、降りた駅で券を処分しているのだが
中番や日勤の時は自宅の最寄り駅で降りると手元の券に用が無くなってしまう。
ある日、友人がステキな事を言った。
「私は券売機の前に居る人に(券を)譲るよ」
私にとって用が無くなった券。
しかし、用の無くなった券で誰かが喜んでくれたら、こんなに素晴らしい事は無い。
さっそく下車した駅にて声を掛ける。
人によって反応は様々だ。
嬉しそうな表情をする人、困惑する人、明らかに不審者を見る様な視線を送る人。
(私の雰囲気や出で立ちが怪しいのか?)
中番や日勤で声を掛けるのが日課になったある日の事。
私は、いつもの様に券売機の前に居る人に声を掛ける。
「コレ、もう使わないので差し上げます」
相手は女の子の学生さんだったが、外国人らしく私の言った言葉が理解出来ていない様子だった。
「あげる。Here you are.」
彼女の手に券を渡し、その場を去ろうとした時に
「ダメだよ!待って!(和訳)」と彼女が追いかけてきた。
(彼女が中国語を話していたので、その時に中国人だと分かった)
「今日はもう使わないからどうぞ」と言いたかったが、私のダメ語学力では伝えられず。(苦笑)
彼女は私の手の中に何かを押し入れた。
見ると手の中に300円が入っていた。
今まで色んな人に声を掛けたが、今回の様な事は初めてだった。
たかが300円。
されど300円。
使わなくなり破棄する券が300円の硬貨になり
手の平の硬貨が彼女の気持ちの様な気がして、私はもう一度、300円を握り締めた。


