下に添付したのは同時通訳の現場の写真です。

 

先月は1年以上ぶりの出張かつ対面逐次通訳*の案件でイギリス北部の美しい都市ヨークに行ってきましたが、先日は1年4か月ぶりの「現場で本物の通訳ブースに入って行う同時通訳」に行って参りました。上の写真です。だいたい電話ボックスくらいの仮設の部屋ですが、通常同時通訳は二人以上の通訳者が15分くらいで交代しながら行いますので、コロナ以前の通訳ブースは二人用のものが殆どでした。二人用ですので、幅が倍になります。ですが、今回はコロナ対策で一人用のブースが使われました。机の上に置いてある器具(コンソールと呼びます)にイヤフォンを指して会議場からの音声を聞きながら、付いているマイクに向かって同時に訳していきます。*同時通訳=話者が話すのを(通常はヘッドフォンで)聴きながら、ほぼ同時に訳す。逐次通訳=話者が話している間は通訳者はメモをとり、数文後に話者が区切った時点でメモを見ながら訳す。

 

この会議はG7に関連する閣僚級会議で、国際機関の長なども(遠隔で)参加した大掛かりなものでした。裏方スタッフの数もびっくりするほど多かったです。ちなみに、裏方スタッフ用のランチビュッフェを通訳者も頂くことができました。ビーフのミートボールとサフランライスが非常においしゅうございました(イギリスにしては珍しく!)。

 

とにかく、ここ1年以上も、下の写真にあるように、オンライン(Zoomなど)でつながった会議を自宅にいながら遠隔通訳し続けてきましたので、実際の現場の本物のブースの中で通訳ができたとことは嬉しい出来事でした。少しずつコロナ禍も終息に近づいているのかもしれない!とわずかながらも希望が湧くような経験でした。

 

さて、下の写真にある自宅通訳現場の説明を少しさせて頂きます。私は通常、PC2台、大スクリーン1台、モバイルデバイス2台を使って遠隔同時通訳を行います。PCのうち一台は、遠隔同時通訳専用に買ったものです。自分のPCがサクサク動かないと、会議中の共有画面がフリーズしたりしてしまいます。大きい画面は、同時通訳用PCに映る会議の画面共有が小さすぎて見えない場合に拡大するか、もう一台の日常使いのPCで開いている会議資料を拡大して見るためです(老が、、もとい遠視かつ近視なもので、トホホ(;´д`))。

 

Zoomを使った会議の同時通訳をする場合は、タブレットも使います(メインPCとは別のアカウントから同じ会議に入る)。これは、自分と組んでいるパートナー通訳者の声や、別の言語の通訳者が例えばスペイン語の発言を英語に訳してくれるときにその英語通訳を聴いて日本語に訳すためです(リレーと言います)。ですから会議そのものはメインのPCで聴きつつ、発言者が英語以外の言語で話し始めたら、その瞬間にタブレット上のZoomの通訳機能を操作して多言語を英語に訳してくれている通訳者の声を聴き始めます。

 

「同時通訳は通常二人以上の通訳者が15分程度ごとに交代して行う」と上に書きました。しかしパートナー通訳者ももちろん本人の自宅にいますので、本物の二人用ブースに並んで座っているときと違って、交代の合図を出すことができません。そのため、交代の合図をするためにさらにスマホでメッセンジャーアプリを使ってお互いに「そろそろ交代です」などのメッセージを送り合います。さらにZoom画面上でパートナーのマイクアイコンのミュート/アンミュート状態を確認しつつ、できるだけ通訳者交代の際に二人の声が重なったり、ギャップができてしまったりしないようにします。とはいっても実際には、交代の合図をもらって自分が通訳をし始めマイクもアンミュートにしているのに、パートナーの画面では私のマイクアイコンがミュートになったままのためパートナーも訳し続け、二人の声が重なってしまうことも稀にはあります。Zoomは決して完ぺきではありません。

 

最後に声を大にして言わせてください!!私がいつも驚くのは、これだけウェブ会議全盛のこの時代に、まだPC内臓のマイクに頼ってウェブ会議に参加する方がいらっしゃることです。PC内臓のマイクで拾った音声は質が悪く、聴きながら同時に訳す同時通訳が非常にやりにくくなります。受け身でただ聴いていて「聞こえる」と思える音質と、同時通訳ができるレベルの音質は違うのです。通訳が入るウェブ会議に参加する際は、安いものでも結構ですので、最低でもマイク付きのイヤフォンをお使いください。

 

以上、今日は長文かつアニメに関係ない内容で恐縮でしたが、おそらく日本人の多くの方は通訳者がどのように仕事をしているのかご存じないのではと思いましたので、簡単に紹介させていただきました。ここまで読んでくださってありがとうございました。