観戦記 井岡一翔vsスタンプ・キャットニワット | ボクシング独我論~最高の技術と,戦術眼と,知識を,君に~

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試合結果:井岡7回TKO勝利

 

 

先ずはスタンプについて。ペース配分などまるで考えないクレイジーな試合運びを見せた過去の試合とは異なり意外なほど静かだった初回。

実質の初打の左ボディ、2打目の一翔の左右に合わせた左ボディカウンターは試合を通じて多用したパンチで特に印象的だった。2回に奪ったダウンは後者の左ボディカウンターから右スウィングに繋いだもので、完全に狙い打ち


この左、次打の右をセットするための布石なのは見ての通り。しかし前者はインサイドへのステップ伴わず、上体のタメを作らず並進から打ち込み後者はタイミングもパンチの選び方も強引過ぎるほど。ちょいとボクシングをかじった者なら分かるだろうがリスク度外視、とまでは言わないがこの選手の価値観がイカれてる普通のボクサーとは違うのは確か。

 

左ボディでアウトサイドへ進路を開き右クロス、一翔の動き出しに応じて左回りからの左フック、ジャブを捨てボディを打たせての右カウンターと要所要所で2打目、3打目から逆算してポジションを取り、相手の重心に合わせてパワーハンドの最適なパンチを配分。決して世間で言われているような若さや勢いだけのボクサーではなくそのカウンター、ワイルドな攻勢はしっかりとした基礎に裏打ちされているのは明らかだ。

 

対角線のパンチをアディクティブに被せ打ちする度量と大胆さで一翔と日本のファンを驚かしたスタンプだったが果たしてこのボクシングをしっかり理解できた者がどれ程いたか?本当にハイレベルな勝負だった。

 

 

最後に一翔。しっかり構え、しっかり打ち、しっかり守り、ポジショニングも支配的。これ程パンチの交換に長けた日本人選手は記憶にない。ララ戦は微妙な出来だったがvsレベコⅡ、この試合と試合ごとにしっかり力を付けていると思う。有効打を食った後の素早い反撃、揉み合いの中での対処、苦しい中でも打って止める、打ち勝とうというボクシングは本当に見違える程逞しく感じたよ。