女々しい奴

女々しい奴

セクシュアリティ・ジェンダー・防災などなど,仙台に暮らす独り者バイの日々雑感。

一瞬でも「養親と養子」の関係になった者同士はたとえその関係を解消したとしても一生婚姻できない、とこれまで繰り返し述べてきた。

だったらその逆、「婚姻」していた者同士が「養親と養子」に切り替えるのはどうなんだろう?

「婚姻」していた、ということは、すでにセックスしているということだ(例外もあるが)。
養子縁組を婚姻に切り替えるのが反倫理的でダメだというなら、婚姻していた=セックスしていた2人が今度は親子になるというのもダメなんじゃないのか?と思わないだろうか。

それがなんとOKなのである。民法に禁止規定が存在しないのだ。

東京拘置所に収容されている確定死刑囚X子さんの例を紹介しよう。
X子さんはY男さんと獄中婚ののち離婚し別の男性Z男さんと再婚。しかし元夫であるY男さんからも復縁を求められたため、Y男さんと今度は養子縁組したのだという。

木嶋佳苗死刑囚が密かに進めていた“3人との養子縁組”の思惑…接見禁止に備えた周到すぎる決意と3度の獄中結婚〈首都圏連続不審死事件〉(篠田博之)
https://shueisha.online/articles/-/256008



獄中での複雑な婚姻・養子縁組関係という点では似ていても、“親子→婚姻”であるその1その13はNGである一方で、こちらの“婚姻→親子”はOK。

なんだかずいぶん納得いかない話である。

 

その1で、名古屋拘置所に収容されていたA男さんと、A男さんの養父B男さん(大阪拘置所収容中の確定死刑囚)の元妻であるC子さんが、民法で禁止された近親婚(元直系姻族間)にあたる婚姻届を名古屋市に提出、受理されていたと思われる件について紹介した。

この件の後日談が記事になっていたので見てみたところ、またまた驚きの記述があった。

死刑囚と“獄中結婚”→スピード離婚→また別の死刑囚と結婚・死別…過去10回刑務所に入った女性が明かす、夫の最期「最後まで罪と向き合っていた」(片岡健)
https://bunshun.jp/articles/-/87566


「実はA男の死後、C子さんは再びB男と文通するようになっている。C子さんとしてはB男がいつか死刑執行されるにしても、自分が奪った生命に向き合ってから執行されて欲しいと思っているためだ。B男の収容先の大阪拘置所も、そんなC子さんを『再婚の可能性がある人物』と認め、B男との手紙のやりとりを許してくれたという
(※原文ではA男さん・C子さん・B男さんは実名)

(※下線は引用者による)



えっ??

ちょっと待って。


B男さんとC子さんって、民法第735条で婚姻が禁止されている「元直系姻族」になっちゃってるんじゃないの??

(直系姻族間の婚姻の禁止)
第七百三十五条 直系姻族の間では、婚姻をすることができない。第七百二十八条又は第八百十七条の九の規定により姻族関係が終了した後も、同様とする。
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089



C子さんはB男さんの養子であるA男さんと婚姻した時点でB男さんと直系姻族(舅と嫁)の関係になってるんだから、民法第735条の近親婚禁止規定に抵触し生涯婚姻できなくなっちゃってるんじゃないの??

(※A男さんとC子さんの婚姻がそもそも近親婚禁止規定に抵触するものだったとしても、役所の婚姻届受付窓口で受理されてしまえば婚姻が有効に成立するため、B男さんとC子さんの舅嫁関係もまた同様に有効に成立しているということになる)


それなのに「B男の収容先の大阪拘置所も、そんなC子さんを『再婚の可能性がある人物』と認め」??

大阪拘置所、気づいてないんだろうか。

それとも、気づいていながら目をつぶっているんだろうか。

いずれにしろ、なんだかずいぶんテキトーな話である。


この獄中近親婚の件といい、自治体パートナーシップ制度の件といい、お役所が民法で禁止された近親婚の関係を積極的に公認する事例が最近後を絶たない。

しかし一方で、近親婚に関して、正面切ってのきちんとした議論は未だにタブー視され、避けられ続けている。

あまりにもグダグダな話である。

 

