本日は、違憲立法審査権について取り上げます。
中学入試は厳しいもので、ただ、違憲立法審査権というものがあるという理解だけでは許してくれません。自分の理解がどれほどのものか、確かめる意味で取り組んでみてください。余談ですが、エについては学説上、対立があったりします。問題に出すには微妙なものかもしれません。
問題
違憲立法審査権に関して述べた次のア~エの文のうち、正しいものを1つ選び、記号で答えなさい。
ア. |
国会に置かれる弾劾裁判所は,違憲が疑われる法律に対して この権限を行使することができる。 |
イ. |
司法制度改革により,最高裁判所だけがこの権限を独占して 行使できるようになった。 |
ウ. |
違憲審査の申し立ては,国会で審議中の法律案に対しては, 行うことができない。 |
エ. |
違憲審査の結果,最高裁判所が違憲と判断した法律は, ただちにその効力を失う。 |
解説
アについて
弾劾裁判所は、裁判官を罷免するか否かを審査する機関で、国会に設置されます。裁判官の罷免については、独立して職務を行い、時に国家権力とも対峙する裁判官の職務の性質上、簡単には行わず、国会を通して慎重に審査することになります。
イについて
司法制度改革とは、2001年の司法制度改革推進法の成立を機として、裁判手続きの充実、迅速化、法律家の増員と養成課程の見直し、国民の刑事裁判への参加を目的として様々な新制度を設けたことをいいます。具体的には、法科大学院の設置や裁判員制度の開始などがあたります。
最高裁判所は、こうした改革以前、設置された時からすでに違憲立法審査権を有しています。なお、違憲立法審査権については、最高裁だけでなく、すべての裁判所が有しており、最高裁判所に最終的な権限があることから、最高裁判所は「憲法の番人」と呼ばれます。
ウについて
違憲立法審査権は、ある法律が憲法に違反しているという訴えを受けて行使されるものではなく、具体的な事件に即して、ある法律の適用に関して、その法律自体が憲法違反であるために無効である、という訴えを受けて行使されます。
成立前の法案に即した具体的な事件はあり得ませんので、国会で審議中の法律に対して違憲立法審査権が行使されることはあり得ません。
エについて
諸説ありますが、一般に理解されている説では、裁判で扱われたその事件に限り、違憲と判断された法律は無効とされます。ただし、今後、同種の事件があるたびに裁判所はその法律を違憲無効とすることになるため、実際上、その法律は効力を持たなくなりますので、国会が最高裁の違憲判決を受けて、その法律の改廃に動くのが常です。
ウ