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天へと続く

変わらずに沈む夕日がある。
変わらずに上る朝日がある。

どちらの太陽だと思うかは自分次第だ。

海[3]

波音だけが聞こえる。このまま波にさらわれそうな錯覚に襲われた。

さらわれたい。

私を洗い流して。淋しい孤独。泡になって消えてしまうのよ。消えてしまいたい。
そしてまた生まれ変わりたい。願わくばあなたのそばに咲く花に。あなたが見上げた空を跳ぶ鳥に。

とおくで子供の声がして私は我にかえった。


思い出をすてに来たはずなのに…。
日が傾いて立ち上がった影も少しのびた。
私は砂をはらうと、貝殻を拾いながら思い出も一緒に大切に拾い集めてまた懐におさめた。

海[2]

駅の改札を出ると正面に海に通じる道がある。見通しがよく、道の先には青い空のみが見える。山育ちのわたしにとっちゃ憧れの風景だ。一番向こうにたどり着いたら何があるのか、もちろん海があるんだけど、神聖で何があるのか分かっていても少しの不安と期待に走っていきたくなるような道。

道沿いに佇む住宅は閑散としていて、あの頃のままだった。
魚屋のおじさんが庭に水をまいている。光が反射し眩しくて、ちょっとだけ潮くさい。



あの時の海とは少し違っていた。そりゃ4年も経てば変わるよね。でも海辺のパスタ屋はまだそこにあった。少しだけホッとした。
あたしがタラコでアイツがカルボナーラ。分け合ってたべたっけ。


しばらく浜を歩いたら、靴に砂が入った。パンプスなのに衝動的にここにきちゃうあたりがあたしらしいとアイツならいうだろう。腰を下ろして波際に目をやった。

薄い雲が遠くの空に申し訳程度にでているだけの一面に広がった青い空。

キラキラする水面の中に一羽の鳥がテトラポットに留まる群れから離れて浮かんでいた。

不意に淋しさがつけあげた。理由は知らない。

零れ落ちそうになる感情の塊を押さえ込もうとして寝転がる。
そして眩しさに目を綴じた。