モーダルシフト(早稲田実業学校中等部 2018) | 中学受験入試標準問題集 今日の1問

中学受験入試標準問題集 今日の1問

標準的な中学入試問題の解法について取り扱います

本日は、モーダルシフトの利点について記述させる問題を取り扱います。

基本的には、自動車を利用することによって生じる環境負荷の解消が図れる点を書くことになります。ある意味、使いつくされた問題で、典型問題に近いものかもしれません。今回はそれでよいのですが、最難関校では、中学受験で出題するに適切かどうか悩むくらいには込み入った話ではあるのですが、モーダルシフトの短所も聞かれるかもしれません。たとえば、災害時に鉄道路線が寸断された場合、自由に迂回ができる自動車に比べ、鉄道はその点が容易でないことや、工場が必要としている時間に適量の貨物を運ぶという点ではいまだに自動車が有利であることなどがあげられます。こうした裏表も考えてみることが、思考力を育みます。

 

問題

貨物を運ぶ運輸には、船以外にも自動車(トラックなど)・鉄道・飛行機があります。近年、自動車だけでものを運ぶ輸送方法から、船や鉄道を組み合わせて運ぶ運輸方法に変わってきています。この輸送方法は自動車だけを使う方法に比べてどのような長所があるでしょうか。長所を2つ述べなさい。

 

 

解説

自動車を使わないことのメリットを考える問題です。

自動車が使われるようになって起こった問題を考えると見えてきます。

 

まず、自動車が使われるようになって顕著になったのは排ガスや温室効果ガスつまり、二酸化炭素の放出の問題です。

排ガスについては、行政による規制や製造会社各社の努力で、当初からはずいぶんと減りましたが、二酸化炭素の排出についてはまだまだ問題があります。二酸化炭素それ自体は、化石燃料を燃焼させれば必ず生じるもので、自動車は、1台1台の積載量が小さいため、船や鉄道のように1つの動力で大量に運ぶ仕組みに比べると、多くの二酸化炭素を排出せざるを得ません。

 

次に、交通渋滞の問題です。

網の目のように道路が整備されている昨今ですが、物流上、主要な地点を結ぶ道路はいくらでもあるというわけではありません。そうすると、そうした道路には多くの自動車が集まり、交通渋滞が発生します。交通渋滞は、環境の問題も引き起こしますが、それ自体が交通事故を引き起こしやすいことや、救急車やパトカーなどの緊急自動車、バスやタクシーなどのスムーズな通行を妨げ、周辺地域の住民の生活に大きな支障を及ぼします。

 

解答例(解説準拠)

・二酸化炭素の排出を減らすことができるので、地球温暖化現象への歯止めとなる。

・自動車の交通量を減らすことで、交通渋滞が緩和される。

 

その他

・排気ガスに含まれる有害物質による大気汚染、酸性雨を減らすことができる。

※環境規制の不十分な地域や、その大気が流れてくる周辺国では、いまだに深刻な問題です。

・自動車の運転手の人手不足の問題が解決される。

※日本についていえば、少子高齢化により、トラックやバスなど商用自動車の運転手が不足しているという問題が起こっています。

 

補足

自動車から、鉄道、船舶への輸送方法の転換をモーダルシフトといいます。

1997年の京都議定書で注目された考えで、主に二酸化炭素排出量削減の効果が期待されています。実際に取り組みがなされ、そうした効果が見えてきた一方で、一般の鉄道路線を走るということから、貨物列車に関してなかなか効率的に運行することができないなどの問題も見えてきています。