公職選挙法第6条に、選挙に関する啓発、周知等についての規定がある。

選挙に関する啓発、周知等)
第六条 総務大臣、中央選挙管理会、参議院合同選挙区選挙管理委員会、都道府県の選挙管理委員会及び市町村の選挙管理委員会は、選挙が公明かつ適正に行われるように、常にあらゆる機会を通じて選挙人の政治常識の向上に努めるとともに、特に選挙に際しては投票の方法、選挙違反その他選挙に関し必要と認める事項を選挙人に周知させなければならない。
2 中央選挙管理会、参議院合同選挙区選挙管理委員会、都道府県の選挙管理委員会及び市町村の選挙管理委員会は、選挙の結果を選挙人に対して速やかに知らせるように努めなければならない。
3 選挙人に対しては、特別の事情がない限り、選挙の当日、その選挙権を行使するために必要な時間を与えるよう措置されなければならない。


これを根拠に、選挙に関するいろんな啓発活動が税金で行われているわけだ。

では最高裁判所裁判官国民審査についてはどうだろうか。

最高裁判所裁判官国民審査法を見てみると…

なんと「ない」のである。

公職選挙法第6条のような啓発、周知等に関する規定がないのだ。

道理で国民審査の存在感が薄いはずである。

どちらも大事な制度のはずなのにこの差。

国民に国民審査のことなんか理解してもらう必要なし!ということなんだろうか。
ヘタに理解なんかされちゃうと何か不都合だったりするんだろうか。

国民審査、知れば知るほど不思議な制度である。

【関連記事】
最高裁判所裁判官国民審査「だけ」棄権する方法について
https://ameblo.jp/iodostarch-reaction/entry-12956430001.html

実はこんなこともできちゃう!選挙と全然違う「国民審査」の不思議なルール
https://ameblo.jp/iodostarch-reaction/entry-12956430335.html

 

国中大盛り上がりの衆議院議員選挙の陰で、「最高裁判所裁判官国民審査」がひっそりと話題になっている。

対象者2名の罷免率(有効票に占める罷免票(バツ)の割合)が共に10%を超えたというのだ。

最高裁判所裁判官の国民審査、全員信任 2人とも「不信任」1割超(2026/2/9日本経済新聞電子版)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD0462Q0U6A200C2000000/

最高裁裁判官の国民審査、解職なし 対象2人の「×」印は13%超(2026/2/9朝日新聞デジタル)
https://www.asahi.com/articles/ASV293QJGV29UTIL03GM.html

最高裁裁判官の国民審査、過去2番目に高い罷免率…SNSで「×」の呼びかけ影響か(2026/2/10読売新聞オンライン)
https://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/20260210-GYT1T00465/

今回の対象者2名はいずれも民間出身で(弁護士&研究者)、裁判官としては新米。判決を下した実績も少ない。それなのに過去の対象者と比べてもかなり高いバツ率(といってもしょせん10%台なわけだが)。国民審査に対する有権者の向き合い方が変わってきているのかもしれない。

読売新聞の記事では、SNSの影響があるのではないかと指摘していた。
確かに、このご時勢、うまくバズらせれば、国民審査で過半数のバツを集め、裁判官をクビにするというのも非現実的な話ではないだろう。


ところで、選挙運動には公職選挙法により細かい厳しいさまざまな規制が課せられているが、公職選挙法ではなく最高裁判所裁判官国民審査法に基づいて行われる国民審査に関しては、ルールが実は選挙とは大きく異なっていることをご存じだろうか。

たとえば、国民審査は「誰でも広告出し放題、ビラ撒き放題、いくら金使ってもOK」だったりする。
公職選挙法では厳しい制限がかけられているところだが国民審査はフリーダムなのだ。

なので実際、バツつけを訴える大きな新聞広告を長年出している市民団体などもある。合法にこういうことがやれるのが国民審査なのだ。

意見広告アーカイブ(抜粋)(特定非営利活動法人一人一票実現国民会議)
https://www.ippyo.org/PHP/iken_koukoku_list.php

とはいえ、見方を変えると、ここまで金をかけて頑張ってもなかなかバツ率が上がらなかったのがこれまでの現実だったともいえる。

しかしこのネット社会、情報発信のあり方は急激に大きく変化している。
いくら金を使っても合法なのだ(ただし「バツつけてくれたら1万円あげる」みたいな利益供与とかはダメ)。堂々と広告打ちまくって良いのだ。うまくやればかなり世論を喚起できるのではないか。
国民はもちろんだが、たとえば海の向こうのどこかの国が、自国に都合の悪い判決出しそうな裁判官の罷免運動を金に糸目をつけずやりまくる、なんていうのもまんざらあり得ない話ではないだろう。なんといっても合法なのだし。


