「自分の力の上限をもう悟ったっていうのか??
技も体も精神も、何ひとつ出来上がっていないのに?
自分より優れた何かを持っている人間は、生まれた時点で自分とは違い、それを覆す事などどんな努力・工夫・仲間を持ってしても不可能だと嘆くのは、全ての正しい努力を尽くしてからで遅くない。
ただ、自分の力はこんなものではない”と信じて只管(ひたすら)まっすぐに道を進んで行く事は、”自分は天才とは違うから”と嘆きあきらめることより辛く苦しい道であるかもしれないけど。」
英語版漫画単行本:
“What, are you saying you know what the limits of your abilities are already?
Even though you aren’t yet finished growing physically or mentally? Even though you haven’t mastered all the skills you can master?
If you going to complain that someone born with more talent than you…., will always be better than you…..no matter how hard you work, how many tricks you learn and how many great teammates you have……do that AFTER you have given everything the very best effort you have.
But remember….believing this isn't all you've got, and sticking to that belief…..will be a far longer and far tougher road to follow……than simply throwing your hands up and declaring that you aren't gifted so it doesn't matter.”
Crunchyroll 字幕:
“
“Have you found the limits of your abilities?
Even though your techniques, body, and mentality aren’t complete?
People who are naturally better than you have been different from you ever since they were born. It’s impossible to turn that around, no matter how hard you work, how well you strategize, or who your teammates are.
You can complain about that once you’ve actually done everything you possibly can.
Rather than despairing and giving up because you're not a genius, believe that your strength is not limited to this, and continue on the path straight ahead of you…. It may be harsh to say so, but.*”
北川第一中の監督さん、お顔は見えませんが、相当の人格者とお見受けしました。元アルゼンチンチームの名セッターホセ・ブランコ監督(現在Vリーグ所属)の言葉でした!そしてこの時の及川は高3.つまり、春高予選の直前に監督に相談に行っていたのですね。私の勘違いでした。及川は小学生の時に当時のブランコ選手のベテランとしての手腕を見て感動し、将来はこの人に師事しようと決めます。
そして中3のそして高3の今、尊敬するブランコ監督の言葉に目を醒まされます。つまり、監督の語る辛い方の道を選んで、才能を開花させセンスを磨く努力をしていこうと決心したのです。先日アップした及川の心の中の言葉「才能は開花させるもの~」が出てくるのは実はこの監督の言葉が出てくるシーンと同じです。監督の言葉は及川の回想として出てきます。「俺は影山のように生まれつきの天才ではないかもしれないけど、努力してここまできた」という意地を見せるシーンで、ファン投票でも常に上位に食い込むハイキュー‼ 有数の名シーンとなっています。私も何度このシーンを繰り返し再生したことか。私の中ではハイキュー名場面ベスト2のうちの1つです。当ブログの壁紙もこのシーンのものです。
ちなみに、下にリンクが添付してある映像をご覧になる方は、及川がコート外のパイプ椅子に激突して転び、起き上がるときに下のビニールマットに滑ってから立ち上がる点と、コートに戻っていくときの真剣な表情(特に彼の眼)にご注目下さい(上の画像)。このように実にリアルに細かいところも見逃さない作者の観察力と、登場人物の心の中を顔の表情で完璧に表現できる描写力も、私にとってのハイキュー!! の大きな魅力です。アニメーターさんたちの作画力(というのでしょうか?)も素晴らしいです。
さて、上記2例を比べると、圧倒的に単行本の訳の方がよいです。私が特に感動した赤字の部分の意味がとても良く訳されています。「只管まっすぐに道を進んで行く事」の箇所は、通訳中だったらちょっと詰まってしまうかもしれません。漫画の方は "sticking to that belief" という意訳になっています。原文と同じ単語は全く使われていませんが、その意味を簡潔にしっかり伝えているよい訳だと思います。このように文字の奴隷にならずに、その文の意図することを3Dで脳内に描いて訳するとインパクトのある訳文になります。この "sticking to that belief" という言い回しは他の場面でもいろいろ使えそうです。
反対に字幕の方は、原文を完全に理解しないまま急いで直訳したと思われる読みにくい文章になっています。発話者の意図の空気も出ていませんし、誤訳されている部分もあります。*オンラインで探した別の字幕では、他の部分は上記とほぼ同じ英訳でしたが、下線部が ”it may be a harsh road, but…”となっていました。もちろんその方が正しい訳です。とはいえ、やはりこの箇所を "harsh”一言で片づけてしまっては監督の言葉の重みが生かされません。また、字幕の訳文では、「~と信じなさい」となっていますが、原文ではそうは言っていません。原文では「~と信じることはXXすることよりもずっと辛く厳しい道ではあるけれど」と言っているのですから、これも誤訳の範囲に入ると思います。 また、この訳し方だと文節の順序(辛い道とあきらめる道)が逆になりますので、画面から聞こえる文と字幕が一致しなくなります。字幕を読んでいる人の大半は原音は聞いていないとしても。
ですから、字幕の訳文をできるだけ生かしたまま手直しするとしたら、"Believing that your strength is not limited to this and continuing on the path straight ahead of you, rather than desparing and giving up because you're not a genius, would be a lot harder way to go." という感じになるかもしれません。
https://www.youtube.com/watch?v=H6DQePdp7Po
漫画単行本第17巻 アニメ2期24話

