国語と読書 | 中学受験入試標準問題集 今日の1問

中学受験入試標準問題集 今日の1問

標準的な中学入試問題の解法について取り扱います

国語の担当をやっていると、うちの子は本読まなくて…というお話をよく伺います。


確かに、国語できる子に本好きは少なくありません。


しかしながら、本好きな子で国語の成績が芳しくないというケースも、本読まないけど国語は成績が良いというのも珍しくありません。


読書は、様々な世界を擬似体験できる場を与え、自分の世界を広げてくれる素晴らしいものです。本が好きな子はそこに魅力を感じてたくさんの本を読みます。しかし、受験国語で問われるのは、自分の世界が広いかどうかではなく、文章を正確に読み取ることができているかどうか、つまり読解力です。


擬似体験のための読書はどうしても自分がお話に入っていって、感情を揺さぶられながら読む、主観的な読み方になります。一方で読解力とは、自分の感情はシャットアウトして読む、客観的な読み方をする力を指すものです。


読書体験そのものは、心情語なども含めて語彙を豊かにする、読み取りのスピードを早くするという点では受験への反映が期待できるかもしれません。しかしながら、受験に必要な読解力の形成にはあまり役には立たないでしょう。そりゃあ、人間としての幅を広げるためには素晴らしい体験になるものではありますし、読書アレルギーで文を読まないというふうになるよりは、文は読めるくらいの方が今後のためには良いのですが。


なので、私は生徒に積極的には読書を薦めません。好きなものを好きなように読んで、言葉と読む速さが身につけば儲けものくらいに考えています。


蛇足ですが、言葉や読む速さのために読むものはなんでもいいと思います。ストーリーがちゃんとしているものなら、漫画だっていいでしょう。逆に中学入試で出される類いのものは、本来、12歳が読んで共感し、わかるというものがあまりないので、お薦めしません。あれらは、10代後半にわかり始めるものです。よく問題文に惚れ込んでしまう話は聞きますが、あれはわからんものに触れたことへの刺激からです。算数の超難問を楽しむという感覚に似たものです。


本人が背伸びしてみたいのなら、また気持ちでわからんものを読むのがストレスにならないのなら、読んでみるのもまあ悪くはないですが、無理矢理読ませるのは筋が違います。

そもそも12歳の感情で捉えにくいものであるからこそ、論理性が問われる選抜試験の題材になるのです。


一応、普段の読書を読解力に結びつける方法はなくもないですが、その話はまたいずれ。