いろいろ不思議な国民審査だが、基本のルールが日本国憲法で定められているため、根本的なところを変えるとなると憲法改正しなければならない。

今後どうなっていくのだろうか。

最高裁判所裁判官が国民審査でクビになりまくるジャパンになったら、憲法改正を訴える声が高まるのだろうか。

もしかしたらコレ、憲法改正を実現する近道だったりするのかもしれない。

【関連記事】
最高裁判所裁判官国民審査「だけ」棄権する方法について
https://ameblo.jp/iodostarch-reaction/entry-12956430001.html

 

周知の必要なし?! なぜ国民審査の存在感が薄いのか
https://ameblo.jp/iodostarch-reaction/entry-12956436303.html

【参考サイト】
なるほど!「最高裁判所裁判官国民審査制度」(総務省ホームページ)
https://www.soumu.go.jp/senkyo/kokuminshinsa/index.html
研究報告(西川伸一Online)

https://www.nishikawa-shin-ichi-online.com/%E7%A0%94%E7%A9%B6%E5%A0%B1%E5%91%8A/

いつも衆議院議員選挙の陰に埋もれがちだが、最高裁判所裁判官国民審査、非常に重要なのでこちらもぜひ自分なりに考えてみていただきたいと思う。
特に最近はLGBT・セクマイ関係の重要判例が相次いでいるので界隈は要チェックである。

【国民審査の基本】
・裁判官ごとに、辞めさせたい意思があれば「×」を記載し、なければ何も記載せずに投票。
※「×」以外の事項を記載した投票は無効になる。推しに○をつけるのはNG!
・「×」が記載された票が、何も記載されていない票の票数を超えた場合、その裁判官はクビ。
https://www.soumu.go.jp/senkyo/kokuminshinsa/seido_point.html


漫然と白票を投じている人も多いようだが、国民審査の場合「白票=白紙委任」となる。議員選挙と違って「白票=無効」にはならないので要注意だ。

「なんかよく分からない!クビにすべきとかすべきでないとか判断できない!」という場合は、白票を投じるのではなく、「棄権」という選択が可能である。

衆議院議員選挙は投票したいけど国民審査は棄権したい!というのももちろん可能。国民審査の投票用紙の交付窓口で「国民審査は棄権します。」と言えば良いだけ。
声に出して言いづらい人は紙に書いて持参するのも良いかもしれない(スマホの画面に表示させる手もあるが最近投票所のスマホ使用厳しくなってきてるようなので紙の方が無難と思われる)。

国民審査の場合、「棄権」も積極的な意見表明だと思う。
だって実際問題として、判断材料少なすぎ、提供されなさすぎ。
「審査しろっていうならもっとちゃんと判断材料提供してよ!こんなんじゃ判断できないから棄権するしかないよ!」っていう意思表示になる。

だって議員候補者の人たちと比べてみて欲しい。議員候補者が自分を信任してもらうためにどれだけ血の滲むような努力をしているか。自己アピールをしているか。
国民審査の対象となる最高裁判所の裁判官の人たちは、国民に、有権者に自分たちを信任してもらうために、一体どれだけの努力をしているのだろうか。
本当なら、議員候補者と同じくらいの努力があったっておかしくないんじゃないだろうか。だって自分のクビがかかってるんだから。
そんな様子が全然見受けられないのって、要するに国民が、有権者がナメられてるってことなんじゃないだろうか。

昭和の時代、国民審査制度のあり方に疑問を持って最高裁まで法廷闘争した人たちがいた。もちろん最高裁の裁判官たちが自分たちの不利になるような判決を下すはずもなかったわけだが。

この裁判の最高裁の判決文にはこんなことが書いてある。
https://www.courts.go.jp/hanrei/57143/detail2/index.html

“罷免する方がいいか悪いかわからない者は、積極的に「罷免を可とする」という意思を持たないこと勿論だから、かかる者の投票に対し「罷免を可とするものではない」との効果を発生せしめることは、何等意思に反する効果を発生せしめるものではない”

“何等かの理由で罷免をしようと思う者が罷免の投票をするので、特に右の様な理由を持たない者は総て(罷免した方がいいか悪いかわからない者でも)内閣が全責任を以てする選定に信頼して前記白票を投ずればいいのであり、又そうすべきものなのである。(若しそうでなく、わからない者が総て棄権する様なことになると、極く少数の者の偏見或は個人的憎悪等による罷免投票によつて適当な裁判官が罷免されるに至る虞があり、国家最高機関の一である最高裁判所が極めて少数者の意思によつて容易に破壊される危険が多分に存するのである)、これが国民審査制度の本質である。”



