バンドでピアノを弾くということは、少なからずピアニストという称号を与えられているということと考えていいのだろうか?


私は「ピアニスト」という言葉を少し敬遠しがちだ。


私の中で「ピアニスト」という言葉はプロのプレイヤーを想像してしまう。

リストやラフマニノフ、スクリャービンなどの難度の高いクラシックを弾きこなせて、ピアノを痛めつけてるかのように強い力をこめてフォルテッシモを表現する。

「高速パッセージなんて朝飯前」

なんて言ってそうな人が真のピアニストなんじゃないかと思っている。



高校2年生の時、卒業式での伴奏を音楽の先生から頼まれた。
ピアノの授業も取っていたため、そこでのピアノの先生からのご指名と言ったところである。

弾くのは蛍の光と校歌だけで、重くはない任務ではあった。

卒業式の練習が始まる。
体育館の冷えたピアノの前に座る。
卒業式の取り仕切る先生が全校生徒の前で「今回のピアニストさんは〜」と私を紹介する。

正直、プロでもないし、比較的簡単な2曲を弾くだけの人間をピアニストと呼ばれることに少し引っかかりを感じた。

もちろんピアニストに選んでもらった時は、自分の実力が少しでも認められたように感じたし、練習が終わってから教室に戻ると友達から「上手かったよ〜!!」と声もかけられて変な優越感に襲われた。



ソナチネなら軽く弾くことはできる。

でも、ソナタはろくに弾けない。

難度がDぐらいならギリギリ弾ける。


私の実力ってこんなもんだと思う。

YouTubeを開けば5歳が既にショパンを弾きこなしている世界。

私が5歳の時はエレクトーンとピアノを使ったレッスンを受けていたから、そもそもレッスン形態も違っていた。

それでも、そんな天才の「ピアニスト」を見てるといかに自分が無力なのかを思い知らされる。

音楽科を目指して特訓してる時も、昔から聴音を苦手として絶対音感が未だに身に付いていない自分に嫌気がさした。



「ピアノ科に入れたとしても、自分より上手い人しか周りにいない。自分が最低レベルになる。」



それから音楽科への進学を諦めた。

正直、ピアノ科だけだと私がやりたい音楽全てをできるわけではなかったというのもある。

それでも、時々「音楽科に行きたいな」って思う時もある。



バンドに加入してから、「私の出すピアノの音がバンドサウンドのひとつになるんだ」と思うことがある。

吹奏楽でもピアノを担当したことがあるが、その時とは全く別物なのだ。





これからどんな音が作れるのだろうか。



 

このバンドでは私がピアニストなのだ。