吹くからに  秋の草木の しをるれば

      むべ山風を  あらしといふらむ

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秋風が吹き、草木がしおれる季節となりました。
なるほど「山風」と書いて嵐という字になりますな。

実はこの歌は、「言ってはならないことを、飄々と、あっさり言ってのけた歌」なのです。
そもそもこの歌には不思議なところがあります。「秋に樹木の葉を散らし、草花を枯らす風が山から吹いてくる」から「嵐」だというのですが、秋といえば時期的に台風のシーズンです。そして台風は、山からではなく海から、つまり南からやって来ます。では、「山から来る嵐」というのは何を指しているのでしょうか。

そうした仏教勢力の過激分子、もしくは不逞仏教勢力とでもいうべき人たちについて、文屋康秀は「山から吹く風は嵐ですな」と実に軽妙にシャレてみせながら、返す刀で「あいつらは草木を枯らす」と、しらっと言ってのけているわけです。



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『さて、次の22番歌は、文屋康秀(ふんやのやすひで)です。
文屋康秀は、小野小町の彼氏としても有名な人です。
彼は三河に赴任が決まったときに、小町に、一緒に三河に行かないかと誘っています。

そのときに小町が答えて詠んだ歌は、

 わびぬれば 身を浮草の 根を絶えて 
 誘う水あらば いなむとぞ思ふ

というのです。
浮き草のように私の根を断ち切ってあなたが誘い流してくれるなら、私はあなたについて行きますわ、つまり小町は康秀に、「私、あなたに付いていきます」と答えているのです。

こう返された文屋康秀は、結局、小町を連れず、単身で三河に赴任しました。
小町は、「一緒に行く」と言ってくれたのです。
康秀は、涙が出るほど嬉しかったにちがいありません。

けれど、なんでも揃っている都会暮らしと異なり、草深い田舎の三河の暮らしは、愛する小町にとって、きっと難儀な暮らしになる。
康秀は、三河に行ったときの小町の難儀を思い、黙って三河に旅立ちました。いい男じゃないですか。』

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