「一般大衆はお国のやること無闇に疑ったりしないで大人しく信任投票しとけば良いんじゃコラ」ってことなんだろうか。

これが最高裁判所の示す国民審査制度の本質なのか。まあ昭和27年の判例ではあるが、今でも最高裁の本心はこんなものなのかもしれない。

そんな状況のまま令和まで至ってしまった国民審査だが、でも、このままじゃあまりにももったいない。

最高裁判所の裁判官は、国民に選ばれた何百人もの国会議員たちが議論してつくった法律をたった15人で無効にしてしまえる、ある意味で日本最強の権力者。国民審査は、そんな最強権力者のありように国民が直接審判を下せる唯一のツール。活用しない手はない。

有権者の人たちはぜひ、自分なりに考えて行動してみていただきたい。


余談だが、沖縄県は国民審査「だけ」棄権する人が多いことで知られており、それが罷免率(有効票に占める罷免票(バツ)の割合)を押し上げている。

【参考】なぜ沖縄県民は国民審査を棄権するのか(明治大学政治経済学部 西川伸一)
http://www.nishikawashin-ichi.net/oral-reports/oralreports-36.pdf

よく分からないと白票を投じる人が多い自治体、よく分からないと棄権する人が多い自治体、さて、民意をより反映しているのはどちらだろうか。

 

 

【関連記事】実はこんなこともできちゃう!選挙と全然違う「国民審査」の不思議なルール
https://ameblo.jp/iodostarch-reaction/entry-12956430335.html

 

周知の必要なし?! なぜ国民審査の存在感が薄いのか
https://ameblo.jp/iodostarch-reaction/entry-12956436303.html

法務省ウェブサイトに「戸籍情報システム標準仕様書」なるものが掲載されていたので見てみた。

戸籍情報システム及び戸籍情報オンラインシステムの標準仕様書(法務省ウェブサイト)
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00013.html

戸籍情報システム標準仕様書【第5.0版】【PDF】
https://www.moj.go.jp/content/001415710.pdf


イマドキのハイテクシステムなら、近親婚なんて全自動でパパッとチェックしちゃえるのでは?

そんな淡い期待を抱きながら仕様書を見てみると…


あった。標準仕様書126ページ。



 

 

なんとなんと。

「近親婚ではありませんね。」という確認メッセージが出るとのこと!



…えっと。


要するに近親婚チェック、人力オンリーってことですか?


イマドキのハイテクシステム、な~んにもチェックしてくれないってことですか?



そんなトコになんか金かける必要なし!ということだろうか。

この国ではやはり、近親婚なんて「その程度の話」ということなんだろうか。

 

その10で、名古屋市の婚姻届受理事務における近親婚チェックがザルだった件について述べた。
日本有数の大都市、名古屋市が公式に認めたのであるから、全国の他の市区町村も推して知るべしだろう。

とはいえ、もうちょっといろんな自治体の見解も知りたいところである。
というわけで、名古屋市と同じ政令指定都市に聞いてみることにした。

2026年現在、政令指定都市は名古屋市含め全国に20ある。北は北海道から南は九州まで。
聞いてみた結果、やはり名古屋市同様ザルな自治体が多かったが、一方で気合の入り方には温度差もあった。
同じ近親婚カップルでも、どこの自治体に婚姻届を持ち込むかによって受理されたりされなかったりする、“自治体ガチャ”になってしまっていることが疑われる状況である。これはやはり法の下の平等に著しく反するのではないか。


質問文(全自治体共通)と自治体ごとの回答文を以下に掲載する。ぜひ読み比べてみていただきたい。
※なお、本記事執筆時点でいまだ回答がない自治体については、回答寄せられしだい追加掲載する。


【質問文】
今般、名古屋拘置所収容者が民法で禁止されている近親婚(元直系姻族間)にあたる婚姻届を名古屋市に提出し、正式に受理されていたと思われる事例が報道により明らかとなりました。
https://www.bengo4.com/c_1009/n_17234/
この件に関連し、一般論として名古屋市の婚姻届受理事務における近親婚チェックがどのように行われているのか、名古屋市役所スポーツ市民局住民課様に問い合わせ差し上げたところ、「婚姻届受理時の近親婚等の審査については、当事者の戸籍を確認して判断し特に疑わしい事情がない限りそのような関係はないものと推定して受理しています。」とのご回答をいただきました。
名古屋市と同じ政令指定都市である貴市におかれましては、婚姻届受理事務における近親婚チェックはどのように行われているのでしょうか。ご教示いただければ幸いです。
ご多忙のところ誠に恐縮ですが、何卒よろしくお願い申し上げます。

