マリンで野球見た後の土曜の夜、映画見に行ってきました。
「空母いぶき」です。
公開前に首相役を演じることとなった佐藤浩市が、体制側を演じることに違和感を感じると感想を述べると、永遠の0で知られる作家の百田尚樹氏が、それに噛みつき「どんな役でも演じるのが役者なのに、そんなことを言うとは三文役者だ」と呟いたそうです。
百田尚樹氏はその著書「日本国紀」で自身の思想信条がかなり右寄りなところを明らかにしてます。
この本は読んだのでそのうち書評で語ろうとおもいますが、ここは体制派である百田尚樹氏が、いわゆる反体制派こそが文化人とする一昔前のイメージを気取った佐藤浩市への痛烈な批判でありました。
でもまあ、そんな場外バトルの行方うんぬんよりも映画公開前に話題があがることは決してマイナスでは無いでしょう。
実際、土曜日の夜9時の上映というのに、相当数客席埋まってましたから。
近い未来という設定。
日本の排他的水域である尖閣諸島らしき島を、とある国が自国領であるとして一方的に占拠するという事態が起こりました。
日本政府はその事態に際し、自衛隊を派遣。
国家の主権を守る活動と専守防衛を常とする自衛隊の任務とをどこまで容認するのかというジレンマを、現実の危機の中で描いていきます。
「沈黙の艦隊の著者かわぐちかいじ氏のベストセラーコミックの映画化ということです。
ということです、ということで僕は原作読んでない。
コミックと侮ることなかれ。
小説を凌駕するコミックもあり、コミックに劣る小説も多いの現実なのだから。
ただねえ、マンガの映画化を大真面目に作ることが多いなあ、とは思うけどね。
映画を見る限り、自衛艦の配備や武器やの使い方等、リアリティを持たせてくれているのは好感。
ただそこは、南沙諸島の領有権を主張する某国による不法による領土侵犯を、架空の国家としてます。
どうせ架空の国家という形にするなら、ドラマの中で新興国とするよりも、中国が相手という風に匂わせばよりリアイティが生まれたのにね。
おそらく原作では、日本の自衛隊が空母を持つことに関しての議論があったろうと思われます。
空母は、専守防衛の自衛隊に必要かどうかという。
空母は、艦隊主力を成す中心的な役割を持ちます。
なぜならば、近代戦では航空機こそが攻撃の要であり、その航空機の離発着が海洋上で出来るのであるから、より戦闘地域に近い場所まで航空機を運べるのだから。
古い話だけど、太平洋戦争で日本が真珠湾攻撃をしたのも空母を叩くのが目的であったし、日本が制空権を失ったのは、ミッドウェイ海戦で赤城をはじめ主力空母4隻を失ったためでありました。
しかし、現憲法下における日本の専守防衛を鑑みたとき、空母は戦闘地域への派遣を目的とするものとして、国土防衛という観点からみれば、基地から戦闘機を離発着すれば事足りる、という論理がまかり立つ。
ですから現実の日本の自衛隊は空母を有していません。
「他国への航空兵力の展開が可能になる空母を保有することは、日本国憲法の専守防衛と戦力の不保持の原則に背く」という政府の憲法解釈により、海上自衛隊は固定翼機を運用する正規空母を保有していない(ペディア引用)
だから、この映画で戦後日本として初の航空母艦「いずも」が描かれるということが、そもそもの自衛隊と軍隊のはざまにある関係として、映画のテーマでもあったはず。
そのへん、全く描かれてないから軍事オンチの人には、空母と駆逐艦の違いすら理解不能であったろう。
映画とは、わかってる人や原作を知らない者にも、ある程度の理解をさせて見せることが求められるのです。
映画と離れ余談だけど、今日来日中のトランプ大統領が会場自衛隊の「しずも型護衛艦かが」に乗艦されたようですね。
以下画像と記事は引用。
来日中のトランプ米大統領は28日午前、安倍晋三首相とともに海上自衛隊の横須賀基地(神奈川県)で海上自衛隊のいずも型護衛艦「かが」に乗艦した。政府はいずも型護衛艦を改修して事実上「空母化」する方針。両首脳がそろって乗艦する姿をアピールすることで、北朝鮮や中国を念頭に強固な日米同盟を内外に示した。
(中略)
いずも型は海自最大の護衛艦。「いずも」「かが」の2隻があり、甲板などを改修し短距離離陸と垂直着陸が可能な米国製のステルス戦闘機F35Bが発着できる。首相は「かが」を改修する方針を示し「地域の公共財として日米同盟のさらなる強化に向け、不断の努力を果たす」と強調した。トランプ氏は「日本は(F35の)最大の購入元になり、大型の艦船に艦載される。すばらしい新しい装備で地域の紛争にも対応することになる」と語った。(以上記事引用)
この「かが」は空母とは違いますが、記事にあるようにF35Bや戦闘ヘリの離発着が可能であり、限りなく航空母艦に近い存在であります。海上自衛隊からすれば空母を持つことは悲願な訳で、映画でいうところの第5艦隊なる艦隊としての機能の中心的役割こそが航空母艦であり、空母をあってこその艦隊だとする意見が根強いものがあります。であるからして、映画の中でも敵の魚雷を身を挺してまで防ごうとする巡洋艦艦長を描くというシーンすら描かれるのです。その意味ではトランプ大領領の来日とかが乗艦は、映画の宣伝上グッドタイミングで興行上追い風となりうるかも。よーそろー。ただね、何度も言うけど、そういうことは皆さん知ってるでしょ、的な説明不足は否めない。せっかく「いぶき」に記者が乗艦しているのだから、そのへんの説明を記者に語らせ映画を見る者に説明すればよいのに「船が燃えてます」的な情緒シーンがクローズアップされてしまう。結局のところ自衛隊の現実的対応がどうなのかというジレンマは残したまま反戦テーマにゆきつくのかな、がうざい。うざいと言えば中井貴一演じるコンビニ店長とそのコンビニのシーンは全くの無駄。製作サイドはクリスマス前のコンビニのなにげない日常と緊張感ある戦闘現場の対比を経て平和と戦争の狭間を描きたかったんだろうけどまったくもってそんな意図は伝わらずただただうざかった。「いぶき」と敵との交戦をはじめとする戦闘のリアリティを追及しているだけに余計そのコントラクトに戸惑った観客が多かったのではないか?
武官・政治家は概ね好演だった思います。主演の西島秀俊は大作の主演を淡々と演じました。逆に相手役の佐々木蔵之介は力はいりすぎ。この役者も淡々と演じたときのほうが良い。たまたま取材のため乗艦し戦闘取材をすることとなった本田翼と小倉久寛は力不足のうえミスキャスト。コンビニのシーンやネット配信の会社のメンバー同様、どうにもならへんかった。全体的は出来は悪くはないものの、つまるところ地味だし役者も地味、それでもヒットしそうな雰囲気があるのは、この映画がやっぱり今を描くタイムリーでありうるからかな。
最初の魚雷攻撃で司令官が負傷し指揮を艦長西島と副館長佐々木蔵之介に委ねるシーン、僕は宇宙戦艦ヤマト思い出した。どうでもいいことだけど。