島国に住み、日々ドメスティックなニュースに接していると、国際社会に疎い浦島太郎となる事がある。
そのくらい日本のニュースは画一化してると思う。
この映画も実際の出来事の映画化ではあるが、そんな事実を全く知らなかった。
遠いエチオピアとイスラエルのことでもあるし、日本とは全く馴染みがないということなので、ニュースソースとして選択されなかったんだろうな。
アメリカの映画人にはユダヤ系が多く、イスラエルシンパシーの映画やそれを皮肉った映画も数多く作られます。
逆に全共闘時代を経た日本ではパレスチナ連帯がメディアを含めて強く、反米の機運もあって、こうしたイスラエル寄りのニュースは報道し辛いのかな。
などと思ったりもする。
カザ地区の空爆の報道はきっちりするけどね。
イスラエルから見た映画です。
演じてるのはユダヤ系のアメリカ人だし、ハリウッドの映画ですが、イスラエルの映画と言っていい。
イスラエルの情報機関ムサドが迫害されているエチオピアのユダヤ教徒を救うため、隣国スーダンの海岸にアメリカ資本と偽ってホテルを作ります。
そのホテルの名が「紅海リゾート」
実際は、難民をホテルに集めて、そこから船でイスラエルに送るという極秘任務。
スーダンの対岸はサウジアラビア。
その間にある紅海を通りスエズ運河を渡ればイスラエルに到着出来ます。
ホテルはあくまで偽装なのだけど、中には本当にツアー客が訪れるというのがアクセント。
アフリカの角と呼ばれるエチオピアの先端まで旅行に来るのが、ドイツ人や中国人ツアーというのが、ある意味リアリズム。
何処にも行くもんな。
インバウンド華やからしころ、-20℃の宗谷岬のバス停で一緒に凍えあったのもチャイニーズでしたからね。
エチオピアが独裁にあって、多くの国民が虐げられてるというニュースは漠然とは知ってました。
でも、そのエチオピアにユダヤ教徒がいてそれをイスラエルが国家として彼らを救うというのが、僕にはどうしても、ピンときませんでした。
中東とアフリカというのが頭の中で全く異質な世界観に思えたのですね。
しかし、地図をよく眺めて見れば、エチオピアとイスラエルというのは、決して遠い距離でなく、紅海を使えば船での行き来は、苦労するほどでは無い。
イスラム教にしろユダヤ教にしろ、北はヨーロッパ各地に信者が点在します。
であるなら、南にそれが広がっていても不思議じゃ無い。
中東とアフリカを切り離して考えていた僕の頭の構造が固かっただけのことですね。
イスラエルは、迫害を逃れて建国されたユダヤ国家。
その成り立ちと周りのイスラムとの確執は、中東戦争で僕らも多くを学びました。
その国家の成り立ち故、国家の迫害に対して誰よりも神経質なのだろうと思います。
映画は、そんな彼らの難民を救いたいとする気持ちがストレートに伝わる緊迫感あふれる良い映画に仕上がりました。
サスペンス映画として面白いし、エンドクレジットでのホンモノの画像と重なり感動を覚えます。
迫害され命の危険に晒され、藁にもすがる気持ちで助けを求める人たち。
それを救おうとするモサドのメンバー達。
やや、その使命感に正義を振り翳すのが、映画として、ヒーローヒーローしてるのが鼻に付くけど、でも実話の映画化ということを考えれば、やはり凄いこと。
難民輸送とホテルを疑いトラックを追う政府軍の怖さと緊張感を映画はよく描いていると思います。
主演はキャプテン・アメリカのクリス・エバンス。
文字通りこの映画でもヒーローを演じます。
ただし、キャプテンアメリカと違って超人では無い。
紅一点のヘイリー・ベネットが可憐です。
監督はギデオン・ラフ、ユダヤ系っぽい名前だなあ。
ホントはどうか知らないけど。