【回答】
・大阪市
(未回答)

・名古屋市
 その10参照

・京都市
婚姻届受領時の近親婚等の審査については、当事者の戸籍を確認のうえ、特段の疑義が生じた場合は法務局へ受理照会を行う等、適正に行っています。

・横浜市
婚姻届受理事務における近親婚チェックはどのように行われているのかについてですが、当事者の現在戸籍、従前戸籍又は関係資料等を確認のうえ審査しております。関係戸籍や資料等の範囲は事案ごとに異なりますが、民法や関係法令の規定に照らして、特段の疑義がなければ受理しております。

・神戸市
婚姻届を受理する際の近親婚の審査ですが、当事者の戸籍を確認して疑わしい事情がない場合は近親婚ではないと判断し、受理しています。

・北九州市
婚姻届における近親婚等の審査は、法令等に基づき当事者の戸籍等を確認のうえ、届書の受理を行っております。

・札幌市
婚姻届の審査にあたっては、届出人の戸籍を確認し、近親者間の婚姻に該当するか否かを確認いたします。その際、過去に婚姻や養子縁組等をしていた可能性がある場合には関連する戸籍も確認しております。

・川崎市
お問い合わせいただきました婚姻の届出の受理審査については、当事者の戸籍により、親の氏の確認や転籍などの戸籍移動がある場合などは、戸籍を遡って確認するなど近親婚でないことを確認の上受理しているところです。

・福岡市
婚姻届の受理にあたっては、法令等に基づき、当事者の戸籍を確認するなどの審査を行っております。

・広島市
婚姻届については、提出された届出書の記載内容及び当事者の戸籍等を確認の上、受否の判断をしております。

・仙台市    
本市では、婚姻届の受理にあたり、戸籍法等の関係法令に基づき、届書の記載事項と戸籍記録との照合を中心とした必要な審査を行っております。
その過程で、養子縁組等を行っている場合など近親婚の可能性があると判断した場合には、必要な事項の確認を行った上で受理しております。
今後も、適正かつ慎重な事務処理に努めてまいります。

・千葉市    
婚姻届を受理する際の近親婚等の確認につきましては、当事者双方の戸籍を精査したうえで判断しております。
特段、疑義を生じる事情が認められない場合には、そのような関係は存在しないものと推定し、受理いたしております。
今後とも、正確な事務の遂行に努めてまいります。

・さいたま市
さいたま市におきましては、婚姻届受理時の近親婚等を審査する際、従前戸籍についても確認するなど、慎重に確認を行っております。

・静岡市    
婚姻届受理時の審査については、名古屋市同様当事者の戸籍を確認し、特に疑わしい事情がない限り民法や戸籍法に定める要件を満たしているものとして、受理しています。
なお、当事者の戸籍については、当事者の現在の戸籍だけでなく、過去(従前や改正前)の戸籍も確認する場合があります。

・堺市
婚姻届受理時の近親婚の審査については、名古屋市様と同様に当事者の戸籍を確認して判断し、特に疑わしい事情が見受けられない場合には、そのようなものはないものと推定して受理決定をしています。

・新潟市
婚姻届受理時の近親婚等の審査については、名古屋市と同じく、当事者の戸籍を確認して判断し、特に疑わしい事情がない限りそのような関係はないものと推定して受理しています。

・浜松市
本市は、婚姻届受理審査において、事件本人(夫になる人および妻になる人)の戸籍を調査し、特段の疑義がない限り、近親婚などに該当しないものと推定して受理しています。

・岡山市    
最初に申し上げますと、名古屋市の回答とほぼ同じとなります。
近親婚は民法上の婚姻障害(該当すると婚姻できない条件)となりますので、原則的には関係する戸籍をすべて調査した上で受理不受理の決定をすべきではありますが、該当するケースは極めてまれであることから、特に疑義がないかぎり近親婚の調査のみを目的として詳細な調査は行っておりません。ただ、婚姻届に限らず届の受理に際しては戸籍記載に必要な事項の調査のため、当事者の戸籍をさかのぼって確認することから婚姻障害があれば(完璧にとは言えないかもしれませんが)発見は可能であると考えています。
なお、このような婚姻障害があることを役所側が見過ごして受理した場合、婚姻は成立しますが、民法744条に規定される「婚姻の取消し」の対象となります。

