V2G(Vehicle-to-Grid)技術とは、車両と電力網の間で電力を双方向に制御・供給できるシステムを指す。電力は、充電の際にグリッドから車両へ流れるだけでなく、必要に応じて車両からグリッドへも逆流することが可能である。多くの時間、電気自動車(EV)は稼働しておらず、このアイドル時間中に車両バッテリーをグリッドへの電力供給源として活用できる点がV2Gの特徴である。

市場の推進要因
電気自動車普及の急増
世界的なEV保有台数の急増がV2G市場の最大の成長要因である。2025年までに2,500万台を超えるEVが走行すると予測されており、膨大な分散型エネルギー貯蔵リソースが形成されつつある。この資産基盤の拡大により、V2Gサービスは電力網の重要かつ拡張可能な要素として発展し、電力会社がEVバッテリーを用いて電力需給のバランスをとることが可能になる。

電力網の近代化と脱炭素化政策
各国政府および電力会社は、再生可能エネルギーの導入と送配電網の強靭化を目指してグリッド近代化を推進している。V2G技術は太陽光・風力発電の変動性を補う有力な解決策として注目されており、特に欧州連合(EU)や北米では、支援政策や補助金、法的義務化によってパイロット事業や商用導入が加速している。

また、周波数調整やピークカットといった即応型サービスを提供できる能力がV2Gを電力系統にとって魅力的な資産にしている。さらに、企業の脱炭素化への取り組みが進む中、大規模EVフリートを保有する企業は、V2G技術を活用して自社のカーボンフットプリントを削減し、電力会社にエネルギーやグリッドサービスを販売することで新たな収益源を得ており、経済的な成長要素となっている。

市場機会
ユーティリティ規模のグリッドサービス
V2G市場最大の機会は、電力網への補助サービス提供にある。EVフリートを集約して「仮想発電所(Virtual Power Plant:VPP)」として運用すれば、周波数調整、電圧維持、予備力提供などのサービスを提供できる。これらのサービス市場は巨大であり、数十億ドル規模の収益を生み出す可能性を持つと同時に、従来の電力インフラ投資を削減する効果も期待できる。

商用およびフリート車両への応用
バス、配送車、自治体車両などの商用フリートは、V2G技術の初期導入に最も適した分野である。これらの車両は運行スケジュールが予測可能であり、大容量バッテリーを備えているため、エネルギーの貯蔵・放電を計画的に行うことができる。フリート運営者は、エネルギーコストの削減と新たな収益創出を同時に実現し、EV投資の回収期間を短縮できる。

レジリエンスおよびバックアップ電源
V2G技術はエネルギーのレジリエンス向上にも寄与する。自然災害や送電網障害による停電時に、EVは家庭、事業所、重要インフラのモバイル電源として機能する。この応用分野は注目を集めており、V2Gは単なる交通手段や電力供給を超えた付加価値を消費者と地域社会にもたらしている。

主要Vehicle-To-Grid(V2G)企業
NUVVE
Enel Energia
The Mobility House
China State Grid
Fermata Energy
E.ON
ActewAGL
KEPCO
EDF Energy
ABB
Tokyo Electric Power