僕には、数ヶ月前、恋人ができた。とても幸せだ。

しかし、最近、悩みがある。

一緒にしたいことがなかなか言えないことだ。

ちょっとしたことでも言い出せない。

普通ならなんとなく言えることもだ。

 

言おうとすると、胸のあたりがキュッと締め付けられ、

声に出せなくなる。ひどいときには吐き気さえ覚える。

 

 

物心ついたときには、父はすでに双極性障害だったが、

そんなことつゆ知らず、3歳の僕は甘えに行っていた。

遊んで。あれやってみたい。これやってみたい。って。

 

父は息子に甘く、大体のことは叶えてあげようとしてくれた。

しかし、操(元気が出すぎてヒャッハーな状態)のときには

張り切り過ぎて必要以上の装備を整えたり、

やるときには完璧まで追求するスタイルで、

「ちょっとやってみたい」という子供の好奇心とは合わなかった。

準備にお金と時間を費やしてくれたが、

やってみたかったのが性に合わなかったというと、

「こんなにお金かけたのに!お前がやりたいからやってやったのに!」

と怒鳴られた。

 

逆に鬱のときには、やってくれるにはやってくれるが、

父もつらい状態で、終始イライラしながら付き合ってくれた。

けれども最後には、やっぱり怒鳴られた。

 

そんなふうに言われ続けたから、僕はやりたいことを言うのをやめた。

やめざるを得なかった。父を傷つけたくなかった。迷惑かけたくなかった。

 

お金がないのも事実なので、そのことも考えた。

何をするにもお金がかかるから。

稼いでくれている母にも迷惑かけたくなかった。

 

僕が我慢すれば、全部解決するって思ってた。

 

 

喜怒哀楽の怒と哀は、あまり出さないようにした。

 

父の行動や、理不尽な怒鳴りには何度も苛ついた。

けど、病気のせいだって。父は悪くないって。

僕がイライラしちゃいけないって。

苛つくたびに心の奥底に怒りの情を押し込んだ。

 

悲しくなることもあった。

顔に出すと、父は、俺のせいで悲しんでると思って、

自分を責めて、責めて、責めていた。

そのことに気づいたときから、哀しみも見せちゃいけないって

思った、思ってしまった。

 

そんな生活を10年もしていたら、喜びや楽しさの表現の仕方さえ、

わかんなくなった。

 

そして、いつからか、

わがままを言おうとすると体が拒絶反応を起こすようになっていた。

 

 

 

今、僕は、彼女とやりたいことがたくさんある。

たくさん、わがまま言って、甘えたい。

言いたい。言いたい。言いたい。言いたい。

一緒にあれやろって。一緒にこれ食べよって。

 

けど、言えない。胸が痛い。吐き気がする。

辛い。苦しい。

どうして言えないの?

ちょっとの言葉が。10秒足らずの言葉が。