・相模原市
本市における婚姻届受理時の近親婚等の審査は、当事者の戸籍を確認して判断し、特に疑わしい事情がない限りそのような関係はないものと推定して受理しています。

・熊本市
(未回答)

 

 


 

その1の獄中近親婚事例について名古屋市役所に問い合わせしてみたわけだが、当事者のプライバシーを理由に回答を拒否されてしまった。
本件当事者の特殊性(自ら積極的に取材に応じている等)は関係ないとのこと。納得いかない話である。
それでは「一般論として」名古屋市の戸籍担当窓口の近親婚チェックはどうなっているのか?
またまた回答拒否かも、と思いながら聞いてみたところ、なんと丁寧な回答をいただいた。そのやりとりは以下のとおりである(令和7年12月10日名古屋市役所スポーツ市民局住民課あてメール問い合わせ、令和7年12月22日回答メール受理)。

【問い合わせ内容】
結局、名古屋市の婚姻届受理事務においては、近親婚に関するチェックは厳格には行われていないということでよろしいでしょうか。
民法で禁止されている近親婚にあたるかどうかの確認を厳格に行うためには、婚姻当事者だけでなく他の親族らの戸籍まで辿って細かく確認をしなければならないわけですが、そこまでは行われていないということでしょうか。ご教示いただければと思います。

【回答内容】
婚姻届受理時の近親婚等の審査については、当事者の戸籍を確認して判断し特に疑わしい事情がない限りそのような関係はないものと推定して受理しています。



「当事者の戸籍を確認して」
「特に疑わしい事情がない限り」
「そのような関係はないものと推定して受理」
 



 


ずいぶんユルいな!


これまで述べてきたとおり、民法上婚姻が禁止されている近親者の範囲はかなり広い。
当事者の戸籍を確認しただけでチェックできるのは実の親子やきょうだいくらいだろう。
婚姻が禁止されているそれ以外の近親関係、たとえば、おじ・おばと甥・姪や、祖父母と孫、(元)直系姻族や(元)養親子関係等についてはやはり、事実上ほぼノーチェックということだ。


結論。

自治体窓口の近親婚チェック、やっぱりザルだった。

日本有数の大都市、名古屋市が公式に認めたのである。全国の他の市区町村も推して知るべしだろう(逆に、住民全員が顔見知りみたいな超小規模自治体であればもしかしたら「三丁目の〇〇さん家は二丁目の△△さん家と親戚だから~」的なかんじで結果的に入念なチェックが行われているのかもしれないが、市町村合併がすすんだ令和ジャパンでは極例外的な話だろう)。

 


法律婚できない代わりに養子縁組している同性カップルは少なくないが、一方で「将来同性婚法制化された時に近親婚禁止規定に引っかかって婚姻できなくなったら困るから」と、養子縁組を使わず我慢している同性カップルも珍しくない。


婚姻とは異なる点が多々あるにせよ、養子縁組することでひとまず法律上の家族になることができ、さまざまな実益を得られるようになる。


そんな、今すぐ使える便利な制度を、将来のためにと我慢している人たちがいる。

 


それなのにこの体たらくはどうだ。


ずいぶんと国民をバカにした話ではないか。

 



 

その8で紹介した参議院法制局の論点整理の中で、特に意見が分かれそうなのが「未成年養子の場合にも婚姻を認めるべきか否か」というところだろう。

参議院法制局からは、たとえば以下のような見解があることをご教示いただいた。

「成年養子の場合には、縁組解消後に婚姻を制約する必要はないが、未成年養子の場合には、擬制的にせよ実親子関係と同じ法的関係におかれ、監護養育を通して親密な関係をもつので、縁組解消後でも「元実子」として扱い婚姻は制約されるべきである」(南方暁「婚姻法グループの改正提案―婚姻の成立―」『家族〈社会と法〉』第33号、103頁) 

