虎は始め自分が浮いた瞬間、少し驚いたようだが、すぐにヘソ天の姿勢に戻った。そして首を曲げてぐいんと体をそらせている。

 

「いいな。僕も仲間に入れてよ。」タカシはそう言ってアルテミス達に近づいた。

「いいわよ、もちろん。この子達可愛いわ。ずっとここで幸せに暮らすのよ。」とアルテミス。

「来た時よりずっと元気そうだね。サクラも足が良くなってない?」とタカシ。

「そうね。治しているの。治してっていうのは大げさかしら、この子の治癒力を上げているのよ。」とアルテミス。サクラというのは虎の名前だ。怪我で足が少し不自由になっていた。

 

今の医学を使えば治せたのだが、そんなコストをかけるのを嫌がった園長は、そのまま放置したのだ。ひどい状態のまま動物たちを放置した園長をアルテミスは少し苦しめた。数分心臓に圧力を加えただけだが。園長は声も上げられず、蹲り数分悶絶した。

 

「治療の設備が整ったらオリオンに直してもらうわ。私の力だけでは完全には治せないし。」とアルテミス。話をしながらタカシも虎のお腹を撫でた。気持ち良いのか虎は浮かんだまま喉を鳴らしている。

 

「あと3時間ほどで木星艦隊の予想空域に到着します。観測では確認できる戦艦の総数は105隻。誤差プラスマイナス6。更に近づけば精度は上がります。」とオリオンは言った。

「ちゃんと木星空域にいてくれて良かった。人間は単なる知識だけでは動かないものだね。この船の速度を知っている筈なんだが。」とハッデンは言った。