「君の名は」と聞くと、戦前のラジオドラマでこれが始まると女風呂がガラガラになるという逸話を聞いたことがあります。

そんな古いタイトルと同名ではなりますが、平成版「君の名は」は、そんな古いメロドラマとは打って変わって、ほろ苦くも瑞々しい青春ドラマであり、数奇な運命に導かれる男女の、奇抜でありながらも良く練られた幻想的な物語でもあります。

基本、そこまでアニメ―ションは好まないのだけど、この映画を見ると、これは日本映画の持つアニメーション映画の中でもBESTの1本と呼べるの映画ではないか、というほどの作品だと思います。

 

何より、この映画、何の情報も入れないで見たほうが良い。

少なくとも僕はそうでした。

男女の入れ替わりという大林信彦の「転校生」の2番煎じのようなラブコメかな、程度の認識でこの映画に臨みました。

そのくらいで挑んだことが結果的に正解。

本当によく練られた脚本であり、物語の展開が楽しみに感じられ、映画に入っていくことができる稀有な面白い映画であります。

 

見知らぬ者同士であった田舎町で生活している少女と東京に住む少年が、奇妙な夢を通じて導かれていく姿を追う、とパンフにありますのでここまで言っておきましょう。

田舎の少女が東京に住む少年と入れ替わりるのだけど、それが夢のように朝目覚めると、記憶のかなたに消えてゆく、というのが何よりも瑞々しい。

 

この映画のテーマは、夢と時間であります。

入れ替わりのコミカルな面の面白さはおくとして、実は時というのは糸を摘むような人と人との繋がりを結ぶものとして語られること、それが後半の伏線となるこというのも優れた脚本のなせる技でありましょう。

 

この映画、アニメとする意味があったのだろうか?

そんな疑問を持ちます。

実写で映画化すべき題材ではないのか?

しかしその疑問も、このアニメ映画の描き出す美しい風景(東京であれ、田舎の風景であれ)、がアニメショーンならではの美しさ故、よりピュアな映像美となったといえるのではないか。

良い映画というのは、良い脚本と撮影と音楽が相乗効果を生むものであります。

この映画もまさしくその撮通り!

 

少々欠点を述べるとすれば、出てくる登場人物がまるで、ジブリ映画そのままのキャラという点かな。

それくらい類似系の良い友人たち。

まあ、それがファンタジックであると呼べるのか。

今年見た映画の中でベストの1本に入る映画でありました。