一理あるとは思う。
しかし結論から言うと、当方としては「未成年養子の場合であっても婚姻を認めるべき」と考える。その主な理由は以下(1)-(4)のとおりである。

(1)未成年養子だからといって「監護養育を通して親密な関係」をもっているとは限らない/戸籍上赤の他人でも「監護養育を通して親密な関係」をもっているケースは多い
日本は養子縁組がかなりお手軽にできてしまう国であり、離縁も簡単なので、その実態はさまざまだ。養親子関係がごく短期間で終わるケースもある。また養親子間の年齢差に関する規定もないので、たとえば「17才の息子と20才の義母」というのもあり得る。未成年養子だったからといって、必ずしも「監護養育を通して親密な関係」をもっているとは限らないのだ。
一方で、戸籍上赤の他人でも「監護養育を通して親密な関係」をもっているケースは多い。たとえば里親などが挙げられるだろう。それなのに養親子関係に限って「監護養育を通して親密な関係」云々を理由に婚姻を禁止するという理屈には無理があるのではないか。

(2)児童性虐待については厳罰化がすすんでいる/婚姻を禁止すれば性虐待が減らせるとは考え難い
本件に関しては「未成年養子との婚姻を認めれば児童性虐待の助長につながるのではないか」といった懸念が示されることもある。
しかし、婚姻を禁止することで性虐待が減らせるのかというと、首を傾げざるを得ない。さらにいえば、そもそも児童性虐待の加害者は「親の恋人」など戸籍上赤の他人であることも多いわけで、養親子関係に限って虐待云々を理由に婚姻を禁止するという理屈には無理があるのではないか。
もちろん、児童性虐待は許されない。だからこそ昨今では監護者性交等罪の導入など厳罰化がすすんでいるところである。性虐待防止というならそういった方向が筋だろう。

(3)婚姻するのは成人後なので本人の意思に委ねるのが筋
そもそも、現代日本では児童婚は不可であり、婚姻するのは成人後の話である(児童婚解禁についてはとりあえずないという前提で話をすすめる)。子供時代の一時期の関係性を理由に、成人後の関係性までお国が生涯にわたり規制するというのははっきり言って余計なお世話ではないか。まして今や人生100年時代である。生涯婚姻禁止は無理がありすぎるのではないかと思う。成人であれば、基本的には本人の意思に委ねるのが筋だろう。一律に婚姻を禁止することが子のためになるとは言い難いのではないか。

(4)市区町村の戸籍担当窓口でチェックできないような規定を設けても意義に乏しい
そもそも、複雑で細かい婚姻禁止規定を設けたところで、市区町村の戸籍担当窓口でチェックできないなら結局は形骸化するだけであり、意義に乏しい話である。
多額の税金を費やして、戸籍システムを改修したり、全国の市区町村の戸籍担当職員を大幅増員したりすれば、チェック体制を構築することは可能かもしれないが、それは果たして、国民のためになる税金の使い方といえるのだろうか。正直疑問である。


なお余談だが、その5その6でも述べたとおり、昨今の同性婚法制化や自治体パートナーシップ制度導入を推進する運動の中では、未成年養子であっても婚姻やパートナーシップを認めるという主張が少なくない。そしてそれに対して反対の世論が盛り上がっているという風でもないので、やはり現代日本人の中では「血さえ繋がっていなければ婚姻OK」という価値観がメジャーになっているのではないかと思われる。

こういった価値観は、もちろん時代によってまた変わり得るものだろう。絶対の正解がないからこそ、その時々で、より良いあり方を模索していく必要があるのではないだろうか。

 

その7で、「元直系姻族間」「元養親子等間」の婚姻禁止規定は速やかに廃止すべきである、と、当方なりの考えを述べたところだが、もし実際にその方向性で民法改正するとなった場合、どのような課題が考えられるのだろうか。
このことについて、再び「諸派党構想・政治版」(参議院議員浜田聡事務所)を利用させていただき、参議院法制局に調査依頼してみた。事務所の方々にはまたしても大変丁寧にご対応いただいた。本当にありがたいことである。

さっそく調査依頼内容とその回答を紹介しよう。

【調査依頼内容】
いわゆる近親婚禁止規定は民法第734条・735条・736条にて定められており、血縁のある間柄のみならず、養親子等間や直系姻族間といった非血縁の近親者同士の婚姻についても禁止対象とされています。しかし、血縁上は赤の他人である者同士の婚姻を法で禁じることについては批判もあります。
そこで、以下(1)(2)それぞれの場合において、「実現のためには民法のどの条文をどのように改正すればよいか」「民法以外の関係法令であわせ改正が必要となるものはあるか」調査の上回答願います。
(1)離縁等により親族関係・姻族関係が終了した場合(元養親子等間、元直系姻族間)に限り婚姻可能とする場合
(2)離縁等しているか否かに関係なく、非血縁の近親者同士の婚姻を全面的に可能とする場合

