八重むぐら 茂れる宿の 寂しきに
人こそ見えね 秋は来にけり
幾重にもつる草が生い茂る、この荒廃した寂しい宿に、人はもう訪れないけれど、秋はやって来るのだなあ。
栄華をきわめた河原左大臣の豪邸も、今ではすっかり寂れた廃屋のようになっています。
けれど、そんなところにも季節は巡ってきます。
そんな人々の営みと毎年巡ってくる四季との関係を、恵慶法師、「人こそ見えね」と「秋は来にけり」を対にすることで、「人は訪れませんが、秋はやってくるのですね」と詠んでいます。
しかし実際は河原院に寂を好む人々が集っているわけですから、さらに深読みすれば「人の世は栄枯盛衰を繰り返すものです。同じように季節も変わらず巡ります」ということになります。
つまりこの歌には、自然の摂理そのものが詠み込まれているのです。
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