【参議院法制局回答】
1.改正の趣旨等について 
○ 現行法において近親婚が禁止されている趣旨について以下のように説明されていることも踏まえつつ、メールに記載の(1)や(2)のように一定の範囲で禁止を緩和する趣旨・基本的な考え方について、どのように整理するか。 
→ 民法第734条、第735条及び第736 条において近親婚が禁止されている趣旨は、「優生学的な配慮と倫理観念に基づくものである」(二宮周平『新注釈民法(17)親族(1)』(有斐閣、平成29年)118頁)とされている。 
 このうち、第735条が直系姻族間及びかつて直系姻族であった者の間の婚姻を禁止している趣旨は、「直系姻族が親族関係上も自己の直系血族と似た関係にあると考えられているため、それらの者との婚姻は親子秩序を乱し、倫理観念に反すると判断されたからである」(同122頁)とされており、第 736条が養子縁組が離縁によって終了した後も養親子等の間の婚姻を禁止している趣旨についても、「親子秩序の維持」(同124頁)とされている。 
 
2.「実現のためには民法のどの条文をどのように改正すればよいか」について 
<(1)の方向性の場合> 
○ 基本的には民法第 735 条後段及び第 736 条の改正が想定されるが、例えば以下の点のように、具体的にどのような改正が必要となるかは、1.の改正の趣旨等や議員の御政策の詳細によって変わり得る。 
・ 「離縁等により〔非血縁の〕親族関係・婚姻関係が終了した場合」は、およそ全て「婚姻可能とする」のかどうか。例えば下記のような議論(※)も見受けられるところ、「婚姻可能とする」具体的な範囲等について、どのように考えるか。 
※ 「成年養子の場合には、縁組解消後に婚姻を制約する必要はないが、未成年養子の場合には、擬制的にせよ実親子関係と同じ法的関係におかれ、監護養育を通して親密な関係をもつので、縁組解消後でも「元実子」として扱い婚姻は制約されるべきである」(南方暁「婚姻法グループの改正提案―婚姻の成立―」『家族〈社会と法〉』第33号、103頁) 
・ 第 734 条第2項は、特別養子縁組に伴い従前の親族関係が終了した場合に、その従前の親族関係につきなお婚姻を禁止する趣旨の規定であるが、「特別養子縁組が転縁組〔※〕であった場合、…特別養子と前養父母・その血族との婚姻は、血縁関係が存在しないにもかかわらず、禁止されることになる」とされている(二宮・前掲119頁)。この点、どのように考えるか。 
※ 一旦養子となった者が更に別の養親と養子縁組をすること。 
 
<(2)の方向性の場合> 
○ 基本的には民法第734条第1項ただし書、第735条及び第736条の改正が想定されるが、例えば以下の点のように、具体的にどのような改正が必要となるかは、1.の改正の趣旨等や議員の御政策の詳細によって変わり得る。 
・ 「非血縁の近親者同士の婚姻」は、およそ全て可能とするのかどうか。例えば、特別養子縁組については、「乳幼児を円満な安定した家庭において実子同様に監護養育することを目的とする」制度だと説明されているが(中川善之助=山畠正男『新版注釈民法(24)親族(4)』(有斐閣、平成6年)601頁)、この点について、どのように考えるか。 
・ 養親子間で婚姻した場合には養親子関係が終了すると整理することになるか。 
→ 終了すると整理する場合、その制度設計によっては、終了のための規定を新たに設ける等の必要が生じ得る。 
 
3.「民法以外の関係法令であわせ改正が必要となるものはあるか」について 
○ 上記の中心的な規定に関する改正の在り方が定まらないと他の法律への影響は検討し難いため、定まった後に改めて精査することとなるか。



参議院法制局の論点整理を見ると、実際に民法改正するとなった場合、細かい制度設計をどうするか等、検討しなければならない事柄がさまざまあることが分かる。
同性婚や夫婦別姓に比べればだいぶ簡単な話ではあるのだろうが、それでもこれだけのややこしさがあるということ。法律を変えるというのは大変な話なのである。
しかし本件は全国民の人生に関わり得ることだ。大変だからといっていつまでも放置していて良い話ではないだろう。やはり、国民ひとりひとりが自分なりに考えていくことが大切なのだと思う。

なお、上記の論点整理の中で、特に意見が分かれそうなのが「未成年養子の場合にも婚姻を認めるべきか否か」というところだろう。個人的には「認めるべき」と考える。その理由についてはその9で述べることとしたい。